ミス・サムライ
「おい、あのTシャツの英字プリント、表記間違ってねぇか?」
「『Cnallenge』………何となくだけど、Challenge(挑戦)って書きたかったのは伝わってくるぞ」
「ほら、あっちにも」
「どこだ?……ああ、あの『Biscover』……そうか、Discover(発見)と書きたかったんだろうな」
「最近目立つよな、英語の表記ミス」
「そうだな。この駅では特によく見るよな」
「外人も多く来るってのに………絶対陰で笑われてるぜ」
「ああ、小学生でもわかるレベルの間違いを堂々と曝してるんだからな……見てるこっちも恥ずかしくなるよ」
「そうそう。 はぁ、もっと言語への知識を持ってほしいものだな。流行だとか、見てくれだとかだけで選ぶから、そんなことになるんだ」
「おっ、今日はえらく辛口だな」
「まあな。俺は流行にヘラヘラ乗っていくやつが大嫌いだからね」
「同感ではあるよ」
「ミスプリントされたTシャツを『かっけぇだろ?』ってドヤ顔で自慢された時ほど気まずいものはない」
「あるのか!?」
「…………あくまでもただの仮定だ」
「おい、汗の量ハンパないぞ。大丈夫か?」
「問題ない。さぁ、俺たちも行こう。もうすぐホームに電車が到着するころだ」
「そうだな…………って、もう来てるみたいだぜ。ほら、人が大勢降りてきてる」
「おっと、急がなくてはな」
「結構多いな。それに外人もいるし」
「さっきのやつらが見られないといいけどな」
「はは、俺も同――」
「おい、待て」
「なんだ、またミスプリントでも見つけたのか?」
「…………俺は前言撤回をしなければいけないようだ」
「何だよ急に」
「あれを見ろ」
「へぇ、若い外国人ね。見たところ一人だけど……どこの国からかな」
「そんなのはどうでもいい。服を見ろ」
「ん? おお、『侍』か? いいねぇ」
「バカ。もっとよく見てみろ」
視界の先。
俺たちの目がとらえたその文字は。
「どうだ?後ろがムズムズしてきそうな字だっただろ」
「…………」
『痔』 だった。
ちょっと短編に走ってみました。
文が読みづらいかもです。