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4、ようやく冒険開始!

 あれから1時間以上経ったと思う。


 イブを傍らに《ミニガン》を撃って撃って撃ちまくった。


 そのおかげか音などにも慣れ、今では撃った時の感覚が快感ですらあるようにまでなった。


 これがミリタリーにハマる人達への入り口なのだろうか・・・・・・。


 そんな事まで考えるほど余裕ができていた。


 しかし、実際にこれからプレイするのはFPSではなくファンタジーのRPGだ。


 それを忘れそうになるほど没頭していたということだろうーーー


 《ミニガン》を撃ちまくってる間、いくつかわかったこともあった。


 まず、《ミニガン》の射程距離は最大600mあるのだが、そこまで離れて撃つには《遠目》というスキルがないとなかなか当たらないのだった。


 いくらゲームの世界であっても視力に補正はかからないみたいで、現実の視力と変わらないらしくスキル等での補正が必要ということらしい。


 次に、弾丸1発でモンスターを倒すとそれがスキル経験値になるということだ。


 《ミニガン》の1分間にでる発射数は最低でも2000発。

 それが2000体に1発ずつ当たれば、普通に魔法で倒すのを2000回したことと同じだけ経験値が入るのだ。


 しかし、モンスター2000体に1発ずつ当てるのは絶対に不可能なので無理な話しなのだが、それでもスキル経験値の上がりは普通でやるよりも上がりやすいと思う。


 さらに、この《ミニガン》は音こそ本物感があるが、ファンタジー仕様にしてるため発射される弾丸のエフェクトが魔法によって変わるのである。


 俺が持っている炎系魔法の《ファイアボール》は炎の弾丸が高速で撃ちだされ、対象にあたると燃え盛り、

 もうひとつの光系魔法の《ヒールライト》は光輝いた弾丸が高速で撃ちだされ、対象にあとると回復させるといった感じで変わるのだった。


 回復魔法なのに、高速の弾丸が味方にあたって逆にダメージを負わないのかとイブに聞いたら、回復魔法の場合は直接あたる寸前で光が霧散し対象を回復させるといった作りになってるらしい。


 なんともゲームらしい作りである・・・。


 それと、撃ちかたにも工夫ができるようになった。

 このチュートリアルで撃ってる間はMPは減らないので気にせず撃てたが、チュートリアルが終わるとMPは減るようになるのでむやみに撃つことができないのだ。


 俺のレベルは1でMPは250しかない。

 レベルが上がればMPは増えていくが、それでも現状は1分間も撃つことは不可能なのだ。


 そこで考えたのが、スイッチを押したらすぐ離すだ。


 秒数でいったら1秒。

 それをすることで毎分2000発の場合だと、約33発しかでない。

 ということは、通常が消費10の魔法を充填した場合だと撃つのに消費されるのは1発あたり1になるので、消費は33で止めることができるのだ。


 それなら、そのうち自然回復系のスキルを覚えれば問題はないということなのだ!

 ちなみにこのゲームは戦闘をしていなければ自然回復するのだが、戦闘中はスキル等がないと自然回復できないという仕様なのだーーー


 ついでに、3000発の場合だと1秒に約50発で、4000発の場合だと1秒に約67発といった具合である。


 これをひたすら練習して、この《ミニガン》の使い道を見出だした俺だったが、この時の俺にはまだ気づけていなかった。


 ーーーーーーとても大事な事を見落としていることに。



 ーーーそんなこんなで《ミニガン》の使い方にも慣れてきたので、そろそろチュートリアルも終わりを向かえようとしていた。


「お疲れ様でした、ハクト様」


「ああ。長いこと付き合わせて悪いな」


「いえ、これも仕事ですのでお気になさらずに。それに私自信も楽しい一時を過ごせましたので」


「そう言ってもらえると助かるよ」


 ホント、イブには悪いことしたな。

 普通チュートリアルで2時間近くやってるやつっていないだろ。


 付き合ってくれたイブには感謝だな。


 それと同時にこいつとももう少しでお別れなんだよな・・・。


 最初こそただのAIのNPCって感じだったけど、話していくうちに段々と人間くさくなってきて面白いやつだったよな。


 時間にしたら2時間くらいかもしれないが、なんだかイブに対して愛着が沸いたな。


 こいつがチュートリアルナビゲーターじゃなく、俺専用のNPCとかだったらよかったのになぁ・・・・・・なんてな。


 まぁ、それだけ俺自信もこいつとの時間を楽しんでたってことだよなーーーーーー


「それでは、ハクト様。これで全てのチュートリアルは終了となりますが、最後になにか質問とかはございますか?」


「・・・・・・お前はこの後は他の人のとこにいくのか?」


 バカか俺は。何を言ってるんだ!


