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まどか 乃木坂学院高校演劇部物語  作者: 大橋 むつお
101/106

101:『撮影本番』

まどか 乃木坂学院高校演劇部物語


101『撮影本番』





 自衛隊に似ている。


 監督から声が掛かるまでは、キャストもスタッフもてんでバラバラな感じなんだけど、みんななにかしら打ち合わせや準備をしている。リラックスはしてるけど無駄話したり、ボーっとしてる者はいない。


 機材の調整や確認をする照明や音響さん。キャストのメイク手直しするメイクさん。寒いわけでは無いんだけど、軽くジャンプしたり揺すったりしているキャスト。タブレット見ながらストップウォッチ見てるのはタイムキーパーかな。



「開始」



 監督さんが一声発すると、それまでの各々の作業や準備を止めて、特にバミってあるわけでもないのに、それぞれのポジションにつく。変な力みも狎れた緩みも無い。


 そういう自然体でキビキビしてるとこが、印象として自衛隊。


 乃木坂の演劇部も似たような感じだったけど、ちょっと緊張が過剰だったような気がする。

 

 マリ先生に率いられて、キビキビ動くことに変わりはないんだけど、一年生は無駄に緊張しているし、二三年生は微妙な陶酔感があったような気がする。

 よその学校からは羨み畏れられて、そう言う目で見られることが、どこか心地よかった。


 なんだか、ちょっと宗教的だったのかもしれない。


 マリ先生がよく言ってた「台詞を歌っちゃダメ!」って。芝居の調子が良くなると、演じていることに陶酔してしまうことがある。気持ちいい(=⊙ꇴ⊙=)って瞬間。アクターズハイって言うのかなあ……。


 そういうのが、目の前のロケ隊の人たちには無い。なんというか粛々とやってます的なね。


 監督さんから、いろいろと指示が出されている。そして何度かのカメラテストとリハーサルに一時間ほどかけて本番。


 女性はみんな女子高の制服。高橋さんは、いかにもありげな先生のかっこうで、自転車に乗って土手道をやってくる。


 土手の下では、堀西真希さんと上野百合さんが三年生の設定で、ポテチをかじりながら、二年間の高校生活を嘆いている。


 つまり設定は四月で、新学年の始まり。あちこちに造花のスミレやレンゲが何百本。美術さんが忙しそう。お気楽に見てるテレビだけど、頭が下がります。


 そこに本を読みながら、はるかちゃんが土手道を歩いてくる。前から自転車でやってきた高橋さんの先生が避けそこなって、自転車ごと土手を転げ落ちてしまう(もちろん、落ちるのは人形の吹き替え)。


「大丈夫ですかぁ!?」


 と、大阪弁で、はるかちゃんが駆け寄る。


「アイテテ……」


 と、うなる先生。


「ごめんなさい、ついボンヤリしてしもて」


「きみは……転校生の春野……お?」


 先生は、春野さんのバッグからはみ出しているポテチに気づく。同時に春野さんは、先生の自転車の前かごから飛び出したポテチに気づく。見交わす目と目、吹き出す二人。そして、その親密さに気づいて、草むらから立ち上がる堀西真希と上野百合。その二人の手にも同じポテチが……。



 で、二回目のテストのとき、監督さんがわたしたちに目をつけた……。



 わたしたちは同じ制服を着て、はるかちゃんの後ろを歩いてくる、文字通り通行人。で、先生が転げ落ちたあとは、土手から心配げに見ている背景の女学生。むろん顔なんかロングなんで分からないんだけど、思わぬテレビ初出演! 


 でも、病み上がりとはいえ、やっぱ、潤香先輩って映える。また、カメラ回っている間平然としている根性もやっぱ、潤香先輩ではありました。



☆ 主な登場人物


仲 まどか       乃木坂学院高校一年生 演劇部

坂東はるか       真田山学院高校二年生 演劇部 まどかの幼なじみ

芹沢 潤香       乃木坂学院高校三年生 演劇部

芹沢 紀香       潤香の姉

貴崎 マリ       乃木坂学院高校 演劇部顧問

貴崎 サキ       貴崎マリの妹

大久保忠知       青山学園一年生 まどかの男友達

武藤 里沙       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生

南  夏鈴       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生

山崎先輩        乃木坂学院高校二年生 演劇部部長

峰岸先輩        乃木坂学院高校三年生 演劇部前部長

高橋 誠司       城中地区予選の審査員 貴崎マリの先輩

柚木先生        乃木坂学院高校 演劇部副顧問

乃木坂さん       談話室の幽霊

まどかの家族      父 母(恭子) 兄 祖父 祖母

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