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約束  作者: 結美子
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センター試験1日目 06:20

 センター試験1日目、目を覚ますと時計の針は6時20分を指していた。私はいつものように木田南高等学校のセーラー服に着替え、朝食を食べに1階へ下りていった。

「あら、藍ちゃんおはよう。」

「おはよう、ママ。」

 私はママににっこり笑いかけて、2人朝食を食べ始めた。私の家族はママとパパと私の3人。パパは単身赴任中だから家にはママと2人っきりなのだ。

 朝食を食べ終えると歯磨きや顔洗いをすませ、自分の部屋に上がる。鏡台の前に座って化粧ポーチを出すと、化粧水と乳液を顔全体になじませる。今日は休日ではないのでうっすらとメイクするのみだ。アイラインを細く目尻に入れる。もちろん近くで顔を見なければわからないくらいに自然にだ。それからビューラーで睫毛をカールさせ、少しだけ長く見えるようにマスカラをつける。唇には桜色の染料とキラキラが少しだけ入ったリップクリームを塗って完成。その間5分。ナチュラルメイクの完成だ。校則で化粧は禁止されてはいないけれど、他の高校の生徒もいるのにあまり濃いメイクをしては顰蹙を買う。髪は何もしなくてもよりショートだが、少しだけお洒落にしようと左側を少しだけ編んで耳の後ろで大きめのピンでとめ、みぎがわは前に垂れないくらいに髪をとって耳の後ろでとめた。カーディガンは真紅のものを選んだ。受験会場では防寒着の着用が認められているため、少しでも目立つ色にして皆川翔哉君に見つけてもらうために。

 皆川翔哉さんは中学生のころ同じ部活、美術部に入っていた。小学校から同じ学校だったけれど、一度も同じクラスになったことはない。彼は私の初恋の相手で、今でも片思いの真っ最中。中学最後のバレンタインにチョコを渡し、ホワイトデーに振られた。それでもあきらめきれない理由は、きっと振られた理由が”高校が違うから”、”高校では恋愛より大学進学を考えたいから”だからだと思う。それから”君のことはずっと忘れないよ”って、そんな歯の浮くような科白を残していったから。彼は、私が小学2年生の時に転校していった友達に中学2年生の時に再会して、彼女が私を覚えていないことに私がショックを受けていたことを知っていたから、そうやって言葉を残してくれたのだろう。

 準備が終わるとカーディガンの上から黒のコートを羽織りリュックを背負ってかばんを肩にかけ、階段を下り、玄関で黒の少しヒールのあるローファーを履いた。

「行ってきます。ママ。」

「行ってらっしゃい。頑張ってね。藍ちゃん。」

 ママに挨拶をして家を出た。

 雲のない空は、まだ少し暗い。私はゆっくりとバス停へ向かった。

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