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幽霊ってやさしいんだね

私は屋上への階段を上っていた。

私の学校の屋上は本来は立入禁止なのだが机のバリケードを横へずらし隙間へ身体を滑り込ませる。この悪いことをしているような、身体の芯が逆立つような、口の端が緩むような、この感覚が大好きだ。今日は屋上から体育でも見学しようかと考えながら一段飛ばしで階段を上がる。落書きだらけの扉を開けた時、薄暗い校舎とは違う眩しさで一瞬目が眩んだ。


視界が元に戻るとそこに天使がいた。


「……誰?」

私がそう言った時には、天使のように見えたその人は、目にも留まらぬ速さで私の背後へと周り、突然後ろから私に抱きついた。

「わーい! 人だ!えへへー!」

私はつい硬直してしまった。いきなり抱きつかれたことにも驚いたが、それよりもその人の頭上に絵に描いたような天使の輪があったことに驚いた。

「こら!すぐ人に抱きつかないの!こまってるじゃない」

後ろからそんな声が聞こえた。聞いたことのないような透き通った声だなぁとぼんやり考えていた。

「ごめんなさい……」

怒られたからか、すんなりとその人は私を解放してくれた。改めてその人の方へ振り向いた。私に抱きついていたであろうその人の後ろには、恐らく綺麗な声の主であろう人が立っていた。

「……誰?」

私がまたそう聞くと初めに抱きついてきた人が元気いっぱいに話はじめた。

「あのね! はじめまして! 私ね、ねむいっていう名前なの! あのね、むつくがね、付けてくれたんだよ!えっとね、値段の値に無いっていう字、意味の意!」

矢継ぎ早にそこまで話すとにっこりと笑って手を差し出してきた。まるで幼い子どものようだ。

「よろしくね! えへへ!」

「よ…よろしく……」

そのまま握手をしようと、値無意の長すぎる袖をにぎった。手があるはずの位置には布の感触しかなかった。少し驚いているともう1人が口を開いた。

「ごめんね、びっくりしたよね。値無意ちゃんはすぐ飛びつくから…。私はむつくっていうの。夢に作るっていう字ね。本当の名前は違うんだけど忘れちゃって…あなたは何てお名前?」

夢作と名乗るその人は、長い髪を私と同じように高い位置で2つに結っている。結んである水色のリボンがかわいいと思った。でも、その頭上には値無意と同じように天使の輪のようなものが浮かんでいる。いつまでも話さない私を見つめる値無意の目線が痛いので、私は口を開いた。

「私は明日夢望っていうの。変な名前でしょ…。 というか聞きたいことがあるんだけど……」

私は少し躊躇った。聞いてはいけないことかもしれない。けれど、明らかにおかしいだろう。

値無意が首を傾げた。

「なぁに? 」

私は値無意の頭上を指さして言った。

「……それ、なに?」

一瞬の沈黙。今度は夢作がなんで知らないの、というように首を傾げた。

「私達みたいな幽霊に会いに来たんじゃないの?」

……幽霊?一瞬視界が揺らいだ気がした。私は幽霊なんて信じていなかった。先輩のタチの悪いイタズラだろうか。

「私達、ここで死んだ幽霊なんだよ?知らなかった?有名らしいけど…ほら」

夢作が値無意の足元を指さす。そこには足は無かった。乳白色の煙のようなものがスカートのしたからふわふわと漂っている。私の頭は、幽霊なんて有り得ないという気持ちと、どう見ても人じゃないという気持ちでぐちゃぐちゃだ。

「なんでここに来たの? いま、授業中じゃないの? もしかして、サボり?」

その声にハッとした。またぼうっとしていたようだ。

「そう…だよ。 あんまりクラス好きじゃないんだ」

夢作はもう飽きたのか屋上の柵の上から校庭を見下ろしている。

「ふぅ〜ん……」

値無意は意味ありげに言うと、突然大きな目をキラキラさせながら私に飛びついた。

「じゃあこれからここで一緒に過ごそうよ! ね!」


はじめまして。あめあめと申します。初めて小説を書き、その難しさと楽しさにわくわくするばかりでした。これから続きを書いていくのが楽しみです。ここまで読んでくださりありがとうございます。是非次話からもよろしくおねがいします。

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