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姫騎士転生サリア  作者: Nyarnu
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いったい何なんだこの転移のしかたは

「うわぁー! 転んでしまったぁああ!」

 突然だが小石に躓いて転んだ。

「トラックが迫って来たー!」

 暴走したトラックが押し寄せ絶体絶命な時に奇跡は起きた。

「今度は何故かUFOにキャトルミューティーレーションされたぁ!」

「プロ野球選手のホームランボールがクリーンヒットぐふぉっ!!」

「高い所から爆乳美女の谷間にダイブ!」

「爆乳美女から少年漫画ばりの両掌光線が!!」

「頭上に金ダライが!」

「ドブに嵌って犬にションベンかけられた!」

 そんなこんなで俺は知らない場所へ転移した。

 具体的に何が起きたのか自分自身全然理解が追いついていなかった。


 突然飛ばされた俺は満身創痍状態でフラフラと彷徨っていた。

 木漏れ日差し込む林。小鳥が囀り歌い、リスが駆け回り、きつねがうたた寝している。

 風が吹けば木の葉達が擦れあう音で海の波に似た演奏を奏でる。

 満身創痍でなければ、毎日ここを散歩しに来たい、美しい場所だ。

 しかしながら4時間以上も散歩し続けるのは勘弁だ。

 全身ズタボロで所々アザが出来でいて痛みがはしる。喉はカラカラ。お腹は空腹。視界は霞んで意識は朦朧。傍目から見れば俺は瀕死な浮浪者に見えるだろうか。

 所持していたスマートフォンも圏外。そして充電切れ。

 もやし育ちでサバイバル知識のない身の上じゃ、こんな穏やかな林でも生き延びるのは困難である。

「み、水…」

「はい、みみず」

「んあ?…」

 ミミズを差し出された。

 満身創痍状態では突っ込む気力も沸かない。

 ミミズを差し出して来たのはファンタジーな格好した非常に見目麗しい美少女だった。

 サラサラと鮮やかな腰まで伸びた金髪。白と金の装飾が施された煌びやかな衣装。腰には高貴そうな紋章が刻まれた、鞘に収められた刺突剣。機能美を考慮されたデザインの、使い込まれて傷が多く磨り減ったブーツ。適度に身を守る肩当てに胸当て、腰当て、篭手、羽根兜、いずれにもまた高貴そうな紋章。胸当てから溢れ出すのは見事なまでの美巨乳。

 瑞々しい白い肌。自信に満ち溢れた鋭利な眉。長いまつ毛にうさぎのようなピジョンブラッドの瞳。サーモンピンクの潤いあるルージュ。

 そんな美少女が、オープンフィンガーから露出した指先でミミズを摘んで差し出しす。

「みみずだよ」

「再度言わんくていい…」

 美少女の指先でくねくねと動く気持ち悪いミミズが「やぁ」と挨拶して来た。

 この美少女は見た目凄く綺麗だというのに実は残念な性格かも知れない。

「あ、やっぱり…」

「やっぱりって?」

「君ってもしかして、日本人?」

「そういうお前さんも日本語がお上手なようで」

 流暢な日本語に日本人として違和感は感じなかった。

「こんな事もあるんだ。君ってライトノベルの主人公みたいだね」

 90年代アニメのヒロインのような美少女がこう仰る。

「ごめん…もう休みたいんだが……」

「はいはい大丈夫。妾が保護してあげるよ」

 もう駄目だ。人と出会った安心感もあってか、限界が来て気絶した。


 あー変な夢見た。

 小石に躓いたと思ったらトラックに撥ねられそうになってUFOにキャトルミューティレーションされそうになって野球のホームランボールがクリーンヒットして爆乳美女の谷間にダイブするかと思ったら少年漫画のような両掌光線撃たれてドブに落ちて犬のションベンかけられると変な場所に転移し、4時間以上も林を彷徨って、美少女にミミズ差し出された。

 凄い変な夢見たよ。

 歌が聞こえる。聞き覚えのない言語の歌だ。なに語だろうか。

「ん、うーん…がっこう行く準備せんと…」

 日々の週間にそって起床をする。

「あー学校か。懐かしいなー」

「あ、あれ…ここは」

 先程気絶した場所と同じ林の中だった。

 あれは夢じゃなかったのか。

「きみ、やっぱり日本人なんだね」

 美少女に膝枕されていた。

 聞こえてきた歌はこの美少女の歌だったようだ。

「そういうお前さんはファンタジーアニメのヒロイン様かい?」

「まぁそんな感じになるのかな。ここは日本とは違う異世界のエルキュトゥリズユーラっていう世界だよ」

「え、エレクト…? ルーラ?」

 とても言いにくく、とても覚えにくい。

「エルキュトゥリズユーラ。まぁ惑星の名称なんて殆ど使われないから、妾の国の名前はルーゼンダルクっていうの。絶頂とか超便利移動呪文とかじゃないよ」

 聞いた事のない国の名前だ。

 それと超便利移動呪文はRPGを円滑にする為には必要だろう。

「まさかの本当な異世界なのか」

「そうそう異世界」

 今のこの風景が異世界だと主張をしている。

「それでそんな事実知っているお前さんは、ファンタジー世界の案内人という訳かい?」

「んー、違うよ。きみの場合は数時間前にこの異世界に直接来た感じだよね?」

「そうだな。来たばっかりで全然分からんよ」

 ついでに何故異世界転移したのかも分からない。

「妾の場合は、一度死んで赤子から記憶を受け継いだの」

「お前さんもライトノベルの主人公ですかいな」

「お互い様だね」

 赤子からというとライトノベルじゃ死亡してからのパターンが大半だろうか。

「それで俺が日本人かもと思った訳か」

「そうそう。それで日本語で話しかけた」

 ぐうぅーとお腹の音が鳴る。

「あら、お腹が空いているのね。はい、みみず食べる?」

「お前さんの食文化ではみみずを生きたまま食すというのか…」

 冗談でもこんな気持ち悪いミミズ差し出さないで欲しい。

「冗談よ。とりあえず、今は持っているの飴とチョコレートくらいね」

「その、すまないが分けてもらえないだろうか」

「はい、あーん」

「包装を外してくれ…」

 チョコレートを包装紙にくるんだまま、あーんと言われても困る。

「クスクス、それじゃ、はむ…んあーん」

 今度は美少女の口にくわえられたチョコレートであーんされた。

「お前さんは初対面の男に膝枕しながら口移しという上級技を行うのか」

 童貞の身分では非常に難易度が高い。

「ふふっ、これくらいで勘弁してあげるわ」

 パキンと折られて手渡された。

 惜しい。

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