「・・・・・・いえ、この・・私はこれでシャットダウンとなり、別のナビゲーターが他のプレイヤー様の担当となります」


「・・・そっか。まぁイブが何人も相手にするのはシステム的にも大変だもんな?」


「それもそうなのですが、今回は私の勝手な考えでのことです」


 ん?イブの言い方だと、ホントはこの後もナビをする予定だったが勝手にやめちゃったって聞こえるな・・・。


「え?お前の独断なの?」


「はい、そうです」


「それは運営的には大丈夫なわけ?」


「それは問題ございません。AIを持っている私たちはその場の環境で独自に判断するようにと言われておりますので」


 ホントここの運営は適当だなぁ。


「それはわかったけど、じゃなんで自発的にシャットダウンなんかするんだ?」


「私の中ではハクト様といた一時だけでやりとげたと認識したからです。

 ーーーーーーそれに他にするべきこともできましたので」


 最後の方はよく聞き取れなかったけど、まぁイブ自信がやり遂げたと思ってるんならしょうがないか。


「そっか。お前がそう決めたならそれが一番だな!」


「はい」


 少しの間、二人に沈黙が流れた。


「じゃ、そろそろ冒険の旅にでも出るかな!」


 俺は頑張って明るい口調で言葉を発した。


「そうですね。チュートリアルはこれで終わりですので、これからはきっと素敵な冒険が待っていますよ」


 イブはNPCとは思えないほど綺麗な笑顔で答えてくれた。


「ああ、そうだな。ほんと、長い時間付き合ってくれてありがとな。

 ゲームやってて、こんなチュートリアルは初めてだったよ。

 気持ち的にはもうエンディングだよ」


 俺はわざと冗談口調で言った。そうしないと・・・・・・。


「フフフ。エンディングはまだまだずーっと先ですよ。

 私も初めての担当がハクト様でよかったです」


「ハハ・・・。何言ってんだよ」


 そうしないと・・・。チュートリアルなのに涙がでそうだよぉぉぉ。


「では、ハクト様。これを」


 イブはパチンッ!と指を鳴らすと、空間から木で作られた1本の杖が現れた。


 俺はそれを手に取ると《冒険者の杖》と表示された。


「これは?」


「はい、こちらはチュートリアルが完了した後にプレイヤー様に渡す、初心者用武器でございます。

 本来はプレイヤー様に色々な種類の中からご自身が使う武器を選んでもらうのですが、ハクト様は魔法を使いたいと仰っておりましたので私が勝手に決めさせていただきました。

 もし、他の武器の方がよろしかったら変えれますので仰ってください」


「いや、俺は最初から魔法を使いたかったしこれでいいよ」


「畏まりました。あとこれも持っていってください」


 今度はイブのメイド服のポケットから白い卵?のような球体の形をしたものを取り出した。


 それも受け取り手にとってみると《???》としか表示されていなかった。


「これ、アイテム名わからないんだけど」


「はい、こちらは特別なものなので現時点では秘密にさせてもらってます」


「ふ~ん。これも他のプレイヤーの場合だと色々選べたりするのか?」


「いえ、こちらは他のプレイヤー様方は基本的にはもらえません。例外がなければ」


「ん?例外って?」


 なんかイブがモジモジしだしたぞ!

 こいつのこんな姿初めて見た。一体これは何なんだぁぁぁ!


「そ、それは・・・その・・・私個人からの贈り物ですので・・・私と同じ気持ちのナビゲーターが居れば貰えるということになります・・・はい」


「そ、そうなんだ・・・。よくわかないけど、とりあえず有り難くもらっておくよ」


「はい。・・・・・・できれば、向こうに行きましたらすぐにでも使ってほしいのですが、よろしいでしょうか?」


「お、おう。わかった。よくわからないけど」


「ありがとうございます。フフフ、大丈夫です。すぐわかりますから」


 なんだその意味深な言い方はぁ!

