通学路
私が通うはずだった高校の通学路。
入学試験の時に来たっきりだ。
高校生活を送れないなら送れないなりに、私はこの出来事を青春としてしまおうと。
「まずは電車だね」
私の高校は電車で三つ駅を挟んだ先あるのです。
ですがこの体では切符を買うことは出来ない、ですから。
「ええっと、こうすればいいのかな? わ、透けた」
初めて物を透けた事に心躍る。
つまりこれを生かし改札を潜るのです。
「ふふ、いけない事してるみたい」
まあ、いけない事なんですけど。
改札のドアを難なくススッーと抜ける。
正直浮遊しているから電車に乗る必要は無いんですけど。気分ですよ~気分。
「わあ! 電車が!」
行ってしまいます!
急がないと遅刻しちゃう!
乗るために全力で走る。幽霊だろうと足はありますよ。
「ああ、ドアも!」
ドアが閉まりかけて、もう普通の人なら間に合わない。
ですが思い出してもみてください。
私はなんだったでしょう。
そう、幽霊です。
実体がありません。
だからこんな荒技もできちゃうんです。
「ていや!」
もはや完全に閉まってしまったドアに突撃。飛び乗り乗車。
ぶつかることはありません、そのまますり抜けます。学生気分もへったくれもありませんがこれが私なのです。
「なんとか乗れましたぁ」
幽霊でも疲れるんですね。ちょっと鼓動が。どう、どう。
電車の中には満員とはいかないまでも結構な数の人がいた。
「ふう、座る場所もありませんね」
この体で座れるのか分かりませんが。
でも地面には立てていますよね? う~ん、研究の余地がありそうです。
「あ、そうだ!」
いい事思いついちゃいました!
「上に行きましょう!」
二階があるのではありませんよ? 走行中の電車の屋根に上るんです。
「生身の体じゃ絶対出来ませんね。 よいしょ」
3メートルくらい浮くために力を入れる。どうやって浮いてるのか自分でも分かってません。てへ。
天井を透けてピョコっと顔を出す。
「わあ~~!」
目の前に広がるのはきれいな海。雲一つ無い空。それを例えるなら常時変わる風景画。
「こんな景色もあったんですね~」
生きていたら気付かなかった、知る術も知らなかった、死んでるからこその。
「幽霊も、案外悪くないですね」
また、色々なことを発見しよう。色々なことを知ろう。色々なことを体験しよう。
まだ私には知らないことが多すぎる。
そんな決意を決めた15歳の春。
景色を見すぎて目的地を過ぎてしまったのは秘密。
見ていただきありがとうございます。
楽しめましたか?
なるほどそうですか。
こんな感じでやっていこうと思います。
一日体験幽霊とかやってないもんですかね?