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11、リオン

「お兄!ビックリした?ねぇねぇビックリしたぁ?」


「・・・・・・あ、あぁ」


「エヘヘェ。やったねぇ」


 突然の背中の衝撃で振り返り、その原因は妹の里桜だと気づきビックリしたにはしたのだが、それは里桜がこの《DFO》をしていて俺を驚かせるために内緒にして今ゲーム内で登場したからではなく妹の容姿にビックリしたのだった。


「お、おい里桜ーーっじゃなかった。えーと、あぁリオンって名前にしたのか?リオン、お前何その格好?」


「え?かわいいでしょう?これ~」


 そう言って里桜もといリオンはその場でクルッと回って見せた。


「いや、かわいいけど・・・・・・なんでチャイナドレス?」


 そう、リオンの格好は左足の太ももから大きく切れ目が入っていて胸元の辺りとかに金の刺繍が施された、真っ赤な色のチャイナドレスだった。

 それに合わせてなのか髪型は二つのお団子頭で、まさに武闘家をイメージしたものだった。

 髪色はおそらく本名の里桜にちなんでだと思うんだが、桜色の髪をいていた。


「だって、私のスキル構成とか格闘だもん。ステもSTRとAGI振りだし」


「へ、へぇ~。というか、そんな服店に売ってたんだな?」


 俺には悪い予感しかなかった。おそらくだが妹の悪い癖がでているに違いない。


「売ってるわけないじゃん。やだなぁお兄、もうわかってるくせに~」


 いや、そんなとこで甘えれても意味わからんから!


「そ、そうなんだぁ~。ハハハ、じゃどこで買ったのかなぁ?お兄ちゃんわからないなぁ」


「決まってるでしょ~。課金だよ、か・き・ん♪」


 だぁ~、やっぱりかぁ!

 これが妹の悪い癖だ。欲しいものがあればすぐ課金してあげくにはお小遣いがなくなり、そして親には言えないからって最後には俺に泣きついてくるだよぉ。


 あれだけ注意したのに!してたのにぃ!これで何度目だよぉ、答えてくれ妹よぉぉぉ!

 ・・・っと、言いつつも妹に甘い俺は妹の涙にすぐ騙されお金を渡しちゃうんだけどね。テヘ!


「お前なぁ。俺との約束はどうしたんだよ?もう次はないって言ったろ?」


 とにかく今は少しでも厳格な態度をとらねば。


「っ!・・・だって・・・グス・・・欲しかったんだもん・・・グス」


 うっ!ちょっと言い過ぎたかな?やばいな泣き出しちゃったぞ。いやいや、ダメだ。騙される俺。厳格な態度だ!厳格厳格


「そ、そか。それじゃしょうがないな。今度は気をつけるんだぞ?」


「・・・・・・うん!ありがとうお兄!」


「「なんでやねん!」」


 ありがとうイブ&サリア。そのエセ関西弁でのツッコミ身にしみます。


「ところでハックン。そろそろ私達の紹介もしてほしんだけど?」


「ハックン・・・!?」


 うおぉ!里桜からなんかすさまじい闇のオーラが出てるぅ!ここは見なかったことにして話を進めちゃおう。


「あ、ああ。リオン、こちらが俺の仲間のサリアとおまけのイブだ」


「ヒドイ!ハクト様、私のことおまけだと思ってたのですか?いつも私こと胸の暖かさで包んでくれていたのにぃ」


「お前が胸ポケットに入っているからだろうがぁ!ってか今はそんなボケはいらねぇんだよぉ!」


「ボケだなんて。私は事実を言ったまでですよ?」


「おーしおし。イブちゃんよぉとりあえず一回黙ろうか?これ以上喋ったらお前のその銀色の髪をサリアと同じ金色にしてやるからな!」


「ご勘弁を」


「私の髪の色をなんだと思ってるのよ!ってか、イブちゃんそろそろ私泣いちゃうよ?本気で泣くよ?いいの泣いちゃうんだよ?ねぇ?ねぇ?」


 マジうぜー。紹介してって言ったくせに全然話進まねぇじゃん。

 というより、さっきから里桜じゃなくリオンが顔を下に向けたまま一言も喋らないんですけど・・・やばくね?


「・・・・・・ねぇ。お兄?」


「は、はい!」


「そこの人達と随分仲良くやってるんだね~?」


 妹よ。もうちょっと感情を込めて喋ってくれ!空気が冷たすぎるぅ!


「い、いや。仲良くたって・・い、一応仲間だしな・・・」


「へぇー。それで『ハックン』って呼ばれたり、そこのナビゲーターちゃんを胸に抱き締めたりしてたんだぁ?」


「や、やっぱりあれじゃないですかぁ・・・。一緒に戦ってるのに『さん』とか堅苦しい言い方もなんだかなぁと思いまして・・・・・・。そ、それにイブを抱き締めてはいないでござるよ?」


 おぉー!テンパり過ぎて語尾にござるとかつけちまったぁ。ってかイブとサリア笑ってんじゃねぇよ!