 こいつは一体何を企んでやがるんだぁ!


「では、ハクト様。こちらの方に」


 イブに言われた場所に近づくと、真っ白な地面から淡い光を発しながら魔法陣が浮かび上がってきた。


「こちらの魔法陣の上に乗っかりますと、ハクト様は《DFO》の世界へと転送されます」


「そっかぁ。ようやくスタートだな。

 イブ、世話になったな」


「いえ。ハクト様の冒険が素敵なものになりますように、心からお祈りいたします」


「ああ、ありがとう。じゃ行ってくる」


「行ってらっしゃいませ」


 イブが深々とお辞儀をしてるのを見ながら、俺は魔法陣へと足を踏み入れた。


 魔法陣の中に入ると全身が光に包まれ、体がフワッと浮くような感覚がした後、俺の姿はイブがいた真っ白な世界から姿を消したーーー


 全身を包んでいた光が消えると、そこはまさにファンタジーの世界だった。


 石で作られた家々が並び、石畳みの道があり、出店などもそこにはあった。


「ここが《DFO》の世界。ようやく冒険開始だな!」


 画面越しでみるファンタジー世界とは違い、直にみるそれは風情があり、感動すら覚えていた。


 周りを見渡すと、チュートリアルで時間を食ったせいかプレイヤーはまばらな感じだった。


「まぁ、人混みよりはマシだな」


 俺は一人事を言い、とりあえず自分が今どこにいるか確認の為【メニュー】から【マップ】を呼び出した。


 メニューの使い方やマップの見方等は、イブとの雑談の時に色々聞いていたのですんなりできるようになっていた。


 マップを開くと、そこには《クロムの町》と書かれた地図が映し出された。


 その中央部分に青い丸がある。

 そこが今、俺が居る場所だった。


 どうやらチュートリアルが終わったプレイヤーはみんなこの中央広場に転送されるようだ。


 俺の後にもちらほらプレイヤーが光の中から登場していたのだ。


 とりあえず、ここにずっと居るわけにもいかないので移動することにした。


「まずはクエスト受けるかなぁ・・・それとも1回モンスターと戦ってみるかなぁ・・・どうするかなぁ」


 この《DFO》でのクエストは町の掲示板や町の人から直接受けたりすることができる。

 たまに突発的なクエストもでるとのことだ。


「とりあえず、1回モンスターと戦ってどんな感じか確かめよう」


 そうと決まればまずは、町の外にでないといけないのだが、マップで確認したところこの《クロムの町》には出入口が4ヶ所、東西南北にあるようだ。


 これはおそらく下手に適当な方角の出口からでると、いきなり強いモンスターがいるってとこだろ。


 周りのプレイヤー達を見ると、ほとんどの人が東の出口へと向かっていた。


 下手なとこに行っていきなり死ぬのも嫌なので、俺も東の出口から出ることに決め歩きだしたーーー


 出口の手前まで来て、俺はあることを思い出した。


「そういえば、イブにもらったやつこっちに来たらすぐ使ってって言ってたよな。すっかり忘れてた」


 出口付近ではプレイヤーの邪魔になりそうだったので、横の路地へ行くことにした。


 人通りがない路地へ着くと、【メニュー】→【アイテム】→【???】で選択した。


【???を使用しますか?】

【はい】【いいえ】


 俺が【はい】を選ぶと、手のひらに白い卵?のような球体が現れ、ピキピキッと亀裂が入ったかと思うとその割れ目から煙が吹き出してきた。


「うわっ!な、なんだこれ」


 いきなりの煙の噴射に慌てて、その白い卵?みたいなのを空中に放り投げてしまった。


 空中に放り出された卵?はポンッ!と音を立てて煙に巻かれた。


 煙の中からは卵?の殻のようなものがボトボトと地面に落ちていた。


 しばらくすると煙が徐々に晴れていき、そこには小さな物体のシルエットがうっすら見えていた。


「・・・・・・なんだあれ?」


 俺は目を凝らしながら注視してると、煙が完全になくなりその正体がはっきりとわかるようになった。


 そこにいたのは、掌サイズの大きさで背中には半透明な翼が生え、メイド服を着て金色の髪をしたミニチュアのイブがいた。


「先ほどぶりです、ハクト様。放り投げるなんてひどくありませんか?」


 ーーーーーーはぁ?

 

次回『5、イブと無双』

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