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こぼれた後日談

さて、

ユールであるが、彼は今グレゴリオの寝室にいるな。マノとナダもいる。

語り手としての仕事は終わったから、多少くだけた話し方にしよう。


お前は誰かだと、まあ、こうしてそちらに伝えられるのも贈り物のちからさ。マノとは違った方法で「つたえる」ことが、わたしのちからなのだからな。


しかしまあ、にぎやかなことだ。あんなことになって何故にぎやかで居られるのか、まあ、見るがいい。そうそう、エオリアも居るぞ。


「こんの、くそじじい!」

「くそじじいとはなんだ、乙女の名を借りるくそがきめ」

「どっちかっていうと嘘つきじいさんだよなあ」

「おじいさま、そうはいってもお体にさわりますし」

「エオリアはやさしいなあ、くそがきとは大違いじゃなあ」

「いまさらじじいぶって話したって遅いですよ!」

ん、グレゴリオの声がするだと、その通り、あのくそじじ、いや、グレゴリオはこうして元気に話している。


要するにグレゴリオが一芝居ぶったのだ。まったくじじいの考えることはしょうもないな。

ユーリエという名前が嘘だと知っていたグレゴリオは、最初は物語を打ち切ると手紙に書いてユールを呼び寄せようとしたようだ。自分も嘘をついているわけだし、まあ、体調を崩しているのは事実であるから少し先も見えてきた身。手紙のやりとりをするうちにお互い自分自身のことばで話し合いたかったのだろう。

だがマノが伝言を持って来た。これは少し脅かさなければずっとマノが伝言代わりに使われる、それでは目的が達成できないと考えたじじいは、否グレゴリオは、孫も使用人も巻き込んで騒動を起こしたのだ。

たしかにエオリアは、あのとき決定的なことは言っていないな。侍女も容体が急に変わったとしか言っていないな。だから許されるとは言えないが、あのあとひょいと奥から出てきたくそじじいに、ユールもマノもナダも罵倒を禁じ得ないのはしょうがないと思って欲しい。


「だいたいなあ、うちの孫を口説こうなんて青臭いもいいところ」

ユールが顔色を変えたところを見ると、多少色気のある文章を手紙で送り始めたところだったらしいな。

「おじいさま」

「うちの孫はやらんぞ、だいたいなあ、感想も青臭いんだ、格調というものが分かっておらんあの台詞は」

「そういうのを古臭い、というんですよ。いまの流行は軽やかな恋愛であって、身分の差を書くとしてももう少し」

「ユールさんも」

エオリアが止めようとしているな。少し離れたほうがいいぞ、これは

「いい加減に! なさいませ!」

ばう、と風がおきた。言葉の圧力というわけでもない。本当に室内で風が起きたのだ。

「おじいさまもお医者様に無理はいけないと言われていますでしょう! ユールさんも男性なら男性と、それならわたくしもこのような役回りはいたしませんでしたのに!」

怒っているな、風も吹いている。感情が高ぶると風を起こしてしまう種類の「贈り物のちから」だろうな。

マノとナダを見ないって? とっくに隣の部屋に避難している。

エオリアが男性を苦手という理由も、おそらくはこの風を起こす体質がなにか起因しているのだろうがそれはまた別の、エオリアの物語だ。

やがて風がやみ、ユールとグレゴリオがエオリアに謝っている。マノとナダはそっと衝立の陰から顔を出したな。そしてふと、笑みがこぼれた。暖かい光景だ、そういうことにしておけ。

やがてひとしきり親交を深めた五人はひとまず別れる。この物語の紡ぎ手であるマノと、ナダと、ユール、三人の若者が笑顔で屋敷を出、小さくなっていく。

これからもユールとグレゴリオの文通は緩やかに続くようであるし、マノの話はまだ語りたいこともあるがな、ここらでしまいとしよう。

マノ、手を開いてごらん。



あなたに向けて、声が流れる。

「めでたし、めでたし」



わたしの声だ。美声だっただろう?






手の中のことば

おしまい

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