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9、クエスト

 町を出て新しいフィールドを歩きながら先程の武器防具屋の店主の話を思い出していた。

 思い出す度にサリアが笑いのツボに嵌まってしまうのだが・・・



「ーーーーーーモンスターから鉱石を採ってきてほしんだ」


 採ってくる?取ってくる?うん?奪ってこいってことかな?

 そんな疑問を思っていた俺におやじが答えてくれた。

 この人エスパーかよ!


「間違っても、倒したからといって鉱石を落とすわけじゃねぇからな」


「え?じゃどうやって?」


 俺の質問におやじは「ちょっと待ってろ」と言い、奥の部屋から2本のツルハシを持って戻ってきた。


 ツルハシをカウンターにドンッ!と置くと、おやじは俺とサリアに向かって不適な笑みを浮かべながら話を続けた。


「お前らが相手にするのは、《ストーンタートル》だ!

 そいつは背中の甲羅が岩石になってゴツゴツしてるんだが、ある一定数のダメージを与えると甲羅の一部が光だすんだ。

 その光ったとこをこのツルハシで削れば鉱石が採れるってわけだ」


 ・・・・・・そっちの採るね。


「えっ、ということは戦ってる最中に甲羅の上に乗っかれってこと?」


「当たり前だろ、坊主!近くにいかないと採掘なんてできねぇだろ」


 いやいや、それ以前にモンスターを採掘しないでしょ・・・。

 見てよこのサリアの顔。魚みたいに口パクパクして言葉にできないでいるじゃん。


「あっ!俺ら採掘のスキル持ってないんだけど?」


 俺はもちろんのこと、サリアも採掘のスキルは持っていないのであった。

 この《DFO》ではスキルがないと、採掘も採取も釣りもできないので生産する人たちなら最初に取る人がいるみたいだが、生産をしない人たちは後回しにするスキルなのだった。


「おう、それなら問題ないぞ」


 そう言い残し、再びおやじは奥の部屋に行き今度はおやじの上半身が隠れる程の大きい岩を持って戻ってきた。

 おやじの力半端ねぇ!


 岩を地面に置いたおやじは、カウンターに置いてある2本のツルハシを手に取り、それを俺とサリアに渡してきた。


「ほれ、これでこの岩を2、3回叩いてみろ」


 俺とサリアはとりあえずツルハシを手に取り、おやじの言った通りに岩を2、3回ガン!ガン!ガン!と叩いた。

 サリアはもう流されるままだね・・・目が死んでるよ。


 岩を叩き終わると、俺とサリアの視界には【採掘Lv1を習得しました】と通知が流れた。


「「ーーーっ!」」


 驚き、お互いに顔を見合わせていると


「おっ!その顔は無事に習得したみたいだな」


「・・・スキルってこんな簡単に覚えるのかよ」


「そりゃそうだろ。人間ってのはやれば覚えるけどやらないと覚えない、そういうもんだろ?

 ただし、全部が全部簡単に覚えられると思ったら大間違いだからな」


 おやじのもっともな言葉に俺たちはただ頷くことしかできなかった。


「それじゃ後は詳しい場所だがな。坊主達はイオス平原からきたのか?」


「あ、あぁ」


「この町はそのイオス平原からの出入り口と、もうひとつ反対側に《エスタブ街道》への出入り口がある。

 エスタブ街道を抜ければ《オステン王国》へ行けるんだが、今回のストーンタートルはエスタブ街道の右外れにある岩場付近に現れることが多い。

 坊主達にはそこに向かってほしいというわけだ」


「ああ、場所は了解したよ。

 ところでその鉱石ってなんて名前なんだ?」


「おお、言ってなかったか。悪い悪い。

 鉱石の名前は《ストーン・スートン・スッポン》っていう緑色をした鉱石だ」


 ・・・・・・は?


