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約束  作者: 結美子
13/18

センター試験2日目 12:45

 皆川君を振り切って控室に戻った私は、すぐに昼食を食べ始めた。先ほどの場面をあの3人に見られずに済んだことがせめてもの救いだ。見られていたらいろいろ訊かれるのは目に見えている。どうして彼は私にかまうの。忘れていたくせに。彼にたたかれた方が熱い。頬も少しほてっていた。

 少し冷静になると、彼ともう一度話をすればよかったと思った。もしかしたら、昨日あれから私のことを思い出して、それで声をかけてくれたのかもしれない。それに、ああやって振り払ったからには、もう二度と彼から声をかけられることはないだろう。いや、でもこれでいいのかもしれない。このままいれば、きっと彼のことを忘れられるから。

 そういえば森野さんという子はどうしたのだろう。彼が私に声をかけていてもなんとも思わないのだろうか。まあ、そこは私の気にすることではないか。

 昼食を食べ終わると、私は数列の解き方の確認をしてからトイレに行き、メイクを軽く直した。それから受験会場へと向かった。皆川君に声をかけられることはなかった。

 会場の中には、昼食を食べている3人がいた。声をかけないのも変かと思い、声をかけた。

「みんなまだ食べてるんだね。」

「あら、藍ちゃんお帰り。」

「藍、相変わらず速いね。」

「もう食べ終わったんだ。」

 3人ともどうも会話に花を咲かせていたようで半分も食べていない。

「あんまりゆっくり食べてると時間なくなるよ。」

 私はそう言って自分の席へ向かった。


 数学ⅡBの試験はまあまあだった。微積は途中でマスの数と計算で出た答えが合わなくなったし、ベクトルは途中で出せなくなった。でも、数列は最後まで出せたからいいかな。群数列でなくて良かった。私は特に何を考えるとでもなく普通に控室に戻った。今度は皆川君に声をかけられることはなかった。まあ、当たり前か。先ほど感じ悪く、彼を振り払ったのだから。控室の前では、生物の先生が待っていた。昨日も今日も来ていなかったのに、理科の試験の前だからだろうか。私は好きな先生が来てくれていたので少し明るい気分になって控室に戻れた。

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