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7、フィールドボス

 ダダダダダダッ!


「サリア、右頼む!」


「まかせて、ハックン」


 左に出現したゴブリンの群れを《ミニガン》で撃ち倒し、右にいるウェアウルフとアルミラージをサリアが片手剣スキルのスラッシュで斬り倒した。


 俺とサリアはパーティを組んだ後、サリアのレベルが1ということもありしばらくレベル上げをしていた。


 パーティを組んで戦っているうちに、お互いに畏まった呼び方はやめようということになり、俺はサリアと呼び、サリアはハックンと呼ぶことにしたのだった。


 さすがにハックンはないだろうと抗議したのだが、呼び捨てをするのが恥ずかしいと顔を赤くして言われたため、泣く泣く了承することとなった。



「やったぁ、レベル10になったよぉ!」


「おぉ、おめでとう」


 パーティを組むと経験値が配分されるため、俺が一人でやってたときより少し時間がかかったが、これでサリアも問題なく次へといけるだろう。


 ちなみにサリアのステータスはこんな感じだったーーー



 ーーー サリア Lv10 ーーー

 ーーーーーーーーーーーー0 Pt

  HP 620

  MP 50

 STR 62

 VIT 62

 INT 10

 DEX 20

 AGI 10

 LUK 10


 《スキル・魔法》

 ・片手剣スキルLv2 ・盾スキルLv2 ・身体強化Lv1

 ・瞑想Lv1 ・料理スキルLv1


 《装備》

 武器

 右・冒険者の剣 左・フレイムシールド


 頭

 体上・冒険者の上着

 体下・冒険者のスカート

 手・冒険者の皮手袋

 足・冒険者のブーツ



 サリアが持っている盾のフレイムシールドは、チュートリアルガチャで当てたSRの装備らしい。

 効果は炎系への属性耐性である。


 ちなみに、サリアがレベル10になるころには俺のレベルも13へと上がっていたがスキルレベルは上がらなかった。


 レベルは10を越えると、ここの《イオス平原》の敵では少し上がりづらくなるみたいで、スキルもモンスターに当てた分と倒した分で経験値が決まるらしい(イブ情報)のだが、何千発と撃ってもここのモンスターは1発当たった時点で即死のため全然経験値が入ってこないのだった。



「サリア、キリのいいとこで一度ログアウトするか?」


 この《DFO》の時間は現実と一緒の為、今は18時になっていた。


「そうだねぇ。一度晩御飯食べてこようかな?ハックンはお昼ご飯も食べてないんでしょ?」


「あぁ~、そういえばそうだった。すっかり忘れてたな」


 チュートリアルが長引いたり、イブの出現などでご飯のことは頭から抜けていたである。


「ちゃんと食べないとダメだよぉ。身体壊しちゃうよ」


「そうですよ、ハクト様。お食事はちゃんと摂ったほうがいいですよ」


 サリアとイブが心配そうに言ってくれた。


「ああ、わかってるよ。晩御飯はちゃんと食べるし」


「うんうん。エライエライ」


 何目線だよ・・・。


「そういえば、イブは俺がログアウトしてる間どうしてるんだ?」


「はい、私はハクト様がいないと活動できませんのでスリープモードに自動的に切り替わります。

 ハクト様がインしてきた時にはちゃんとこちらの胸ポケットの中にいますのでご安心ください」


「いやいや、誰もそんな心配してねぇから!」


「二人とも仲いいねぇ」


「どこがだよ!」

「はい」


 サリアが羨ましそうな顔でこちらを見てくるのを良いことに、イブは「いいでしょ?」と言わんばかりのドヤ顔だった。


「はぁ、お前らと話してると晩御飯の時間なくなるわ」


「おっ!それは楽しくてつい話こんじゃうということかなぁ?」

「誉め言葉ですね」


 こいつらどんだけポジティブなんだよ・・・。


「とりあえず、また後でな。おつ~」


「は~い。おつれさまぁ」


「お疲れ様です、ハクト様」


 挨拶を交わしたのを確認すると、俺はログアウトし現実の世界へと戻った。



 現実に戻ってきた俺は、ヘッドギアを外しベッドから起き上がり身体を伸ばした。


「さすがにずっとプレイしてると疲れるな」


 身体に異常がでれば強制ログアウトさせられるので問題はないのだが、ずっと寝たきりで脳だけ使うというのもなかなか疲れるものだと思い、今度からは適度に休憩したほうがいいかなと考えながらご飯を食べるため部屋を後にした。


