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約束  作者: 結美子
9/18

センター試験1日目 19:40

「ただいま。ママ。」

「お帰り藍ちゃん。」

 家に帰りつくとママが温かく迎えてくれた。お願いしていた通り、今日の出来は訊かないでいてくれた。夕飯は私の大好きなミートソーススパゲティだった。粉チーズをたっぷりとかけて食べた。

 お風呂の湯船につかりながら、私は今日あったことについて考えていた。もちろん、皆川君のことだ。ふと思ったのは、3年間離れていたとしても小学校中学校と9年間も同じ学校にいた人の顔を忘れてしまうものなのかということ。私には皆川君の顔はすぐに分かったし、小学校が違っていた綾子ちゃんも彼に気付いていた。もしかして、私に気付いていたのにわざと気づかないふりをしたの?もし、そうなら…。森野さんって女の子が原因なの?あの子に私の存在を気づかれたくなかった?私が邪魔だから。誤解されたくないから。それなら、忘れたふりなんかしなくていいのに。ただ、久しぶりって言って彼女だよって紹介してくれたらいいのに。何で分かってくれないの?バカ。嘘つかれるのが一番つらいのに。残酷なほど優しい人。好きだけど嫌い。

「藍ちゃん、大丈夫?のぼせてない?」

「あっ、ごめんママ。大丈夫だよ。気持ちよくってゆっくりしすぎちゃっただけ。」

 考え事をしていたら、いつの間にかかなりの時間が経っていたようだ。私はすぐにお風呂から上がった。

「藍ちゃん、牛乳ね。」

「ありがとう。ママ。」

 お風呂上がりの冷たい牛乳。やっぱりおいしいな。

「藍ちゃん、はい、どうぞ。」

「えっ、何?わあ、おいしそう。」

 ママが出してきたのはママお手製のスコーン。それに桜色のジャム。私はスコーンにジャムを塗って一口食べた。

「おいしい。このジャムってもしかして、桜ジャム?」

「正解。花びら買うの大変だったのよ。まだ時期じゃないから。でも、藍ちゃんのために頑張って買っちゃった。」

「ママ、ありがとう。大好き。」

 やっぱりこの桜色のジャムは桜ジャムだったのね。私は桜ジャムが大好きなのだ。薔薇ジャムの次に。でも、験担ぎなら桜だよね。ママはいつもこうやって励ましてくれる。

 スコーンを食べ終わると私は歯磨きやトイレを済ませてベットへ潜り込んだ。皆川君、どうしてるだろ。私のこと思い出そうとしてくれてるのかな。それともやっぱり忘れたふりであって私のことなんか全く気にしていないのかも。ううん、今更考えても無駄だよね。もう、彼のことは忘れないと。涙が頬を伝うのを感じた。本当は忘れられないことも分かっている。だからこそ、3年近くたった今でも彼のことを考えているのだ。でも、忘れたい。忘れられてたなら私も忘れなければ。みんなにも気づかれてしまう。明日、どうしようかな。綾子ちゃんたちに探してみるって言っちゃったから。今度はきちんと確かにいたねって言わないと。その時に涙がこぼれなければいいけど。私が動揺しなければきっと私が皆川君に忘れられてたなんてことはあの3人に伝わることはないはずなのだから。きっと大丈夫。一晩寝ればきっと平気。

 いつの間にか私は眠りについていた。

 漸く一日目が終わりました。さて、二日目はどうなるでしょうか。作者の私自身、最後のイメージしか決まっておりません。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。

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