「ごめん、おじさん。もう一回言ってくれるか?」


「んぁ?聞こえなかったのか?《ストーン・スートン・スッポン》だ」


「ブファッ!」


 なんだよその鉱石らしからぬ名前は!最後にスッポンって付いちゃってんじゃねぇかよぉ!

 サリアは笑いを我慢しきれずに吹き出すしよ!さっきからピクピクしてたのは我慢してたのかよ。


 おそらくクエスト限定での鉱石だからそんな適当な名前なんだろうけど、それにしてもここの運営センス無さすぎだろ!


「と、とりあえずわかったよおじさん。じゃ、もう行くとするわ。・・・・・・うちのメンバーが限界っぽいし」


 ここで笑ったら失礼だと思ったのか、サリアは吹き出した後口を手で押さえて必死に笑いを我慢してるため、顔がもう真っ赤だ。


「おぉ、よくわからんがよろしく頼むぞ。何かわからないことがあったらいつでも聞きに来い」


「ああ」


 店を出た瞬間、サリアは今まで貯めてたのを一気に爆発するかのようにお腹を押さえて笑い転げた。




 ーーーっとまぁ、これが今回のクエストの内容だった。


「ストーン・スートン・スッポンかぁ」


「ププッ!ハハハハハハッ!やめてよハックン。お腹いたいよぉ!ハハハッ!」


 ・・・・・・いや、笑いすぎだろ。


「サリアは放っておくとして。なぁイブ、そのストーンタートルってレアモンスターなのか?」


「情報を更新しましたところ、そのようですね。出現条件は特になくランダムででるみたいですね。レベルは23と今のハクト様がたでは少々厳しいかと思います。

 ちなみに、このエスタブ街道のモンスターはLv13~22です。ノンアクティブではなくなっているのでお気をつけください」


「まじかぁ、一応装備を買った残金でHP回服薬とMP回復薬を買えるだけ買ったけど、レベルを20ぐらいまで上げたほうがいいかもな。

 サリア、これからのこと決めたいからそろそろ正気に戻ってくれよ」


「ハハハッ。ごめんごめん。スーッハァー、うん。もう大丈夫だよ」


 サリアは一度大きく深呼吸をして息を整えた。


「おけ。クエストに期限はないし、今日はレベル上げをした方がいいかなと思うんだけど、どうする?」


「強いのそのストーンタートルって?」


 こいつ全然話聞いてなかったなぁ!

 見かねたイブが溜め息を吐きながら、俺に説明したことを再度サリアに説明してくれた。

 こういう時はこいつも役にたつよな。ってこっちみて頬を赤らめてるんじゃねぇよ!おまえもエスパーかよ!


「なるほどね。今の私たちだったら絶対に勝てないかもしれないね。でも、倒すことが目的じゃないからいけないかな?」


「おまえなぁ、死んだらデスペナだぞ」


 このゲームのデスペナは所持金半減である。


「でも、私達お金ないじゃん」


「うっ、それはそうだけど・・・。じ、じゃどっちが甲羅の上の採掘するんだ?」


「・・・・・・ハックンでしょ」


「なんでだよ!即死しちまうじゃねぇか!おまえ、さては俺が死んだら逃げるつもりだな!」


「逃げないわよ!採掘してるときに気を引いとかないといけないでしょ?それなら防御力の高い私のほうがいいでしょ?」


 サリアにしてはまともな事言ってるな。サリアにしては・・・。


「わかった。じゃ、それでやってダメだったら今日はレベル上げして明日再挑戦ってことでいいな?」


「うん。いいよ」


 話が纏まったとこで、俺たちは極力道中のモンスターを相手にしないように避けながら歩き、どうしても避けきれない時はサリアが敵を引き付けてる間に装備を《ミニガン》に変更し殲滅するを繰り返し、どうにか目的の岩場付近へと到着した。