 俺の家は2階建ての平凡な一軒家で、2階は俺と妹の2部屋のみで、1階は居間と台所の他に両親の寝室がある。


 階段を降り居間へと向かうと、すでにご飯の準備ができており食卓にはすでに妹が座って待っていた。


「あっ!お兄。遅いよぉ」


 俺に気づき「もうお腹ペコペコだよ」と文句を言ってるのが、2歳年下の《和泉いずみ里桜りお》俺の妹だ。

 肩ぐらいまでの茶色い髪にパッチリとした瞳。綺麗系というよりはかわいい系だろう。


 現に、学校では結構告白されてるみたいだが、なぜか一度も彼氏を作ろうとはしないのだった。


「ああ、悪い里桜。父さんは今日も遅いのか?」


「うん。今日も残業だって」


「そっか」


 父親は外資系に勤めており、ほんとんど残業で遅くなったり出張でいないことのほうが多い。


 そんな会話を交わしながら食卓の里桜の横の席に座ると、いつものことなのだが必ず里桜は席を近づけてくるのであった。


「なぁ里桜。いつも言ってるが、もうちょっとそっちに行ってくれるとうれしいんだけどなぁ」


「えぇ~。いいじゃん!全然狭くないでしょ?」


「いや、そうだけど・・・・・・まぁいっか」


 これが、いつものパターンだった。


 妹に甘いなぁとは思っているのだが、突き放すこともできないのでなんとも自分が情けなく思えてくるのであった。


「おまたせ~。あら、今日も二人は仲良いわね」


 余計な一言をいいながら作り終えたご飯を運んできたのが俺の母親である。


 母親は専業主婦をしており、料理等の習い事をしているため料理の腕はなかなかのものなのだ。


「そうでしょ~。私とお兄はラブラブだもんねぇ~?」


「・・・・・・ハハハ」


 本気なのか嘘なのかわからないとこが、この妹の怖いとこである。


「あらあら、いいわねぇ」


 そして、この母親も何を言ってんだぁ!

 話に乗ってんじゃねぇよぉ!


