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約束  作者: 結美子
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センター試験1日目 07:50

 試験会場の大学の坂に近いバス停でバスを降りた。

 坂を上っていると、小鳥の歌が聞こえてくる。隣を車が走り去っていく。太陽は優しくこちらを照らしていた。

 歩くこと30分、目的地に着いた。控室は大学の講堂。この控室には私の通っている木田南高等学校、木田北高等学校、木田東高等学校、木田西高等学校と公立高校4つだ。南以外の高校は人数が少ない。進学校として有名なのは南だけであり、他は普通科があるとはいえ、専門学校やセンター試験を課さない私立大学、私立大学の指定校推薦などで進学する人が多い。私のクラス、3年7組理系選抜のクラスは講堂の後ろのほうに座席がある。

「おはようございます。鈴谷先生。」

「おお、おはよう。七瀬。」

 先生に挨拶して席のほうへ行った。

「真知ちゃんおはよう。」

「藍ちゃん、おはよう。」

「隣、いい?」

「うん、どうぞ。」

 クラスメイトの浪原真知子ちゃんとそう会話し、隣に座った。コートを脱ぎ、座席にかけた。鞄とリュックを下ろし、リュックから日本史の教科書を出した。最終確認だ。

 だんだんと増えてくるクラスメイト達に他校の生徒。集中力が途切れてきた。どうして私立と公立で控室が分かれているのだろう。皆川君に会えるか、彼が今どんな人になっているのか、気になってそれ以外に身が入らない。

「はあ。だめだ集中できない。」

「藍ちゃん、頑張れ。」

「ありがと。」

 思わず漏れた独り言に真知ちゃんが励ましの言葉をかけてくれた。私は筆箱から鉛筆、消しゴム、鉛筆削りを出し、ティッシュを袋から出し、ハンカチを出した。ポケットから生徒手帳や手鏡等を出し、代わりにさっき出した受験に必要なものを入れた。それから受験票を出した。そして、最後に皆川君に以前もらった手紙をセーラー服の内ポケットにしまった。お守りとして。

「地歴公民1科目受験の皆さん、受験会場へ移動を開始してください。」

 ちょうど準備が終わったときに先生の声がした。私たちは控室から受験会場へと移動を始めた。私のクラスでは真知ちゃんと舎人綾子ちゃんが同じ会場だったが、皆川君に会いたい私は一人で会場へと向かった。急いで控室を出て、ゆっくりと歩いた。少しでもすれ違う可能性を高くするために。

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