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諸事情で暫く更新出来ませんでした。

今後も恐ろしく不定期と思われます。

 羊を狩る事数時間。大分コツも掴めてきて一匹を倒す時間も早くなってきた。

 スキルが上がったのも勿論関係あるが、それ以上にプレイヤースキルが上がっている。

 具体的に言うなら、俺は今羊から攻撃を受けていない。

 突撃するだけの単純なモーションだし、出始めさえ押さえれば余裕で避けれる。


 まずはノンアクティブな所に背後から忍び寄り「バックスタブ」

 ダメージでアクティブになった羊のモーションを先読みし、突撃をひらりと回避。

 然る後に通り過ぎた羊にもう一度「バックスタブ」を叩き込めば終了だ。

 練習の為に通常攻撃だけで倒した事もあるが、マタドールの様にひらひら避けて一方的な惨殺になった。

 時間効率を考えてこの方法はあまりやっていないが。


 「バックスタブ」そのものはLvが設定されていないスキルだが、その分熟練度は短剣に行く。

 短剣のLvが上がれば「バックスタブ」の威力も上がる。

 今の短剣のLvが5だから、計算式は分からんが10くらいになればバックスタブで羊は一撃だろう。


 「バックスタブ」で一撃で倒せればもっと効率が出せるのだが、俺の目的は羊の乱獲ではない。

 あくまでも今の俺の目的はあの糞忌々しい崖を飛び降りる事だ。

 そんな事を目的にする自分に疑問が湧かないでもないが、男の心に一度火が点いた以上、二言は無い。

 『いつか無事に飛び降りてやる』の、いつかを早めるだけのこと。


 そんなこんなで俺の手元には大量の「マトン」と「羊毛」がある。

 「羊毛」をバンテージに合成して、「マトン」を売り払った金でポーションを買えば完璧だ。

 さて、では村に行って諸々準備するとしよう。



   ◆◇◆◇◆


 村の名前は「始まりの村」何とも捻りの無い村名だ。今後「2番目の村」とか出てきたら運営の頭を疑おう。

 村の中央には噴水。その周りでは待ち合わせだろうプレイヤーがそこそこ居る。が、村全体に人はまばらだ。

 ログインしたばかりの頃の人ごみの印象が強かった俺にとっては朗報だ。人ごみは苦手なんだ。

 噴水から四方に伸びる舗装路には露店をやってるPCや、雇われNPCが散在し、賑やかしになっている。

 判別法は呼び込みの有無だ。声を上げるのがPC、じっと佇んでるのがNPC。


「おーい兄ちゃん、そんな初期装備の短剣じゃ心許ないだろう。このナイフなんてどうだい、安くしとくぜー」

「それよか防具だよ防具、防具がなきゃどんな武器も活きないぜ? この服なんてどうだ? 動きやすくて防御力もそこそこだぞ」

「アクセサリー、アクセサリーはいらんかねー。紳士淑女も、そうでない人も、アクセサリーは重要だよー」


 通り過ぎざま、俺に対する呼び込みとそうでもない呼び込みがかかる。

 むぅん。確かに俺は武器も防具も初期装備。グレードアップしたいとは思う。

 しかしながら、俺には崖攻略という最重要ミッションが待っている。余計な事に使う金は無い。

 崖攻略後どうするかはまだ考えてないが、その時になったら装備の充実を図ろう。

 そう結論し、呼び込みは華麗にスルー。

 声を出してる方もそれほど真剣な呼び込みではなかったらしく、特に何も言わず別の人に呼び込みを続けている。


 俺が目指しているのは食肉屋という名のNPC店だ。

 この『久遠の幻想』、昨今のVRMMOには標準搭載な空腹度と味覚再現を実装している。

 肉は煮て良し焼いて良し茹でて良し、しかもNPCからもドロップ品でも賄えるお手軽食材だ。

 現実に存在しない肉もあるそうで、VRMMO製作者の腕の見せ所の一つだと雑誌で読んだ事がある。

 なんでも、食べ物の味でゲームを選ぶグルメなプレイヤーもいるとか。

 このゲームはどうなんだろうなー、と益体の無い事を考えつつ、食肉屋の店主に声をかける。

 店主は禿頭に髭を蓄えた、如何にもなおっちゃんだ。


「すいません、マトンの買取をお願いしたいんですが」

「あいよ! らっしゃい!」


 店主の威勢の良い声と共に売却ウィンドウが現れる。

 俺はそこに持ってる全てのマトンを放り込んだ。

 視線操作よりも実際に指を使った方が楽なので、俺のアイテムボックスからマトンを摘んで売却ウィンドウに落とす。

 店主は驚いた顔をして、


「兄ちゃん、随分溜め込んだなぁ! マトン126個、1個50Gだから6300Gだが良いかい?」

「あぁ、問題ない」


 売却ウィンドウのOKボタンを押して、売却成立。

 マトンは最弱mobの羊からノーマルドロップする物だから安いのは仕方ないだろう。

 レアドロップの「羊の角」「羊の肝」は念の為とっておく。

 肝の方はホルモン的な何かかと思いきや、角と同じく強化素材らしいのだ。

 使うか否かは置いておいて手元に残しておきたい。


「まいどありー」


 店主の声を背中に、俺は続いて雑貨屋を目指す。

 雑貨屋とはいえ売っている物は、『武器』『防具』『アクセサリー』『その他』の『その他』である。

 それ故、ポーション始め色々と雑多な物が陳列されているのだ。


「いらっしゃーい」


 食肉屋のはす向かいにある雑貨屋に入ると、銀髪ショートで碧眼な女性が声をかけてきた。

 カウンターに身を投げ出して何ともだらしない格好だが、暇なのだろうか?