「そうでござるかぁ。それじゃ私の聞き間違いでござるのかな?」


 やめてくれ妹よ。笑ってしまうではないかぁ!

 ここで笑ったら絶対にあの腰にぶら下げてる凶悪なフォルムのガントレットで殴り殺されるぅ。我慢だぁ。俺の笑い袋よぉ我慢してくれ!


「き、聞き間違いではなく・・・プッ・・・イブのちょっとしたAIジョークでして。なぁイブ?」


「・・・・・・・」


 喋ろよぉ!ここは喋っていいとこだろうがぁ!こんなとこで空気読んでんじゃねぇ。


「あの~妹ちゃん?せっかくここで知り合ったんだからフレンドになろうよ」


 お前はもっと空気読んで喋ろよぉサリア!


「・・・・妹ちゃん?あの、あなたに妹ちゃんなんて呼ばれる筋合いはないんですけど?」


 あちゃー。妹に火がついてしまったぁ。こうなったら手のつけようがないので、俺は1歩下がっときます。


「そんな言い方しなくても。だってハックンの妹だから妹ちゃんでしょ?」


 ん?もしかして、サリアもヤバイ?とりあえずもう2歩ほど下がっておきますね。一応ね。


「っ!またハックンって言った。お兄の妹であることは事実だけど、あなたには呼ばれたくないです!第一、キャラネームが頭の上にあるのにあなたは読めないんですか?」


「っ!読めないわけないでしょ。じゃそっちこそ私のこと『あなた』って呼ばず名前で呼んでほしいんだけど。それともお兄ちゃんのことしか頭にないからカタカナを忘れちゃったのかな?」


「このババァ!」

「このクソガキィ!」


 いや、お前ら1つしか歳違わないからね・・・。


 それから30分間、サリアとリオンの口喧嘩が続き最後はお互いに疲れて終了となり、その場はログアウトすることとなった。



 翌日、朝起きて朝食を食べに1階にいくと里桜の機嫌が治ってるどころか不機嫌度MAX状態であった。

 さすがに母さんに何があったのかを聞かれ説明すると、ため息をつき「やれやれ、誰に似たのかしら」とお決まりの台詞を吐いて台所に引っ込んでいった。

 母さん、あんたに似たんだと思うよ・・・きっと。



 夜、ログインすると昨日口喧嘩をしてた町の中から始まり、フレンドリストでサリアがまだインしていないのを確認しその場で待つことにした。


「ハクト様、昨日は大変でしたね」


「あぁ。なんで俺の周りの女共はあんなのばっかりなんだろうなぁ」


「ですよね。ご苦労なさってますね」


「お前もだよ!」


「ヒドイ」


 イブとそんなやり取りをしながらサリアを待っていると、後ろの方からこちらに近づいてくる足音が聞こえ、サリアがインしたんだなと思い振り向くと。


「お兄!さっきぶり」


 お前かい!

 赤いチャイナドレスを着た桜色の髪を2つにお団子した妹がすごくニコニコしながら歩いてきてた。


「あ、ああ。お前かぁ」


「何その反応?かわいい妹が来たのにうれしくないの?それとも誰か他の人の方がよかったの?」


 なんだ白々しい言い方は!


「いや、そういうわけじゃないけど。だって、お前・・・」


 だってお前、さっきの晩御飯の時まで不機嫌だったじゃねぇか。

 何、お前はゲームの世界に入ると不機嫌度が0になるの?そういう補正でもかかってんの?


「だって何?」


「いや・・・何でもない」


「変なお兄。ところでお兄の今のステータスってどのくらいなの?」


「ステータス?ちょっと待てよ。昨日結構ガッツリ上げたからな」


 俺はそう言い、メニューからステータスを呼び出し確認すると。


「ねぇお兄?レベルとか上がったら随時通知くる設定にしてないの?」


「んぁ?なにそれ?そんなのしてないけど」


 設定なんて大していじってないからな。やったことと言えばイブに教えられてステータスの値を合計で出すやり方ぐらいだしな。

 イブも通知のことは一言も言ってなかったもんな。


「設定でレベルが上がったり魔法とかを覚えたりしたら通知できるようになるんだよ。そしたらいちいち確認しなくてもいいんだし。ステ振りだってここに何%って感じで設定しとけば自動的に割り振ってくれるから、狩りとかしてるときに便利なんだよ」


