gobo-gobo
まぶしい光に包まれて、勇者が現れた。
「おおっ成功じゃ!」
「勇者様だ!勇者様が降臨なされたぞ!」
「なんて凛々しいお姿なのかしら!」
儀式の成功を目にした人々が歓声を上げ、手を打ち鳴らす。
それらを手で制しながら長老は勇者の眼前に歩み出て、深々と頭を下げた。
「ようこそおいで下さいました勇者様。私はこの村の」
長老は挨拶をして歓迎の口上を述べようとした。
ところが、勇者の様子がおかしい。
自分の喉を両手で押さえ苦しげな表情を見せているではないか。
顔色も青く、どうにも具合が悪そうだ。
「調子がよろしくないようですな。早々に休まれるがよろしかろう。これ、誰か!」
長老が手を叩くと、村の娘達が駆け寄ってきて勇者の体を支え、手を引きながら宿まで案内をしようとした。しかし勇者はその手を払いのけ、娘達を突き飛ばすと、その場で踊るような仕草をはじめた。
その不気味な挙動と意図がわからず、人々は遠巻きに見守ることしかできない。
やがて、勇者が大きく両手足を痙攣させた。
その口から大小の泡がボコボコと立ちのぼり、それが完全に空中に溶けてしまう頃には彼は苦悶の表情で息絶えていた。勇者の死体は、地面からゆっくりと浮き上がると、ゆらゆらと揺れながらその場を漂い始めた。
「やれやれ、どうなっとるんかのう」
長老は溜め息をつきながら懐からタバコを取り出して、自分のエラに差し込むと火をつける。
深く吸い込み口から吐き出すと、煙を内側に封じ込めたままの大きな泡ができた。
泡は長老の頭上を超え、どんどんと上へと昇っていった。
遥か彼方の水面をめざして。
「転移先の世界が転移前の環境と変わらないとかどんだけ奇跡的な確率だよ!」という他人様の呟きに触発された結果、こうなりました。