「すいません、初級合成セットと、初級ポーションが欲しいのですが」

「はいはい、ちょびっと待ってねー」


 その声と共に、別段待つ事もなく購入ウィンドウが表示される。

 ウィンドウに載っているのは初級合成セット、という名の厚手の手袋とマット。

 そして親しみすら覚える赤い液体の入った小瓶だ。


「ポーションはおいくつ?」

「予算が6300だから、初級合成セットの800を除いて買えるだけ下さい」

「OK、OK。なら116個だねー」


 雑貨屋の店主が蕩けた声を出すと、ウィンドウ内のポーションの数が116個となり、ウィンドウ下部に合計金額が表示される。

 合計金額の左に表示されるOKボタンを押し、購入完了。


「まいどー」


 ひらひら手を振る店主になんとなく手を振り返し、雑貨屋を後にする。

 さて、準備は整った。次は、と……。



   ◆◇◆◇◆


 場所を変えて村からそう離れていない森の中。

 後ろ暗い事も無いのだが、なんとなく人目につかない場所を選んでしまった。


 アイテムボックスを開き、中から合成セットを実体化させる。

 サイコロ状の光がいくつも組み重なり、弾けた先には手袋とマット。

 ある種幻想的な光景だが、感慨は少ない。VRMMOとしてはありきたりな演出だからだ。


「さて、これはどうやって使うのかな、っと……」


 手袋を取り敢えず両手に嵌める。嵌めた後、じっと見つめるとウィンドウが中空に表示される。


―――――――――――――――――

初級合成の手袋:

 合成したい物を手に取り、スキルを発動。

 然る後に両手を合わせる事で合成が可能。

―――――――――――――――――


 ふむ。じゃあこのマットは何なんだ? と、マットに視線を向けると、


―――――――――――――――――

初級合成のマット:

 合成したい物を載せ、スキルを発動。

 手袋を嵌めた手を付く事で合成が可能。

―――――――――――――――――


 とある。つまりは手に掴める程度の大きさの物は手袋のみで、もっと大きいものはマットを補助に使うという事か。


「まぁ、取り敢えずはやってみますか」


 手袋を嵌めた手でアイテムボックスから「羊毛」を実体化。

 脳内命令でシステムウィンドウを開き――。


「っと、しまった。俺合成のスキル持ってたっけ?」


 迂闊だった。合成セットを買ったは良いがそもそも使えるのか、俺?

 システムウィンドウを閉じ、ステータスウィンドウを開いて確認すると、そこには合成Lv1の文字があった。


「合成キットを装備したら自動取得するタイプか。ちょっと焦ったぜ……」


 スキル取得音が流れないスキルも有るという事か。ステータスはちょくちょく確認するようにしよう。


「さて、では気を取り直して……」


 システムウィンドウを開き直し、レシピタブから「バンテージ」の素材を調べる。

 「初級バンテージ」は「羊毛」2つで出来るらしい。

 俺は「羊毛」をもう一つ実体化させ、両手に持つ。


「合成、っと――」


 スキルを発動させ、「羊毛」が光りだしたのを確認してから両手を合わせる。

 手の中でもごもごと蠢くような感触と、強い発光。多少びっくりしたが手は合わせたまま暫く待つ。

 光が収まった所で手を開けば、そこには「初級バンテージ」が収まっていた。


「ほほぅ、これはちょっと楽しい。しかし一個ずつは面倒だな――」


 そう思い、多少げんなりしながらアイテムボックスを開くと、タブが増えていた。


「なんだこれ?」


 タブには「合成」と書かれている。

 アクティブにしてみると、上には手袋の絵が描かれたスロットが二つと、それに挟まれる何も描かれていないスロット。

下には10個程の何も描かれていないスロット。


「これはひょっとして……」


 予感を胸に、手袋を外して上のスロットに納める。手袋は吸い込まれるようにスロットに納まった。

 続いて、下のスロットの一つに「羊毛」をありったけ放り込む。その数134個。スタックが99個なので2スロット使っている。


「よし、合成! っと」


 スキルと発動すると、合成タブ内の手袋が光りだす。

 そして、下のスロットから「羊毛」が2つ消え、上の何も無いスロットにバンテージの絵が現れる。


「ほほぅ、これは便利。合成は一度やったら簡略化できるって事か」


 さらに合成タブを観察すると、タブ内の最上段に「全て合成」なるボタンを発見。

 微塵も迷わずにそれを押すと、光るというエフェクトすら簡略化し、「羊毛」が全て消えた。


「おろ? バンテージは何処にいった?」


 少なくとも合成タブ内には存在しない。

 アイテムタブを開いてみると、そこには――


「初級バンテージ65個と、燃えるゴミ3個、か……」


 どうやら合成には失敗もあるらしい。手作業と自動合成とで確率がどうなっているのかまでは分からないが。

 何となく手作業の方が失敗率は低いような気がするなぁ。まぁ、検証はどっかの廃人がやるだろうから気にしない。


「さてさて。これで準備は整った。あとは崖に挑むだけ、と――」


 俺はニヤリと笑い、彼方に存在する崖を睨み付けた。

 俺を熱くさせた事、後悔するが良い!!



■現在のステータス

―――――――――――――――――

名前 :ナオキ

クラス:シーフ

スキル:短剣Lv5

    探知Lv1

    鑑定Lv1

    落下耐性Lv23

    ポーションLv37

    バンテージLv37

    合成Lv12

    ―――――

    バックスタブ

    ―――――

    暗殺の極意

―――――――――――――――――

今回から末尾に現在のステータスを表記してみようかと思います。

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