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5、イブと無双

「はぁぁぁぁぁ!?な、なんでイブがここにいるんだよぉ?」


 突如、白い卵から煙を吹き出しでてきたミニチュアイブに俺は驚愕を露にした。


「来ちゃいましたっ、テヘ♪」


「テヘ♪じゃねぇよ!いやいや、意味がわかんねぇんだけど・・・。だってお前、あのチュートリアルが終わったらシャットダウンするって言ってなかったっけ?」


「はい。あの・・私はすでにシャットダウン済みです」


 イブの言ってることがさっぱりわからないんですけど・・・。


「いや、イブさん?もうちょっと詳しく説明してもらえませんか?」


「!ッ、敬語なぞやめてください。・・・なんか他人行儀じゃありませんか・・・そんな知らない仲じゃないんですし・・・モジモジ」


 イラッ!


「モジモジって言葉に出してんじゃねぇぇぇ!!いいからぱっぱと説明しろぉぉぉ!!」


 ハァハァ・・・。イカンイカン。こいつの冗談とも思える言動についムキになってしまった。

 ・・・・・・ってか、なんかこいつキャラ変わってねぇ?気のせいかなぁ。


「コホン。わかりました、詳しく説明させていただきます」


 なんだ今のわざとらしい咳は。


「あ、ああ。頼むよ」


「はい。まず、先ほどまでいたのはチュートリアルナビゲーターの私であります。

 そして、今の私はハクト様専用のナビゲーターであって、あの白い卵は私の核を保存するための容器でございます。

 こうなった経緯はチュートリアルを行ってる時でしたーーーーーー。


 イブの話が長かったので、簡単にまとめるとしよう。


 始めに、俺がインしてアバターを決めているときにAIながらにも俺の容姿に興味を持ったらしい。

 そこからステータスやスキル、ガチャを引いたり、雑談したり、《ミニガン》の練習をしたり、あいまに雑談したりと俺と接しているうちにイブの心?があるかはわからないが、そこにひとつの思いが芽生えたんだそうだ。

 それは、ただナビゲーターだけをしていたら芽生えることのできなかったもの『一緒にいきたい』であった。


 そう思ったイブはシステムに細工をし、俺に核の保存容器である白い卵を渡し、俺が旅だったのを見送ったあとにイブの核を保存容器に転送させたのであった。


 それまでの体は核が抜けると同時にシャットダウンし、保存容器に転送された核は容器の中で新しい体を作りあげたということらしい。


「ーーーーーーっということです。容器が小さかったので体も小さくなってしまいましたが」


「なるほどなぁ。なんとなくはわかったけど、その羽はなんだ?

 それは容器の大きさと関係ないよな?」


「・・・・・・かわいいかなと」


 言葉がでねぇ・・・。


「・・・・・・、そ、それにしてもAIでもそういう感情になるんだな?」


「私も初めてのことで少し戸惑っていましたが、私達はその場その場で学習をしていくようにできてますので、それを踏まえるとこの感情はハクト様が私にくれたものではないかと思っております」


「いや、俺は何もしてないけどね・・・。

 あ!そっかぁ。その白い卵をくれた時に言ってたお前の言葉が今なら理解できるわ」


「はい。私と同じように、この感情を学習した他のナビゲーターがいればおそらく私と同じことをすると思います」


 これでイブの経緯はわかったが、問題はこれからのことだよな。


「っで、イブはこれからどうするんだ?」


「?。もちろんハクト様についていきますよ?そのためにこちらに来たので」


 何当たり前のこと聞いてるの?って顔をするのはやめろ!


「じゃ、ゲーム的にお前はどこまでできるんだ?」


「ナビゲーターです」


 ・・・・・・


「戦闘は?」


「できません。一撃で死にますよ?」


 ・・・・・・ッ


「生産とかは?何か素材を持ってくるとかは?」


「できません。重くて持てません」


 ・・・・・・ッ、つかえねぇぇぇ!いる意味ないじゃん!


「じゃお前はただそうやって俺の周りを鬱陶しく飛び回ってるだけってことか?」


「鬱陶しいとはヒドイですね。さすがの私も傷つきますよ?

 まぁ、しいて言うなら道案内とかわからない事を説明することぐらいはできますよ」


「あぁ・・・・・・っそ」


「なんですかその嫌そうな顔は!先ほどは寂しそうな顔で別れを惜しんでいたのに」


「惜しんでねぇよ!むしろせいせいしてたわ!」


「またまたぁ、強がっちゃってぇ。大丈夫です、私にはちゃんとわかってますからね」


 こいつはマジで殴りてぇ!

 ま、まぁちょっとは泣きそうにはなってたのは事実だけども、絶対こいつには言いたくないし認めたくもねぇ!


