自己採点の日
何度確かめても631点しかない。全然足りない。700点なければならなかったのに。これでは理学療法士は無理か。看護かなあ。
私の志望校は国立周防大学保健福祉学部理学療法学科。推薦は無理じゃないかとママやパパに言われながらもここを受けさせてもらった。700点あれば良いと言われていたが、私は600超えたことさえ今回が2回目全く足りなかった。前・後期試験は680点あれば安芸県立大学の理学療法学科が受けられるはずだったが、とてもではないが足りないので、国立周防大学の看護学科になるだろう。
昼食を食べ終わると、個人面談の時間まで自由にできた。そこで私は3人に問い詰められていた。
「藍那、皆川君にどうして平手打ちなんかしたの?」
美城ちゃんが直球で訊いてきた。私が皆川君をひっぱたいたとき、3人はそれを見ていて、美城ちゃんと真知ちゃんはその場に残り、綾子ちゃんが私を追いかけて来たそうだ。
「だって、あの人、私のこと覚えていなかった。」
私はそう言って思わず涙ぐんだ。それで初めていまだに吹っ切れていないことに気付いた。1日寝たら今度こそ吹っ切れたと思っていたのに。
「藍那…。」
「美城ちゃんでしょ。あの人に私の名前教えたの。」
私は美城ちゃんの言葉にかぶせるように訊いた。美城ちゃんは彼と同じ会場だった。彼が訊くとすれば、綾子ちゃんより美城ちゃんに訊いた可能性のほうが高い。
「そう。皆川君が、真紅のカーディガンのショートのかわいい子誰って訊くから。藍那だって。」
「あの人、私のこと覚えてなかったのに、美城ちゃんのことは覚えてたんでしょ。」
私は美城ちゃんに叫ぶように言った。3人の顔は少しこわばっていた。
「それにさ、あの人、高校で恋愛とかしないって言ってたのに、森野さんって可愛い女の子と仲良さそうにしてた。あの人、わ、私に嘘ばっかり。」
涙ながらに私は訴えた。
「藍那ちゃん、森野さんって言った?」
真知ちゃんがいきなり訊いた。
「うん。かわいい小柄でこげ茶の髪のくるくるの小悪魔系の子。」
私が答えると真知ちゃんはちょっと考え込むようにして言った。
「たぶん、その子私の中学時代の友達なんだけど、香苗ちゃん。あっ、森野香苗ちゃんね。あ、でもなあ。やっぱりいいや。」
何を言おうとしたのか訊きたかったけれど、真知ちゃんは意外と頑固だから教えてくれないだろうと思ってやめた。3人とも諦めたのか、私にまた質問することはなく、進学についての話に移行していった。




