3、マジック オブ ミニガン
「・・・・・・はい、ありです」
これは諦めて受け入れるしかないな・・・
俺の中でのファンタジー系のVRゲームの形が崩れそうではあったが、使わずに置いておくという手段もとれるしこの問題はとりあえず避けておこう。
「はぁ・・・。わかったよ、一応貰っておくよ」
「それはよかったです。あまり深く考えずただゲームを楽しんでいただければ私共もうれしいです」
「そうだな。ゲームは楽しむもんだしな。イレギュラーがあってもいちいち気にしてたらゲームなんかできないよな」
「その通りです。では、これをこのまま地面に置いておくのもあれなので一度お手に持って性能とかをお確かめください」
「了解」
イブに言われるまま俺は黒くて凶悪そうな物体に手を伸ばし情報を確認した。
《マジック オブ ミニガン》
運営の悪ふざけで作り上げた、魔法という名の弾丸を放つガトリングガン。
【性能】
・INTが500%アップする変わりにDEX.AGI.LUKが500%ダウンする。
・1発につき通常消費MPの10%分を消費して撃つことができる。
(例:初級魔法が通常10消費するなら1発撃つのに1消費する)
・毎分2000~4000発。自己調節可能。
・1発の威力はINTで決まるので、消費MPが減っても威力は減らない。
【特徴】
・凶悪でゴツくてまさに男のロマン!(byミリオタスタッフ)
・側面に魔法陣があり、そこから魔法の弾薬を充填できる。
・グリップレバーで毎分発射数の調節と発射が可能。
ーーーーーー以上が武器情報だったーーーーーー
「なんだこれ!何ヵ所かツッコミたいとこはあったけど、当たりなのかハズレなのかいまいちわからないんだけど!」
俺は頭を抱え、真っ白な天井へと叫んだ。
「お答えできる範囲でしたらお答え致しますので、どうぞ質問してください」
イブの顔をチラッと見て、ここで騒いでても始まらないなと思い1度深呼吸をした。
「そっか。それは助かるよ。ありがとう、イブ」
「いえ。それが私の仕事ですから」
ホント、イブと話していると人間と話しているみたいだ。
「じゃいくつか聞きたいんだけど、ここの運営はバカなの?」
「はい、バカです」
即答だった・・・。
「まぁ、ガトリングガンをファンタジー寄りにしてくれたのは助かったかな。
俺、魔法使いたくてステ振りもINTにしてたから丁度よかったとも思える」
「それはよかったです。ではこの武器はINT上昇も付いているので当たりでしたね?」
「ん~。そうだといいんだけど、問題もあるんだよなぁ」
そう、それこそが魔法使いとして致命的な欠点。
「この武器さぁ、1発の消費MP少ないけど毎分2000発も発射されたらMP速攻なくなるよね?」
「そうですね。・・・・・・ガトリングガンですから」
最後の言葉が引っ掛かったけど今はスルーしよう。
「しかも低レベルのうちだったら1分間も持たずに攻撃できなくなるよね?」
「そうですね。・・・・・・ガトリングガンですから」
・・・・・・。
「そうなったら逃げるしかないけど、この武器装備したらAGIなくなるから逃げ切れないよね?
MP回復アイテムガブ飲み状態じゃん」
「そうですね。しかし、強い武器にはデメリットは付き物ですし・・・・・・それにガトリングガンですから」
・・・・・・。
「あのさぁ、イブ?」
「はい?」
「ガトリングガンって言葉だけで片付けるのやめてくれない?」
「すいません。つい口からツルっとでてしまいました。決して面白がって言ったわけではありませんので!」
こいつ絶対面白がって言ってるだろ!
というか、今気付いたが俺と話ているうちになんか段々と壁がなくなってきてるような気がするな・・・。
とりあえず、イブにジト目を送ってこの武器の活用法を考えることにした。
この武器の問題点。
1つ、ファンタジーっぽくない。
2つ、消費MPが半端ない。
3つ、見た目が凶悪。
まぁ、これぐらいだろう。
うん。よくよく考えるとMPさえどうにかなれば、この武器強いんじゃね?
さっきまでとはうってかわって、俺に一筋の光が見えたような気がした。
「イブ!俺、なんだか行けそうな気がするぅ」
「ネタですか?」
「ちげーよ!」
なんでこいつそんなこと知ってんだよ。今時のAIってすげぇな。
「ところでハクト様」
「んぁ?」
「試しにそちらの武器を使ってみることもできますが、どういたしますか?」
「え!そんなこともチュートリアルでできるの?」
「はい、チュートリアルですから」
「お前、それ好きだな」
「ん?」
「なんでもねーよ。じゃそのお試し頼むわ」
「畏まりました」
イブがパチンッ!と指を鳴らすと、今まで真っ白な空間だったとこが一瞬で闘技場のような場所へと変わり、そこには案山子が1体立っていた。
「さぁ、ハクト様。武器を装備して思う存分撃っちゃってください」
「思う存分って・・・・・・。なんか言い方が物騒だな」
「今回はチュートリアルなのでMPは減ることはありませんのでという意味です」
「最初からそう言えぇぇぇ!」
こいつは絶対からかってやがるな・・・
慣れなのかはわからんが、AIって進化するんだなぁ。
「申し訳ありません。ペコリ。
それではハクト様、装備の方をお願いします」
こいつ今「ペコリ」って口でいったよなぁぁぁ!
