2、ガチャとシークレット
「えっ?・・・・・・それってチュートリアルガチャってやつ?」
「はい。1回だけですが運営からのささやかなプレゼントでございます」
「おぉ!それはありがたいなぁ」
VRになってから基本チュートリアルガチャというのはなかった。
もちろん無料10連ガチャというのもなくなってしまったので、ガチャは課金でしか引くことができなかった。
だから俺はここ何年もガチャを引いたことはなかったので、今回の運営のプレゼントはかなり嬉しかった。
「それではガチャの説明をさせていただきますが、よろしいですか?」
「あぁ。頼むよ」
そこからはガチャの提供割合などをイブは教えてくれた。
まず提供割合が《N=50%》《R=29%》《SR=18%》
《SSR=2.9%》《Secret=0.1%》となっていた。
ひとつ気になるものがあるが、それはあとでイブに聞くことにしよう。
そして、このゲームのガチャは武器とオシャレ装備が出るみたいなのだが、武器はSSRを引いてもゲームを進めていくうちにいずれ手に入れれるといったようなものらしい。
スタートダッシュしたい人にはいいとは思うけど、主にこのガチャではオシャレがしたい時に引いたほうがいいと思った。
「ーーーーーーーーーという感じになります。なにかご質問はありますか?」
「あー。ひとつ聞きたいんだが、このSecretって何なんだ?」
「こちらは10名様限定でございますが、運営スタッフが悪ふざけで考えたものがあたります。ですので当たりもあればハズレもあるということになります」
「うわぁ・・・。悪ふざけって。何か絶対当たってほしくないんですけど・・・」
「フフフ。まぁそう言わず、楽しみにしてください」
イブはそう言うが、確かここのスタッフって他とは違うってネットに書いてたよな・・・不安だ。
まぁ割合の数値をみても0.1%なんてまず当たるわけないしな。
とりあえずSecretのことは頭の中から追い出して、狙うはやっぱりSSRだよな。
「それではご準備はよろしいですか?」
「ああ」
俺の返事を確認したイブはまたパチンッ!と指を鳴らした。
すると、俺とイブの間くらいの位置にデカいモニターが現れ、その画面の中には満天の星空をした夜景が写し出されていた。
「ハクト様、ご自身のタイミングで画面にタッチをお願いします」
「あぁ、わかった」
俺は心の中でSSR来いと念じながら画面へと手を伸ばした。
やっぱりスタートダッシュできるのはうれしいし、何よりこういうのは当たりを引いてこそ面白いしな。
物欲センサー全開で画面へと手が触れた。
すると、満天の星たちがキラキラと輝き始めその中に白い流れ星が走った。
流れ星が流れていく度に徐々にアップになり、一回目は白い流れ星、二回目は青い流れ星、三回目は黄色い流れ星でアップ度合いが止まった。
「ん?あー、黄色ってことはSRかぁぁぁ」
これでフィニッシュだろうと思い、まぁSRでも上出来だなと思っていると、画面イッパイになってた黄色い流れ星が突如レインボーへと変化をした。
「おぉぉぉぉぉ!きたぁぁぁぁぁ、SSRだぁぁ!」
俺は歓喜に震えガッツポーズをとると・・・
「まだまだぁぁぁ!」
画面から知らないオッサンの叫び声がした。
「・・・・・・え?」
するとレインボーの流れ星がオッサンの叫び声と共にオッサンへと変わり、そのままオッサンは地面へとスタッと綺麗に着地を決めドヤ顔をした。
「・・・・・・え?・・・・・・なにこれ」
「おめでとうございます!ハクト様。Secretですよ!すごいですね」
俺がオッサンへと変わり果てた流れ星もとい流れオッサンを見て呆けていると、イブが少し興奮したように賞賛の声を掛けてくれた。
「Secret?・・・・・・このオッサンが?」
俺は頬をヒクヒクさせながらイブに問いかけた。
「はい!Secretでございます。そちらのオッ、、コホン!そちらの方はこのゲームの運営の社長様でございます」
今明らかにオッサンって言いかけたよな?
ってかこのオッサンが社長ぉぉぉ!
ってかこの演出がSecretかよぉぉぉ!
確かSecretってスタッフが悪ふざけで作った当たりもあればハズレもあるってやつだよな!
絶対ネタ装備じゃねぇぇぇかぁぁぁ!
