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君の隣には僕がいる  作者: 番茶
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第11話 生涯の相手








ダンス自体は問題はない。


必死に練習してきたのだもの。中の上は伊達ではない。カレンたちに目をやる余裕こそないもののそれはおそらく今日が初日だからだ。








楽しい。



素直にそう思える。






練習の時と何が違うのか、練習の時にはなかった高揚感があって、そして来る前とはまた別のフワフワした感じだ。

アランさんと目が合う度にドキドキしてしまう。先ほどうっかりトキめいたせいか、ダンスのせいか。




初対面の人にこんな気持ちなのをエディに言えば「おい、アレックスはどうした」と呆れられてしまうだろう。お母様たちの話を聞いていると婚約者のいない人達は大抵夜会などのパーティで出会った人と恋に落ちると言うが、確かにこんなにドキドキしていればそうなってもおかしくはないと今なら納得できた。











曲が終わる。







少し名残惜しく思いながら礼をした。







そういえばこの後はどうするのだろう。これもまたお母様に聞いておけば良かった。早くここを離れなければまた次の曲が始まってしまう。


カレンは?と周りを見渡せば次の男性からダンスの誘いを受けている様子だった。リックさんはカレンの手をうやうやしく相手の手に乗せた。カレンの戸惑う表情を見る限りせっかくだから踊っておいで、とでも勧めたに違いない。

普段だったならパッと逃げてしまっているはずだがどうやら誘いを受けるらしい。








アランさんに視線を戻せば彼もカレンの方を見ていた様子だった。




「カレン嬢はまだ踊っているようだし、せっかくだから庭を散歩しないかい?」


「こんな暗いのにお庭に出られるのですか?」


「おや?知らなかったのかい?ご自慢の庭園が完成したお披露目パーティだからね、ライトアップしてあるんだよ。」





カレンは踊っているし、アランさんの誘いを断る理由もない。誘われるままテラスから庭園に出た。テラスから少し離れているが確かに庭園は明るく灯されているようだ。














「わぁ、綺麗…」












正面奥には金木犀がズラリと見え、ツツジが庭園を取り囲み、真ん中には大きな噴水がある。神話から出てきたかのような女神だろうか、乙女達が戯れている見事な彫刻施されていて本当に美しい。ツツジから噴水までの道程にも花壇があり、色とりどりの花々が植えられている。


人は中ほど多くはない。所々に置かれた白く可愛らしい猫足のベンチに腰掛ける人、歩きながらうっとりと庭園を見つめる人、さまざまだ。

庭園の入口には給仕が2人ほど飲み物を持って待機していて、私たちもグラスを受け取った。








「エスコートを願い出てもいいかな?」



「えぇ、もちろん」




アランさんの手を取り歩き出す。

私たちは少し歩いた後はしばらくの間ベンチに腰掛けお喋りをした。


随分仲良くなったとは思う。

アランさんと呼ぶのはなしになったほどだ。

アランについてわかったのはここから少しばかり離れた伯爵家の末っ子で、上には兄が2人と姉が1人いるらしい。今日はリックさんが参加すると聞いて招待を受けたらしい。



初対面でこんなに話せるのはアランが人懐っこいからか、年が5つも離れている余裕からか、それともやはりシルエットがアレックスに似ているからだろうか。私も学院のことや4人のことを色々話した。



「そろそろパーティも終盤だろうから戻ろうか」と言うアランが立ち上がりまたエスコートしてダンスホールに戻った。

曲が終わり、そしてまた次の曲が奏でられる所だった。






「おや、どうやら最後の曲が始まったらしい」


「なぜ分かるの?」



私でも知ってるほど有名なワルツ。練習の時でもこの曲を踊ることは多かった。



「ここの御夫人はいつもこの曲でパーティを締めるんだよ。」



「この曲がお好きなのね。」



なるほど、と納得しているとバーカウンターで家族の所に戻っているカレンを見つけた。リックさんも一緒な様子で親戚同士楽しそうに会話しているのが遠目にわかる。




「ねぇ、ソフィア。最後だし踊ろうよ。」


返事を待たずにアランは私の手を引いて歩き出す。「え?ちょっと!」と慌てる私を見て面白がるように、でも本当に楽しそうに無邪気に笑った。

















ワルツが終わる。












曲が終わってダンス終わりの礼をすると会場からは拍手が起こり、賑やかなまま主催者の挨拶が行われ、招待客の視線はステージに目が注がれる。







「ソフィ、」


「ん?どうしたの?アラン」


横に立っているアランと目が合い、その目はどこか寂しげな微笑みで、急にそんな表情をするもんだから内心驚いて髪を撫でられていることにも気付かなかった。






「今日はソフィと踊れて楽しかったよ」




「また会ったら僕と踊ってね?」とそう言ってアランは前髪横だけに垂らしていたソフィの髪にキスをした。


































「あら、お帰りソフィ!」



お母様を始め、家族やカレンの家族にもおかえり、と出迎えられる。

「カレンは遠くからでもすぐわかるのに貴女は全然わかんなかったわ」と豪快に笑われた、貴女の娘なのにちょっとヒドイ…。







カレンも楽しかったようで帰りの馬車の中でも色々と話してくれた。私が見たあの後ももう1人と踊っていたらしい。まだ誘いを受けてたらしいがリックさんがちゃんとストップしてくれたのだとか。


別れ際に「ソフィ、貴女戻ってきてからずっと顔が真っ赤よ?大丈夫?」と言われたのは聞かなかったことにして「パ、パーティ楽しかったわね!また学院でね。」と告げて帰った。













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