「さっ、ご飯にしましょ」

「はーい」


 そして切り替えがはやいな・・・



 そんなこんなで、こんなちょっと変わった家族達とのご飯を食べ終わり、自室へ戻った俺はすぐにはインせずに携帯で《DFO》の掲示板を見ていた。


「へぇ、やっぱみんな結構進んでるんだなぁ」


 先に進んでるプレイヤーはすでに高レベルで装備もいいのを持っている等、攻略のスピードは俺とは段違いだった。


 ギルドもすでにいくつか結成されているみたいだ。


 しかし、シークレット装備の情報だけはひとつも書かれてはおらず、PKとかのことを考えると持っていてもみんな秘密にしているのかなと思う。


 そんな感じで掲示板を見てると、部屋の扉をノックする音が聞こえた。


 トントン


「お兄、何してるの~?」


 里桜が扉を少し開け、そーっと覗きこんできた。


「ん?携帯みてるぞ。どした?」


「うん。お兄、《DFO》やってるんだよね?」


「やってるけど、何で?」


「ふ~ん。・・・・・・探したんだけどなぁ」


「ん?」


「な!なんでもない。じゃあね」


 里桜は慌てた様子で扉を閉め、ドタバタと自分の部屋へと戻っていった。


「・・・・・・なんだあいつ」


 里桜が《DFO》をやっているであろうことは薄々知っているのだが、どうしても驚かせたいのか意地でも口にしようとはしないのだ。


 里桜の訪問で掲示板を見る気もなくなったので、再度インするためベッドに横になり頭にヘッドギアを被り、電源を入れた。



「お帰りなさいませ、ハクト様」


 インしてすぐ出迎えてくれたのはイブだった。

 イブのいう通り胸ポケットからの出迎えである。


「ああ。サリアはまだか」


 辺りを見回してもプレイヤーは1人もいないことが確認できたので、しばらくそこで待機することにした。


 サリアを待っている間、《ミニガン》に炎系魔法の新しい魔法を試してみることにした。


「ファイアランス」


 《ミニガン》の右側面にある魔法陣に右手を添えて魔法を詠唱すると、魔法陣が金色に輝き右手に宿った炎の槍を飲み込み青色へと変わった。


 ファイアランスは貫通効果があるため、縦にならんでいるモンスターに向けてスイッチを押した。


 ダダダダダダーーーーーー


 炎の槍の弾丸が先頭のゴブリンを貫き後方のウェアウルフなどを一緒に倒した。


「これはいいなぁ!」


 ダダダダダダーーーーーー


 俺は楽しくなり、撃ちまくっていると・・・


 カチカチカチカチカチカチーーーーーー


 ものの数秒で音が変わり、銃口からは何もでなくなった。


「あれ?弾がでないぞ」


「ハクト様。MP切れです」


 イブに言われ、視界の左上にあるMPゲージを見てみるとホントに空になっていた。


「えぇぇ!だってMP節約で実質0で撃てるんじゃねぇの?」


「それは消費MPが10の魔法だけです。ファイアランスは消費MPが13なのでスキル効果があっても1発うつのに1消費します。

 スキルレベルが上がれば消費0で撃てる魔法も増えてきます」


「まじかぁ・・・。完全に見落としてたな。

 今度からはちゃんと消費MPとか確認したほうがいいな」


「そうですね。強い敵と戦ってる時にMP切れを起こしたら大変ですからね」


「だな」


 その後、サリアが来るまでの間は装備を冒険者の杖に変えその場で座りながらイブと雑談をして待っていた。



「あら~、ハックンの武器にも意外な落とし穴があったんだね」


 サリアがインして、俺が杖を装備してるのを不思議そうにしていたので先程の話をしての感想だった。


「ああ。今のところはって感じかな。強くなっていけばなんとかなるような気もするし」


「そっかぁ。うんうん、大丈夫だよ。私もいるし!一緒にがんばろ」


「そうだな。

 ところでこれからどうする?レベル上げをするかそれともフィールドボス倒して次の町にいくか」


「ん~、できれば今日中には次の町に行きたいよねぇ」


「確かに。みんな結構進んでるみたいだしな」


「そうなんだ!じゃ今日は次の町に行って終わりってことにする?明日学校あるし」


「ああ。俺も学校あるから遅くまではできないから、それぐらいがちょうどいいかもな」


 昼間にお互いの年齢を話たときに、サリアはどうやら俺の1つ下の高校1年生だった。

 さすがにマナーとして住所とか本名はお互い話さないようにした。


 やることも決まったので俺とサリアはフィールドの端から道が続いている場所まで戻り、町まで続いてるその1本道を歩いた。


 道のりが長く、ちらほらプレイヤーの姿も見えていたがやはり数はかなり少なかった。


 その道中で驚きの出来事があった。

 それはこんなサリアの一言から始まったのだった。


「ねぇねぇ、イブちゃんと私の髪の色ってお揃いだよねぇ。

 なんか姉妹みたいだよねぇ」


「いや、こんなチビッ子の姉妹がいたらビックリだから」


「チビッ子とはヒドイですねハクト様。

 それにサリア様とお揃いとは些か不愉快ですね」


 どうやらイブはサリアのことがあまり好きではないみたいだ。

 理由は・・・・・・うん、俺が言うのもあれなんでご想像にお任せしよう。


「えー、いいじゃんお揃い。それに髪の色は変えれないんだから諦めて私と仲良くしよ?」


「わかりました。そこまで言うのでしたら・・・」


「うんうん。・・・・・・っえ!」


 俺とサリアはイブが諦めて仲良くするのかと思ったのだが、キーボードのようなものを空中にだし、カチャカチャすると突如イブの全身が輝きだし、みるみるうちにイブの髪の色が金色から銀色へと変色していったのだった。


