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 海岸からなだらかに続く長い坂道を登って山の中腹に出ると、そこには小さな集落があり、急な斜面を段々に切り取ったところに石垣で囲った正夫の家がある。

 急坂を登る街並みや、海から山肌を駆け上がる風、グラスの中に差し込む暖かな光などは、南フランスの地中海沿いに見た小さな要塞のような港町に良く似ている。

 この山頂付近にある古いお寺には、正夫の父が眠っている墓があり、正夫は幼い時から母と墓参りをしていた。代々続くこの墓は、梶取一族の分家筋にあたる墓で、正夫はその末裔まつえいであった。

 墓参りの帰り道、母はいつも網元の作蔵の家へ寄った。母はそこで、保険のような金品をいただいていて、正夫は母の用が済むまで末男と庭で遊んでいた。末男は上柳家の三男四女の末っ子で、正夫とは同級であった。そんな関係で、末男は大学を出るとそのまま都会の人となったが、盆や、正月に帰省するときには、きまって正夫の家に遊びに来るのである。


 今年の夏休み前のことである。

 お盆に帰省するので帰ったら釣りに行こうと、末男からメールが入った。

 正夫は釣りに出る時はいつも玄さんの舟を使った。夜釣りにも度々出かけ、海には慣れていた。

 正夫は玄さんの店を訪ねた。

 玄さんはいつものように店の前に立ち、海を見ている。

「オウ、正夫か。エッ今度の土曜日? 予約は一組だな。いいよ、空いているから。一〇二号を使いな」

 玄さんもわが子の様に、人一倍正夫の面倒を見ている。まさか正夫が嵐に遭い遭難するとは、この時、夢にも思っていなかった。


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