「ってかさぁ。お前なんか微妙にキャラ変わってない?」


「今が通常モードですよ。先ほどまでのがナビゲーターモードです」


「モードって・・・。じゃ他にもあるってことか?」


「はい。一応、色々とインプット済みですのでその場のノリでランダムで変えていこうかなと思ってます。

 もしご希望があれば言ってくださいね。

 妹モードとかもありますよぉ?」


 顔をニヤニヤしやがって。

 俺がそんなに妹好きキャラにでも見えるのかよ。


「いや、それは現実にいるから断固として断る」


 俺には2歳下の中学3年生になる妹がいるのだ。

 こんなとこでNPC相手に妹プレイなんかしてるのがバレたら、何を言われることやら。

 普通ならバレることはありえないんだが、実はうちの妹は大のゲーム好きなのだ。

 そして、おそらく妹もこの《DFO》をやっていると兄の勘が言っている。

 昨日俺が《DFO》の話をしたとき、若干目が泳いでて明らかに何か隠してる顔をしていた。

 たぶん、内緒にしてこのゲームの中で驚かせようと考えてたに違いない。

 俺のチュートリアルが長引いて中央広場で会うことはなかったが、今後いつ会ってもおかしくないのでイブには絶対に妹キャラはやらせてはいけないのだ!


「そうですかぁ、それは残念です。1回ハクト様の事を『お兄ちゃん』と呼んでみたかったのですが、気が向いたらいつでも言ってください」


「ぜってぇ、むかねぇから!もし、勝手に妹キャラやったらお前を連れていくのをやめるからな!」


「・・・・・・はい」


 小さくなったこいつが落ち込むと、なんか罪悪感がでてくるな。


「と、とりあえず今から俺はモンスターを倒してこようと思ってたから、い、いこうぜ」


 罪悪感を紛らわすため、無理矢理話を変え東の出口へとイブを促した。


 イブは見るからにいじけてますといった感じで、両手の人差し指の先を合わせイジイジしながら俺の左肩のところを飛びながら付いてきた。


 いじけてるイブを連れながら町の外へと向かう途中、運良く他のプレイヤーとは1人とも会わずに外にでることができた。


「な、なぁイブ?飛んでたら目立つと思うんだけど・・・」


 万が一、他のプレイヤーに見られて『それどこで手に入れたの?』とか聞かれても説明が面倒なので、できればどこかに隠れてほしいのだが。


「・・・・・・だって羽付いてるもん。仕方ないじゃん」


「ん?何?」


「なんでもないです!じゃどうすればいいんですか!」


 こいつまだいじけてるのかよ。めんどくせー。


「おっ!ならここはどうだ?」


 俺が今装備している《冒険者の上着》にちょうどいいサイズの胸ポケットが付いてるのに気がついてイブに勧めてみた。


「!。えっ!いいんですかぁ?」


 いきなり豹変したなこいつ・・・。


「お、おう。こんなとこでよかったら入っていいぞ?」


「わーい!」


 顔に満開の花を咲かせたような笑顔をしながら、イブはすばやく俺の胸ポケットの中にスポッと入った。


「あったかぁぁい」


「そ、そか。それならよかった・・・」


 イブさんよ。今度は上機嫌ですか?ホントめんどくせー。



 イブの機嫌が治ったとこで俺は改めて町の外の景色を確認した。


 そこは、左右にたくさんの木々が立ち並んだ草原に、おそらく次の町へと続いているであろう1本道が伸びている場所だった。


 いかにもRPGの一番最初のフィールドって感じがするな。


「とりあえず、マップを開いて地図を見てみるか」


 俺がマップを開こうとしたとき、そこで「待った」がかかった。


「ハクト様。ここは私の出番ですよ」


 早速自分の使い道が示せてうれしいのか、ものすごい笑顔だ。


「ああ。そういえばイブはマップ情報とか教えてくれるんだっけ?」


「はい!お任せください。

 ここは《イオス平原》。モンスター適正レベルはLv1~Lv10となります。

 主に出現するモンスターはゴブリン・アルミラージ・ウェアウルフです。

 そして、次の町へいくにはフィールドボスのジャイアントウルフLv12を倒さないといけません」


「フィールドボス?」


「はい。この《クロムの町》を中心にこちらの東側が第1エリアとなり、フィールドの終着点にはボスが存在してます。

 ボスは1回倒すと後はノンアクティブいわゆるこちらから攻撃をしない限り攻撃をしてこなくなりますので、素通りすることができます」


「なるほど。じゃ第1エリアはそのボスを倒して次の町に行ったら終わりなのか?」


「いいえ。あくまでもフィールドのボスなので、その後にもフィールドと町があればその都度ボスというものは存在します」


「第1エリアにはいくつフィールドと町があるんだ?」


「申し訳ありません。私は元々チュートリアルのデータしかありませんので、その場所についてからじゃないとそこのデータが更新されませんので、この先がどうなってるのかはわからないのです」