「「えぇぇぇぇぇぇ!」」


 俺とサリアは驚きのあまり叫んでしまった。


「これで、サリア様とお揃いではなくなりましたね。

 どちらかというとハクト様の髪の色に近いですよね・・・ポッ」


 最後の「ポッ」はよくわからんけど・・・


「お前、髪の色変えれるのかよ!」


「イブちゃん、元にもどそ?今ならまだ間に合うよ?」


 サリアは若干混乱中みたいだ。


「私はプレイヤー様と違いますので、髪型、色、服装は自由に変えることができるのです」


「まじかぁ。お前すげぇな」


「エヘヘ。もっと誉めてくださってもいいんですよハクト様」


「誉めてねぇよ」


「元にもどそ?ね?ね?」


 はい、サリアは少し黙ろうか



 そんな衝撃な出来事もあり、俺たちはようやく町の手前にいるフィールドボス《ジャイアントウルフ》のとこまでたどり着いた。


 普通のウェアウルフが大型犬ぐらいの大きさなのだが、このジャイアントウルフはゾウぐらいの大きさをした狼だった。


 最初のフィールドボスということもあり、強さはたいしたことはないみたいだ。

 攻撃も引っ掻きや咆哮ぐらいしかしないらしい。


 俺はショックで方針状態のサリアに渇を入れ、戦いの準備を進めた。


「サリア、準備はいいか?とりあえずイブのことは諦めろ」


「う、うん・・・。今はボスに集中しないとね」


「ああ」


 そして、イブにも確認をとることを忘れず


「イブ、周囲にプレイヤーはいるか?」


「大丈夫です。このフィールドにいるプレイヤー様はすべて距離が離れています」


「よし。サリア、今回俺は支援に回るからがんばれよ」


「え?えぇぇ!な、なんで?ハックンが攻撃したら楽勝でしょ?」


「そうなんだけど、光系魔法のスキルレベルを上げたいだよ」


「そ、そんなんだ。それなら仕方ないよね。うん、任せて」


 俺にガッツポーズをしてサリアはジャイアントウルフと向き合う形になった。

 その瞬間、俺の顔が悪い顔になったことにサリアは気づいてなかった。


「じゃ、いくよ」


 サリアがジャイアントウルフへと駆けて行ったのを見送った後、俺はメニューから装備を呼び出し、杖から《ミニガン》へと変更した。


 サリアの初撃がジャイアントウルフを襲った。


「スラーッシュ!」


 強力な斬撃によりジャイアントウルフにダメージを与えたが、それでも1割ぐらいしか削れなかった。


 今度はお返しとばかりにジャイアントウルフが引っ掻きを連発してきたが、サリアはそれを盾で防ぎながら隙をみて攻撃を仕掛ける。


 俺はその光景を見ながら充填を開始する。


「ヒールライト」


 右手に宿った光が《ミニガン》の金色の魔法陣へと飲み込まれ、青色と変わった。


「よし、準備完了」


 再び戦闘に視界を戻すと、ジャイアントウルフの咆哮を受けスタン状態になったサリアが引っ掻き攻撃でHPを半分まで減らされていた。


 俺は《ミニガン》の銃口をサリアに向け口角を上げた。


「いくせぇ!」


「ーーーーーーっ!」


 ダダダダダダーーーーーー


 毎分4000発もの光輝く弾丸がサリアに直撃し、一瞬でサリアのHPを全回復させた。

 ちなみにヒールライトは消費10の魔法なので、スキル効果で0しか消費しないのであった。


「ーーーーーーーっ!」


 サリアが泣きながら何かを訴えているが、弾丸の音で全く聞こえないのでスルーしていると、痛みや衝撃がないことに気がついたのかホッと胸を撫で下ろすと、俺をキッと睨みその鬱憤を晴らすかのようにジャイアントウルフにがむしゃらに攻撃をした。


 サリアは防御を捨て、一心不乱に剣を降り続けた。


 サリアが攻撃する、ジャイアントウルフが引っ掻きでやり返す、サリアのHPが一瞬で全回復するを繰り返して3分ほどでジャイアントウルフは消滅していった。



 俺は《ミニガン》を撃つのをやめ、そのまま装備から外し今までジャイアントウルフが塞いでた道の方を再度見ると、そこには鬼の形相でこちらにむかってくるサリアの姿があった。


 そして、その後ろにはーーー


 ーーーーーーようこそ《ルべラの町》へ







 

次回『8、ルべラの町』

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