「あれ?あまり嬉しそうではありませんが、どうかなさいましたか?」
「いや・・・・・・これ喜んでいいのか?」
「もちろんですよ!確率0.1%ですよ。まさにハクト様は奇跡のお方です!」
「・・・・・・ハハハ」
ちょっとイブがわけわからないこと言うから、乾いた笑い声しかでねぇ・・・
俺とイブがそんな会話をしてる最中も画面の中では、オッサンがクリスマスに貰うような赤と緑が入ったプレゼント箱を抱えながらソワソワしていた。
ちょうどモニターがイブとの間にあるため、イブとの会話中もそのオッサンのソワソワ顔が視界に入りかなりの勢いでイライラが募っていった。
「さぁ、ハクト様。こちらのオッ、、コホン!社長様からのプレゼント箱をお受け取りください」
お前またオッサンって言おうとしたろ。むしろ本人がここに居るわけじゃないんだから、もう呼び方オッサンでいいだろ。
とりあえずイブの言う通りこのままでいるわけにもいかないので、オッサンのソワソワ顔にイライラしながら画面のプレゼント箱に手を触れてみた。
「おめでとぅぅぅ!」
イラッ
画面に触れるとオッサンが箱を渡すモーションをしてきて、箱が開かれると同時に眩い光が画面を覆い尽くした。
光が収まるのと同時にモニターもそこから消え、(消える間際にオッサンが手を振っているのが見えたがそれはスルーした)黒い塊がゴトンッという音を立ててその場に落ちた。
「ん?」
俺は目を凝らしてその黒い塊をよぉく見た。
「は?」
それは戦争映画とかでよくみかけるようなフォルムをしていた。
「はぁぁぁ!?」
全長800㎜ぐらいで6本の長さ558㎜ぐらいある銃身を持つ機関銃ーーー
ーーーガトリングガンだ。
そのフォルムは黒く光っていて凶悪そのものだったが、そんなことよりも思ったのが・・・・・・なぜ?
「な、なぁイブさん?」
「はい?」
「こ、これはなに?」
俺は恐る恐るイブに聞いてみた。
「・・・・・・ガトリングガンですね」
「いや、知ってるよ!そうじゃなくて、なんでこんなのがここにあるのかってこと!」
「?・・・・・・それはハクト様が当てたからでは?」
「・・・・・・」
「・・・・・・?」
全然話通じてねぇぇぇ!!
俺が聞きたいことはそういうことじゃなくて!ってかなんかキョトンとした顔してるし!
そうだ!まずは一旦落ち着こう。
一旦落ち着いて、冷静になろう・・・
「ゴホン、ゴホン」
とりあえず大袈裟に咳をしてみた。
「えー、イブ?ちょっと質問いいかな?」
「?・・・はい、構いませんよ」
「このゲームの設定って何?」
「設定ですか?そうですね、大まかに言いますと剣と魔法のファンタジー世界で冒険をするですかね」
「うんうん。だよな。剣と魔法のファンタジー世界だよな?」
「はい」
俺は一度深呼吸をし、意を決して質問した。
「じゃ、これは何?」
「・・・・・・ガトリングガンですね」
「ああああぁぁああああぁあ!!なんでこの世界にガトリングガンがあるんだよぉぉぉぉぉぉ!」
俺は思わず叫び散らし、頭を抱えてその場に座りこんだ。
「ハ、ハクト様?だ、大丈夫ですか?」
突然、俺が叫びだしその場に蹲ったのでイブはどうしていいかわからない感じでオロオロしていた。
それからしばらくの間、静寂が二人を包み込んだ。
「・・・・・・はぁ」
あれから何分ぐらいたったろう。
俺の頭の中もようやく整理できはじめてきた。
「あのぉ、大丈夫ですか?」
イブが心配そうに俺の顔を覗きこんできた。
「・・・・・・ああ。ごめん、ちょっと取り乱した」
「いえ。元に戻られてよかったです」
まぁ、出てしまったのものはしょうがないよな。
Secretは運営スタッフの悪ふざけで作ったって言ってたし。
・・・・・・でも
・・・・・・でも、これだけは聞かなければ!
「ハクト様。他に何かご質問はございますか?」
「あぁ。イブ1個だけ聞いていいか?」
「はい。ご遠慮なくどうぞ」
俺はゴクリと生唾を飲み、息を大きく吸い込みイッパイになったところで目をカッと見開き、声がはち切れんばかりの声量で叫んだ。
「ファンタジー設定にガトリングガンってありですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁ?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・はい、ありです♪」
次回『3、マジック オブ ミニガン』