 モンスターからもらえる経験値も多少多くなっていたため、そのころには俺がレベル15、サリアがレベル13まであがり、スキルも何個かレベルが上がったみたいだった。


 ステータスPtを俺はINTに振り、サリアはSTRとVITに振り分けその後ストーンタートルを探した。


 こういう時に便利なのがイブである。


「イブ、近くにストーンタートルはいるか?」


「いえ、まだ出現していないみたいです」


 それからしばらくそこで俺たちは待機することにした。


 消耗を抑えるため他のモンスターとは戦闘をしないように気をくばりながら待っていること数分・・・


「ハクト様、出現しました。左に数メートル行ったとこです」


「わかった。いくぞサリア」


「うん」


 イブのナビのもとその場所へ向かうと、そこにはジャイアントウルフに匹敵するほど大きな体をした、岩の甲羅を背負った亀がいた。

 このフィールドにはベビータートルというモンスターもいて、ベビーのくせに大きいなと思っていたが、このストーンタートルはそれを遥かに上回っっていた。


「じゃサリア、さっき言った作戦でいくからな」


「オッケーだよ」


 俺はあまり近づきすぎない位置でミニガンを装備し、サリアは俺とは反対側のところで待機した。


 サリアが待機したのを確認すると俺は呪文を詠唱した。


「ファイアボール」


 ミニガンの魔法陣が金色に輝き俺の手に宿った炎を飲み込み青色へと変わった。


 ダダダダダダッ!


 俺はストーンタートルに向かって単発撃ちを放った。

 なぜ単発撃ちにしたかというと、どのくらいのダメージを与えることができるのか確認したかったからである。


 単発撃ちであまりにも減りがすくない場合は連射で一気に減らそうと考えていたのだが、INTへの極振りとミニガンの性能のおかげと単発撃ちでも1回にでてる弾丸は最大発射数にしてるため67発がヒットしているのでストーンタートルのHPは一気に削れ残り1割となっていた。


 逆にあれで死ななかったのは奇跡といってもいいだろう。

 レアモンスターだけあって魔法防御値はそれなりに高いみたいだ。


 攻撃を受けたストーンタートルは俺の方に体を向け怒り狂ったようにノソノソと向かってきた。

 やはり亀なので動きは遅いようだ。


 その移動の遅さを利用して、ミニガンを装備から外しサリアの方へと全力で駆けていった。


 途中、ストーンタートルが首を伸ばし噛みつきをしてきたが、ギリギリのとこでかわしきることができ、無事にサリアの元まで着くことができた。


 ここからはサリアの頑張りどこである。


 ヘイトはまだ俺に向いているので、ストーンタートルは体をグルッと回し俺たちの方へと近づいてきた。

 俺はサリアの後ろに下がり、サリアは盾を構えストーンタートルの攻撃に備えた。


 ストーンタートルはサリアに見向きもせずに、後ろの俺を攻撃しようと首を伸ばしたが、そこをサリアが盾のスキルであるシールドアタックで首を弾き飛ばし隙ができとこにスラッシュを打ち込んだ。


 やはりサリアの攻撃ではストーンタートルのHPは全然減ることはなかったが、今回は倒してしまってはいけないのでこれでよしとなる。


 サリアが攻撃してストーンタートルの気を散らしいる隙に、俺はサリアの後ろからストーンタートルの側面に移動し、動きが収まったタイミングで勢いよく甲羅の上に飛び乗った。


 甲羅の上に乗ると、天辺部分が緑色に光っているのが確認できたので、周りの岩を掴みながら天辺部分へと向かった。


 その間も、いまだに俺にヘイトが向いてるためか俺を探すように首や体を動かし暴れていた。


 なんとか自分にヘイトを向かせようとサリアは攻撃をしているのだが、俺が与えたダメージが大きかったためなかなかヘイトは動かず、時たま邪魔だといわんばかりに吹き飛ばされHPを一気に減らしていた。


 サリアはHP回復薬を使い、再び攻撃を再開した。


 そしてようやくの思いで天辺についた俺は、ツルハシを装備し揺れて足場が悪いなか緑色に光る部分にツルハシを振り下ろした。


 ガンッーーーガンッーーーガンッ!


