表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

序 ~夢~

頭を鈍器で殴られたようだった。

意識がハッキリしない。

視界がグラつく。

それでもどこかで冷静な部分があった。


―――目的地は分からない―――


―――目的地は分からないが行かなければならないというのは分かる―――


―――だから歩き続ける―――


体が重い。

肩が重い。

腰が重い。

足が重い。

ただただ重い体で歩き続ける。


息が苦しい。

喉が渇いて張り付いたように痛い。

胸が痛い。

心臓が体の外に飛び出してきそうなほど痛い。

腹部が痛い。

肺がつぶされるように痛い。

それでも足が止まらない。


―――苦しくても足が止まらない―――


―――ただ歩き続けて行かなければならない―――


―――目的も分からず歩き続けることに何の疑いもない―――


気分が悪い。

吐きそうだ。

全部ぶちまけて楽になりたい。

なのにぶちまくことができない。

体も気分も最悪だ。


―――目的地が近づいてくる―――


―――何故か分からないが分かる―――


―――同時に少しずつ頭も冴えてくる―――


頭が冴えてきてある事に気づいた。

私は、何か大事なものを忘れてきたと気づいた。

しかし、その大事なものが分からない。

それは何だったのだろうか?

考えようとするとまた頭に霧がかかるように思考できなくなる。


―――全部が面倒だ―――


―――考えることが、いらない―――


―――今はただ、歩き続ければいい―――


思考するのを諦めて歩くことだけ考える。

それだけが苦しみから逃れる方法だと信じて。

しかし、それは正しいことではないとも感じていた。

苦しみから逃れる方法はきっと無いのだろう。


―――あぁ、到着する―――


―――そうしたら考えればいい―――


―――何を?考える?どうして?―――


何かを、大事なものを忘れないように考える必要がある。

どうして分かる?

分からないけど、考えないと大事なものが無くなる。

何が無くなる?

分からないけど、無くしたらいけない何かが無くなる。

それは、とても嫌だ。


―――ああ、大事なものが無くなる―――


―――それは嫌だな―――


―――大事なものは、失いたくないな―――


気づけば体が楽になっていく。

息が出来る。

体が軽い。

気分も悪くない。

そして、大事なものも無くしていない気がする。

忘れ物はもう無いだろう。


―――これなら、大丈夫そうだ―――


―――忘れていたものは全て見つかっただろう―――


―――きっとこれで大丈夫―――


―――根拠は無いけど、これなら大丈夫―――


―――大丈夫?何が?何に対して?―――


考えが結論にたどり着く前に意識は一気に奪われた。

結論にはたどり着けないままだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