 役に立てなかったことがショックだったのか、胸ポケットの中でイブはシュンとしてしまった。


「気にするなイブ。これだけの情報を貰えただけで十分だ。

 それに最初から全部わかっちゃったら面白くないだろ?」


「・・・・・・ハクト様。はい、ありがとうございます」


「とりあえず、フィールドボスに向けてレベル上げしようぜ」


「はい!」


 今、俺たちがいる近辺では他のプレイヤー達が狩りをしてるため、なるべく人が居なさそうなフィールドの端へ移動することにした。


 ここは最初のフィールドということもあってか、モンスターはすべてノンアクティブになっていたのでそんなに時間がかからずに人気のないとこへ到着した。


「じゃ、ここらへんでいいかな?」


 すでに俺の周りには、ゴブリンが10体、ウェアウルフが5体うろちょろしていた。


 なぜ人気のないとこを選んだかというと、チュートリアルで《ミニガン》の練習をしている時にイブに忠告を受けていたからなのだ。


 この《DFO》にはPKがあり、倒されると装備やアイテムがランダムで奪われてしまう。

 《ミニガン》が目立てば、必ず狙ってくるプレイヤーは出てくるだろう。

 その為、《ミニガン》の音が他プレイヤーに届かない位置まで移動する必要があるのだ。

 唯一救いなのが、自分の周辺20mを越えると視認はできても音は聞こえなくなるといった仕様になっているのだった。



「イブ、周辺にプレイヤーは?」


 イブはモンスターの他にプレイヤーも検知することができる。


「周辺20m以内にプレイヤー様はいません」


「わかった」


 イブに確認をとった後、【メニュー】→【装備】で《ミニガン》を装備した。


 肩にストラップが掛かり、右腰の辺りに本体が出現した。


「よし、じゃMPのことを考えて《単発撃ち》でいくかぁ」


 単発撃ちというのは、スイッチを押してすぐ離す1秒間の撃ち方を適当に名付けたものだ。


「単発撃ちと言っても、33発でてますけどね」


「わかってるよ!そこはつっこまない約束だろ」


「そうでした。申し訳ありません」


 こいつ絶対覚えてるのにワザと言いやがったな!


 気を取り直し、右手を《ミニガン》の右側面にある魔法陣に添えた。


「ファイアボール」


 右手に炎を宿し、魔法陣が金色に輝きながら炎を飲み込み、青色へと変わった。

 これで充填完了だ。


 銃口を目の前の5体のウェアウルフに向けーーー


 ダダダダッ!

 ダダダダッ!

 ダダダダッ!


 炎の弾丸は3回の単発撃ちで5体のウェアウルフに直撃し、体を燃え付くし一瞬で絶命させた。


「うひょー、やっぱすげぇなぁ」


「そうですね。さすがです」


「ただなぁ、MP消費が激しいから回復させるのにいちいち待たないといけないもんなぁ」


 MPの自然回復はスキルを習得していない限り、戦闘中では回復できないのだ。


 アイテムを使えば回復できるのだが、今はお金がないためMP回復薬は用意できていないのだった。


 俺はMPの自然回復を確認するため、視界の左上に表示されているHPゲージとMPゲージに意識を向けた。


「・・・・・・ん?」


「どうしましたハクト様?」


「いや、MPゲージが減ってないんだけど・・・」


 気のせいかと思い、一度目を閉じもう一度意識を向けたがやはりMPゲージはびくともしていなかった。


「なぁ、イブ。自然回復ってこんな早かったっけ?」


「いえ。MPの場合は1秒間に1回復しますので、本来ならまだ回復しきっていないはずです」


「え?え?んん~。じゃこれはどういうこと?」


「ハクト様、スキルをご確認ください」


 そう、これこそが俺が見落としていた大事なことだった。


 チュートリアルの時はMPが減らずに練習ができたので、こんな大事なことを気づかなかったのだった。


「もしかして・・・・・・MP節約ぅぅぅ!?」


「正解です」


「いやいや、でもこれでなんで消費が0になるんだ?」


「MP節約Lv1は通常消費MPを20%減させます。

 ファイアボールは初級魔法なので消費は10です。

 そこにスキルの効果で消費が8になるのです。

 そして、《ミニガン》は1発撃つのに消費の10%で撃つことができます。

 したがって、スキル効果がある場合は1発撃つのに消費が0,8になり、こちらのゲームは小数点以下は四捨五入ではなく切り捨てになるので実質消費は0となるわけです」


「まじかぁ・・・・・・。それはシステム的には問題ないわけ?」


「はい、問題ありません。最初からそういう仕様ですので」


 さすが適当な運営だぜ。

 でも、今回ばかりはこの運営の悪ふざけが神に思えてくるな。


「じゃ、いちいち単発撃ちしなくても初級魔法なら撃ちまくっても大丈夫なんじゃん!」


「はい、そうです」


 まじかぁぁぁ!俺無敵じゃん!

 ん?まてよ・・・


「なぁ、イブ?」


「はい?」


「お前もしかして最初から知ってたの?」


「・・・・・・はい」


「チュートリアルの時から?」


「・・・・・・・・・・・・はい」


「言えよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


「テヘ♪」


 テヘ♪じゃねぇよ。ちょっとかわいいなぁとか思っちゃったじゃねぇか。



 そこからはMPを気にする必要がないので、《ミニガン》を目に付いた傍からゴブリン・アルミラージ・ウェアウルフに向かって、撃って、撃って、撃ちまくった。


 発射数を最大にし、毎分4000発の炎の弾丸が周囲一帯を火の海にした蹂躙劇だった。


 まさに一言で表すならそれはもうーーー無双。


 Lvが10に上がるのに時間は掛からなかった。








次回『6、初フレンド』

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