 採掘レベルが低いためそう簡単には鉱石を採ることはできなかった。


 何度か採掘作業をしてると、やっとサリアへとヘイトが移り足場が幾分か安定しだした。


 ヘイトが向けば後は盾でガードしているだけでいいのだが、盾でガードしていてもHPは少しづつ減っていくのでサリアの回復薬の残量も考えてなるべく早く採掘を終わらせる必要があった。


「ハックン!まだぁ!?もう回復薬ないよぉ」


 何度目かの回復薬を使い終わったころにサリアが叫んだ。


 俺の方も、もうなん十回とツルハシを振り下ろし作業をしているのだが、一向に取れる気配がなく気持ちだけが焦っていた。


 パーティに組んでいると視界の左上にある自身のゲージの下にメンバーのゲージが見れるようになるため、作業をしながらこまめに確認すると、サリアのHPが半分を切っていた。


 俺は慌てて作業の手を止め、サリアへと回復薬を投げ回復させた。


 それを何度か繰り返したところで、俺の持っている回復薬もすべてなくなってしまった。


「わりぃ、サリア。それで最後だわ」


「えぇぇ!どうしよ?このままいったら死んじゃうよぉ!まだ採れなさそう?」


「採掘のレベルが低すぎて全然採れる気がしねぇ」


「えぇぇぇぇ!」


「とりあえず、盾構えながらでも瞑想できるだろ?それで時間を伸ばしてくれ!横からの攻撃は・・・まぁ勘で頑張ってくれ」


「勘ってなにぃぃ!うぅ~、後で覚えてろよ~。《瞑想》」


 昨日の二の舞にならないことを祈りながら、ツルハシを降る腕に力をいれた。


 瞑想をしてても割合的に少しづつHPは減っていくだろう。これでサリアのレベルが高かったら無敵状態で時間も余裕を持てていたんだが、今は無いものねだりしてもしょうがない。


 俺は一心不乱にツルハシを振り続けた。


 ガンッーーーガンッーーーガンッ


「うぅ~」


 時たま聞こえてくるサリアの唸り声を無視しながら。


 ガンッーーーガンッーーーガンッ


「もぅ、だ~め~」


 サリアのHPを見るとすでに2割までになっていた。瞑想で回復もしてるがもう時間がない。


 ガンッーーーガンッーーーパリン!


 ん?


【クエストアイテム:ストーン・スートン・スッポンを入手】


「きたぁぁぁ!きたぞサリア!にーげーろー」


「はぁ、よかったぁ」


 安心したサリアはストーンタートルの攻撃の隙をみて走りだした。


 ストーンタートルも遅いスピードながらにサリアを追いかけた。

 甲羅の上で凶悪な武器を手に持っているやつがいることも忘れて。


「ファイアボール」


 再度ミニガンに魔法を充填して、魔法陣が青くなったのを確認して、銃口を足元の甲羅に突きつけた。


「死ねや、亀野郎!」


 言葉と共にスイッチを押し、一気に弾丸を甲羅へとぶちこんだ。


 ダダダダダダッ!


 残り僅しか残っていなかったストーンタートルのHPは一瞬のうちに空へとなり、その姿を光の粒子へと変えていった。


 俺もそのまま地面に落とされる形になり盛大に尻餅をつくはめになったのだった。


「いってぇぇ。お~い、サリア。もういないから戻ってこぉい」


 意外と逃げ足の早かったサリアは結構遠くまで行っており、俺の声に気づいた途端辺りをキョロキョロして慌ててこちらに走って戻ってきた。


 その後ろにはモンスターを引き連れて・・・。


「うそん」



 その後しばらく炎の弾丸が飛び交っていたーーー










次回『10、荷車と運搬スキル』

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