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この作品は、ナオキの一人称作品です。

VRMMOが好きなので自分でも書いてみました。

お目汚しとは思いますが、ご一読頂ければ幸いです。


R15と残酷描写は多分出てきませんが一応タグ付けておきます。

<キャラクター名:ナオキ クラス:シーフ で間違いないですか?>


 無機質な女性の機械音声に、俺は迷わず「はい」と答えた。


<それでは、久遠の幻想の世界を存分にお楽しみ下さい>


 そう聞こえた直後、俺の目の前は真っ白になり、気が付けば長閑な村の噴水前に立っていた。



   ◆◇◆◇◆


 今、俺は「久遠の幻想」というVRMMOをプレイしようとしている。

 「久遠の幻想」は所謂スキル制のVRMMOで、特に目新しい物の無い作品だ。

 VRMMOが世に出始めて数年経っている。

 その中でも有名どころがチラホラと現れてはいるのだが、俺は敢えて新参の「久遠の幻想」をプレイする事にした。

 理由は単純で、VRMMOの端末を購入した直近でサービスインするのがコレだったからだ。

 トッププレイヤーになりたいという欲求は無いが、古参と呼ばれる人種が居る所に入っていくのも気が引ける。

 周りが高Lvばかりという状況では楽しめるものも楽しめなくなりそうだ。

 少ないバイト代を貯めて苦労して買ったVRMMO端末だ、肝心のゲームに辟易して埃を被るなんて勿体無い。

 全員が同じスタートラインに立つ状況から始めるのなら、そういった事も無いだろう。

 ゲームそのものの面白さはまた別の話だが。


 ゲームそのものは、スキル制ゲームにありがちな「数千種類のスキルと、無限の組み合わせ」を謳っている。

 スキルの内訳は、

『ノーマルスキル』『クラス特性スキル』『クラス固有スキル』『称号スキル』『ユニークスキル』

 の5種類。


 『ノーマルスキル』は何かをする事で身に付くスキル。

 『クラス特性スキル』はクラスを取得した際に付いてくるおまけスキル。(クラスによっては被り有り)

 『クラス固有スキル』はクラスを取得しなければ身に付かないスキル。

 『称号スキル』は特定の行動によって取得した『称号』に紐付いて身に付くスキル。

 『ユニークスキル』はキャラメイク時に自動取得される、キャラ固有のスキル。


 あとはクラス取得する際に必要となる「前提スキル」と呼ばれるものもあるが、これは単にノーマルスキルの組み合わせだ。

 それぞれにレア度と呼ばれる等級もあるらしいが、詳しい事は追々調べていこう。



   ◆◇◆◇◆


 長閑な村はどうやら始めの拠点となる所らしく、それなりの広さがあるようだった。

 ぐるりと辺りを見回してみると、噴水を中心に十字に大きな通りがあり、その脇を二階建ての建物が埋めている。

 建物も道も、どちらも石造り。中世ヨーロッパ風の世界観という事だったな、と見回しながら思い出す。


「それにしても……凄い人だな」


 思わず口に出してしまう。辺りには人、人、人。

 身動きが取れない程ではないが、どちらを向いても人が居る。

 服装は大半が布の服の上下で、皆似たようなものだ。

 髪色や瞳の色は数えるのも馬鹿らしいほど多彩で、現実では決してお目にかかれない光景だろう。


「人ごみは苦手だ……」


 不満を声に出し、急ぎここから離れる事にする。

 サービスイン初日のゲーム開始地点なんて人で溢れるのが当然だ。

 ここはさっさと村の外に出て適当に狩りでもしよう。


「っと、その前に……」


俺は頭の中で「ステータス」と念じる。

念じるだけでスキルだろうとシステムメニューだろうと何でも使えるのは便利だ。


「……何だこれ?」


目の前に開いた、半透明のステータスウィンドウにはこう記されている。



―――――――――――――――――

名前 :ナオキ

クラス:シーフ

スキル:短剣Lv1

     探知Lv1

     鑑定Lv1

     バックスタブ

     暗殺の極意

―――――――――――――――――



 短剣、探知、鑑定は分かる。

 公式サイトを見た記憶を掘り起こせば、短剣がシーフの前提スキル。

 探知と鑑定は特性スキルだろう。

 バックスタブは固有スキルだろうな。

 暗殺の極意、ってのはユニークスキルだろうが……効果が分からんな。

 そう想い、「暗殺の極意」に意識を集中させる。

 すると「暗殺の極意」の詳細が表示された。



―――――――――――――――――

暗殺の極意:

 戦闘中に連続して128回の回避に成功すると、

 その敵に対する即死攻撃をする事が出来る。

―――――――――――――――――



 スキル効果を読んでみる限り、かなり微妙なスキルだ。

 ユニークスキルは強力無比だが発動条件が厳しい、というのは前情報で得ていたがこれほどとは。

 「連続して128回の回避」というのはつまり、ノーダメージで128回も回避しないといけないという事だ。

 回避に専念しても128回は辛いだろうし、そもそも回避に専念するよりも普通に攻撃した方が早く倒せるだろう。


「あ~……。これは外れ引いたかな?」


 呟き、後頭部をぽりぽりと掻く。

 まぁ、ユニークスキルよりも他のスキルの方が重要なんだ。

 気を取り直して狩りに出よう。




   ◆◇◆◇◆


 村の外には広大な野原が広がっていた。

 あちらこちらで羊が草を食んでいて、村だけでなく外まで長閑な雰囲気だ。

 そしてその羊に向かって長剣を振るう者、火球を浴びせる者なども、あちらこちらで見かける。

 村付近だと混雑しそうなので、ちょっと奥まで行って小高い丘の上をキャンプ地とする。

 ここを拠点に、辺りの羊をポップした順から狩っていこう。


「さて、と……。お、湧いた湧いた」


 俺の視線の先で、光のキューブが格子状に集まり、それが弾けて羊を形作る。

 綺麗な光景だったが、VRMMO初体験な俺でも見惚れて動きを止める、なんて事はしない。

 現実以上に綺麗な村にも風景にも、感動こそすれ固まりはしなかった俺だ。

 何故か?だっておのぼりさん丸出しで恥ずかしいじゃないか。


「おぉぉぉ!」


 軽く気合の声を上げ、羊に向かって猛ダッシュ。

 現実よりも遥かに軽い身体は力強く大地を蹴り、頬を撫ぜる風が心地よい。

 シーフのクラスによるAGI補正もかかっているだろうが、それ以上にVRだから身体能力が全体的に高いのだろう。

 数秒で羊に肉薄し、そのまま「バックスタブ」と念じながら右手の短剣を突き出す。

 すると右手が淡い紫色の光に包まれ、吸い寄せられるように羊に命中した。


「めぇぇぇ~!!」


 攻撃された羊は怒りの声を上げ、こちらを睨み付ける。頭から煙が出てるあたりコミカルで良い。

 羊の上に浮かんでいた「草原の羊」というネームプレートも赤くなって敵対した事を示している。


「上等だ、かかってこいやぁ!」

「めぇぇぇ~!!」


 羊の突進! 俺はひらりと右へ避け……ようとして左足を羊に掬い上げられた。


「うぉっと!」


 軽い浮遊感。丘の中腹で戦闘中に掬い上げられたのだ。結果としては丘を少し転がる。

 今の攻撃でHPが2割ほど持っていかれた。


「ジンギスカンにしてやる!!」


 俺も怒りの声を上げ、位置関係が逆転してしまった羊へ向け、丘を駆け上がる。

 バックスタブはまだクールタイムが残っているので使えない。

 右手に持った短剣を逆手に持ち直し、羊の正面に立って上下左右無尽に短剣を振り回す。

 技術も何も無い滅多切りだが、それなりに効果はあるようで、羊のHPはガリガリ削られていく。


「めぇぇぇ~!!」


 再び羊の突進が来るが、今度は余裕を持って右へ避ける。

 何処もひっかからずに無事避ける事に成功した俺は、突進した足を止めた羊の背後を取った形となる。

 そしてバックスタブのクールタイムももう終わりだ。


「食らえ!バックスタブ!」


 スキル名を発声する必要は皆無なのだが、気分だけで何となく叫びながら「バックスタブ」を放つ。

 右手が今度は淡い赤色の光に包まれ、羊に吸い込まれる際に辺りにコミカルな星が散った。

 どうやらクリティカルが発生したようで、羊の残りHP軽く上回るダメージが表示され、羊はポリゴンの欠片と散った。


「光の色の違いは、背後判定か否か、かな……?」


恐らく当たっているだろう。バックスタブは確か背後からの攻撃にクリティカル補正がかかる筈。

色で示す必要も無いだろうが、分かり易さ重視なのだろう。


羊のポリゴンの散った跡には、「マトン」「羊毛」というドロップアイテムが残されていた。


「マトンじゃジンギスカンにはならねぇな……」


VRMMO初戦闘を終えた感想はそんなものだった。

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