まぁ、いい。とりあえずここはあえてスルーして先に進もう。
俺はイブに「ああ」とだけ返事をして、メニュー→装備と念じた。
今俺の視界には 薄い青みがかった背景の装備画面が映し出されていた。
次に武器と選ぶとそこから右手、左手と表示されたので、俺は右利きなので右手の方を選択した。
すると【装備する武器をお選び下さい】と書かれた下の項目欄に先程手に入れた《マジック オブ ミニガン》が表示されていたのでそれを選択した。
装備したと同時に、肩にはストラップが掛かり、右腰辺りに出現した《マジック オブ ミニガン》長いので《ミニガン》と呼ぼう。を吊り下げていた。
ゲーム使用になっている為か、重さはオモチャで作られたような軽さだった。
銃身の手前ぐらいには《ミニガン》を持つためのグリップがあり、そこを左手で掴み。
後方の上部分に発射数の調節と発射するための、スイッチ付きグリップレバーがあったのでそこを右手で掴んでみた。
パチパチパチ
「すごく様になってますよハクト様」
イブのその言葉に少し照れた。
そして、満更でもない自分がそこにはいた。
「そ、そうかぁ?ヘヘ、ありがとう」
ちょっと気持ち悪かったかな・・・・・・?まぁいいや
「ハクト様、撃ち方のほうはおわかりですか?」
「ん~、なんとなくは・・・。
たぶんこの右手で握っているグリップレバーのスイッチを押すと発射だろ。
そしてこのグリップレバーを上下に移動することで発射数を調節できると思うんだけど、どうかな?」
「はい、その通りでございます。
ちなみに右側面に魔法陣があると思います。そこから魔法を充填することができます」
「なるほど」
イブの言った通り《ミニガン》の右側面には白く描かれた魔法陣があった。
「では、今ハクト様は初級の炎系魔法と光系魔法をお持ちですので、試しに充填して撃ってみてください」
「わかった」
俺はストラップで支えられた《ミニガン》を左手だけで持ち、右手を右側面の魔法陣に当てた。
ちなみに初級の炎系魔法は《ファイアボール》で光系魔法は《ヒールライト》である。
とりあえず俺は炎系の《ファイアボール》を使うことにした。
「ファイアボール!」
すると、右手に炎が宿り《ミニガン》の魔法陣は金色に輝きだし、右手の炎を飲み込んでしまった。
輝きが収まると魔法陣は青色に点滅していた。
「イブ、これは?」
「はい、これで充填完了です。青点滅は残弾ありで、赤点滅は補充警告で、残弾がなくなると元の白い魔法陣へとなります」
「なるほどなぁ。ちなみに途中で魔法を入れ換えることはできるのか?」
「はい、可能です。試しにこの状態で初級光系魔法の《ヒールライト》を充填してみてください」
俺は再び魔法陣に右手を当てて、魔法を唱えた。
「ヒールライト!」
すると今度は、右手が眩しく光輝きだし、魔法陣は青点滅から金色へと変わり輝きだし、右手の光を飲み込み再び青点滅へと戻っていった。
「うん、充填の仕組みはなんとなくわかったかな」
「畏まりました。それでは実際にあの案山子に向かって打ってみましょう」
「おう」
俺は右手をグリップレバーに戻し、銃口を案山子に向けスイッチを押してみた。
ーーーーーーーーーッ!!!
言葉ではいい表せれないほどの銃声が辺りに響き渡った。
あえて言葉にするなら『ダダダダダダダダダッ!!!』としかいい表せなかった。
《ミニガン》本体の軽さとは裏腹な音に、思わずスイッチから指を離し言葉を発せずにいた。
プシュー
《ミニガン》は高速回転の余韻を残しながら、煙を吹き回転スピードを落とし、そして止まった。
「・・・・・・」
「どうですか、ハクト様?」
「・・・・・・」
「ハクト様?」
「・・・ハッ!あ、あぁ」
イブの呼び掛けでなんとか我を取り戻すことができた。
「ハクト様、どうでしたか?」
「どうでしたか?って・・・・・・何コレ?」
「・・・・・・ガトリングガンです」
「いや、もうそのやり取りはいいから!
ファンタジー仕様になってたから、てっきりもっと優しい感じかと思ったんだけど・・・」
「そこは運営スタッフがどうしてもこだわりたいと言うことで、本物感をだす作りとなっております」
「あぁ・・・・・・そうなんだ」
やっぱりここの運営はバカだったぁぁぁ!
社長はガチャにでてくるし!本物感満載の機関銃作るし!
バカばっかだぁぁぁ!
「私もさすがにこの音はどうかとは思ったんですが、さすがにもう修正する気がないみたいなので、申し訳ありませんがハクト様にはここで練習して慣れてもらしかないのですよ。
もちろん私も最後までお付き合い致しますので」
修正する気がないってやる気もねぇのかよぉ!
でも、イブがここまで言ってくれてるんだから俺も腹を括るしかないな。
ホント、イブが人間だったらどんなによかったかーーー
次回『4、ようやく冒険開始!』