「それは便利だな。じゃ早速設定しとくかな」


 リオンに教えられるままメニューから設定を選び、通知をオンにして割り振りをINT100%で設定をした。


「よし!これでいいな。教えてくれてありがとなリオン」


「エヘヘ、どういたしまして。それよりも、あのババァが来る前に二人だけで狩りにいこ?」


「だ~れ~が~ババァですってぇ!このクソガキがぁ」


「「げっ」」


 すごいタイミングできたなサリアよ。

 それにしても「げっ」って言葉が俺の胸ポケットの辺りからも聞こえたような気がしたんだが・・・。


「ほら二人共、今日は言い争いはやめろよ。時間が勿体ないだろ」


「お兄がそういうなら、今日は相手にしないでおくね」


「ハックンの言うことなんてどうでもいいけど、確かに時間の無駄だから今日はやめとくね」


「なによクソババァ!」

「なによクソガキ!」


 おいおい・・・。お前ら実は仲いいんじゃねぇの。


「「それはない!」」


 なんで二人して読心術でシンクロしてんだよ。はぁ・・・。




 そんなこんなで、俺とサリアは昨日の素材を武器防具屋のおやじに売り今日はリオンも引き連れてフィールドへとやってきた。


「ってか、リオンはもう結構進んでるんじゃないのか?」


「まぁ、ステータスレベルは30でスキルの方はほとんどが8レベルってとこかな」


「高いなぁ。俺らと差が結構あるな。攻略の方は進めなくていいのか?」


「進めるって言ってもこの第1エリアはこの《エスタブ街道》の次にある《オステン王国》が最後の街だからね。そこにある迷宮の最奥にいるエリアボスを攻略をするんだけど、その迷宮のモンスターが強くてねなかなかボスまでいけなくて攻略組はそこで足止めを食っているって感じかな。だから、今は休憩ということでお兄のとこにきたんだよ」


「迷宮なんてあるのか?」


「それについては私がご説明しましょうーーーーーー」


 イブの説明によると、始まりの町の《クロムの町》を中心に東西南北にそれぞれ王国があるらしい。

 その4つの国は東の人間族・西の獣人族・北のエルフ族・南の魔人族というふうに別れていて、各国の王国にはその種族の神が迷宮に眠っているという。

 それがエリアボスということらしい。

 神が眠る場所というだけあって、その迷宮の難易度はフィールドの倍以上の難しさだと言われている。

 プレイヤー達はそのエリアボスを倒さない限り次のエリアへは進めないというわけだ。

 迷宮は種族によって深さが変わるらしいのだが、多いとこで100層もあるらしい。


 ここまでがイブから聞いた情報であった。

 イブも全てを話してはいないと思うので、後は自分達で随時探索していくしかないな。


「なるほどなぁ。それでリオン達は何層までいったんだ?」


「ん~、10層でギリって感じかな」


「まじかぁ、それはなかなか厳しいなぁ」


「まぁ、まだ開始から1週間もたってないからね。これからだよ」


「そうだな。それじゃレベル上げでもしますか!」


 そう気合いを入れた瞬間、突如地面が激しく揺れ始めた。


「うわっ」

「「きゃっ」」


 揺れはすぐに収まったのだが、一体なんだったんだろう。


「大丈夫か二人共?」


「私は大丈夫だよお兄」


「私も平気だよハックン」


「「チッ」」


「リオンちゃんが舌打ちをするのはわかるけど、なんでイブちゃんまで?ねぇ?ねぇ?」


 うん、お前ら平気だな。

 ってか、サリアよ結局名前で呼ぶことにしたんだな。


 女共がそんなバカなやりとりをしていると、視界に通知が流れてきた。


【緊急クエスト発生】

【各町にレイドボスが出現。プレイヤー達は近くの町まで行き設置された魔法陣からボスエリアに行き、レイドボスを討伐してください。報酬は貢献度によって異なります。レイドボスを倒すのにたくさん貢献していい報酬をゲットしてください】


「緊急クエストだと!こんなもあるんだ?」


「お兄は知らなかったんだね。これはβ時代に試験的に何度かあったクエストだよ。レイドボスってだけあってかなり強いから行くなら気合いいれないとだよ」


「どうするのハックン?」


「イブ、これにデスペナってあるのか?」


「いえ、レイドボスにはデスペナはありませんので何度でも挑戦可能です」


 それを聞いて安心したぜ。それなら結論は決まっている。


「よし、行こう。サリア、リオン」


「うん、お兄。あと、できれば私の名前を先に呼んでね」


「行こうハックン。私の名前を先に呼んだということは私だけを頼りにしてるってことだね」


「寝言は寝てから言ったほうがいいですよクソババァ」


「自分が後に呼ばれたからって悔しがらないでくださいクソガキ」


「「なにを~!」」


 ほんとこいつらすっげぇぇぇめんどくせぇ。

 息ピッタリなとこが余計にめんどくさい。仲良すぎだろ。


「「よくない!」」


 ・・・・・・はいはい。



 そうして俺たちは町に逆戻り、プレイヤーが集まっている広場まで来るとそこには巨大な魔法陣が光輝いていたーーーーーー














次回『12、レイドボス』

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