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君の隣には僕がいる  作者: 番茶
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第9話 はじめてのひと







夜会が行われてるお屋敷に着くまで、私とカレンはお母様たちから宿題を言い渡された。



「いい?楽しみなのもわかるけど、ちゃんと他の人たちと交流するのよ?」



「あなた達の行動が私たち家族みんなの信用問題にもなりますからね。逆に言えばここで仲良くなればいつか助けていただけるようなこともあるからお名前とお顔をしっかり覚えて失礼のないようにご挨拶してね。」


ふふ、と嬉しそうなお母様たち。お母様たちがこんなこと言うもんだから楽しみと緊張と使命感でなんだかそわそわが加速する。




お母様たちはさらに馬車を降りる寸前でこんなことも言った。



「あ、そうそう。あなた達今日が初めてなんだから最初に踊る方はできるだけタイプの方になさいね。」



「どうして?」



カレンが問いかける。私もわからなかった。私たちは婚約者がいるのにタイプな人探すの?と二人の頭の上にはハナテマークが並んでいる。





「初めて踊った人はね。一生の思い出に残るものだからよ。」

















二人はどこか懐かしむように微笑んだ。



























お屋敷に到着し、私たちは中へと案内される。知らない人のお屋敷なんてそうそう来ることはないのでここでもなんだかワクワクソワソワ。でも先ほどお母様たちに釘を刺された所だからあまりキョロキョロしないようにお母様たちの後ろをついて行く。



玄関ホールが広く吹き抜けになっており、真ん中には庭園をお披露目するほどの方だからお花が好きなのだろうか、大きな器に大ぶりの花が活けられている。その真上にはシャンデリアがありホール全体を暖かみのある光で照らしている。建物自体の装飾は華美ではないが、花と彫像品が多いのでまるで博物館のようだ。



奥に進むとダンスホールがあり、たくさんの大人達がわいわいと楽しそうにしている。夜会はまだ開催されておらず踊る者はいない。だが一番端の小さなステージには小編成の楽団がこれまた楽しそうに仲間と雑談をしながら控えめな音量でチューニングを行っているのがわかる。


夜会が始まるのは主催者の挨拶の後なので、どうやら今は乾杯のためのグラスを持って待機しているようだ。






「ねぇ、ソフィ…みんなキラキラしてるわ」


さっきまでそわそわしながらも黙っていたカレンが呟いた。私的にはそんな静かにはしゃいでいるカレンの目が一番キラキラしてて素敵よ、と思ったが口には出さず「夜会ってすごいのね」と言っておいた。そして私は彼女とはぐれないように手を握った。












あぁ、緊張する。










はぐれないようになんて気遣ったつもりが、本当に手をつないで欲しかったのは私の方かもしれない。



それからみんなでグラスを持ち、先に来ていたお父様たち男性陣と合流してしばらく。ガヤガヤしていたダンスホールがスッと静まり大人たちの目線を追うと今夜の主催者らしきおじ様が立っていた。


主催者の方のスピーチも終わり、「それでは皆様、お楽しみ下さい。」という言葉を皮切りに演奏が始まった。

どこに線があるわけではないのに部屋の中心部分いる人たちが踊りだし、踊らない人たちとの境界が出来た。まるで集団行動のようだった。みんな慣れているんだなぁ…。


ポーッとそんな様子を眺める。

この輪に私たちも入れるのだろうか…。緊張と不安は増すばかりだ。この日のためにダンスの練習も執事相手に熱心にやって来たし、一連の礼儀作法だって家庭教師に習ったし何度も復習した。その成果を今夜見せないときっとアレックスとエディにだって笑われてしまうわ…。




「さぁさ、あなた達も行ってらっしゃい。今日はお父様たちもいるし私たちもここで見ててあげるから安全よ。」



はいはい、とにこやかに言うお母様たちによってまだ決意の固まり切らない私とカレンは知らない人たちの海に放り出された。



















「カレン、どうしよっか…」


当てもなくそろそろと歩きながら問いかける。私たちの手はまだ握られたままだ。なんとなく止まることができない。


「…どうしていいかわかんないね…」


彼女はちょっと不安そうだ。

私もそれは一緒だが二人共知り合いがいるわけでもないだろうし、とりあえずテラス側の壁を目指す。


お母様が言ってた「タイプの人」なんてとてもじゃないが探せない。

彼に出会ったのはそんな時だった。
















「ん…?え?君、カレンかい?」










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