表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/40

ひきこもり×テレビ

「……帯じゃま」

「アナログだからしゃあないやん」

「どうして大阪弁?」

 日本のどこか、大阪かもしれないし北海道かもしれないし、沖縄かもしれないし、津軽かもわがんね。

 とある家のとある部屋には二人のひきこもりがいた。

 一人は男で、名を水澤かなたという。普段、顔を覆うまで伸びた髪は、最近床屋に行ったため今は短くなっている。

 もう一人は女で、名を相原みずきという。漆黒の艶のある髪は滝のように膝下まで伸びており、今は一つに束ねられ長いポニーテールになっている。

 二人は幼なじみという関係で、家も隣通しのため、互いに部屋をよく行き来したりする。今はかなたの部屋に居り、カーテンを閉め切られ、電気も点けておらず、テレビの光だけが二人を不気味に照らしていた。

 14型のブラウン管テレビは、地デジ化推進の為、上下に黒い帯が出ており無理矢理16:9の画面比にされている。その所為でただでさえ小さな画面が更に圧迫されてしまっていた。(この話は2010年秋に書いた)



 テレビではクイズ番組が映っている。

「かけら」

 『欠片』の読み方を出題され、淡々とみずきは答える。実につまらなそうに。

「そういや、昔、コレ“けっぺん”て読んでたな」

 かなたは自らの恥ずかしい間違いを晒す。作者の話ではないんだからねっ!

 テレビでは、その読み方をまるでワザと間違えてると思えるくらいの、おかしな答えをしてタレント達が爆笑している。

「バカブームも中々無くならないよね」

「飽きさせないように、次々と新しいの出てきてるからな、元木とか」

「モ○娘。みたいな感じ?」

「まあ、そうかもな」

「それにしても、バカすぎ。私でも分かる問題なのに。高校出てるのに」

「ボケる役割があるんだろ。キチンと答えるクイズ番組は他にいくらでもあるわけだし」

「ん。でもつまらないね」

「そうだな」


 かなたがチャンネルを変えると、音楽番組が放送していた。

「48人って多すぎるよね」

 テレビでは司会者の横にズラリとアイドルグループが整然と並び、着々と人気が出て、今日初めて音楽番組デビューを果たしたバンドが画面外に押しやられている。

「とにかく人数多ければ、どれかが好みに当てはまって、ファンを獲得できるってことだろ」

「かなたはメンバー分かる?」

「いや。まあ、数人は……だが、前田とか篠田とか、カープかと思ったね」

「興味ないと全く覚えれないものだしね。格ゲーのキャラ名とコマンドなら48人以上覚えれるけど」

「俺も、初代ポ○モンの名前なら今でも言えるんだがな」

「でも、よく人気出るよね。曲だって秋○康が作詞した、ウケるような歌詞並べただけなのに」

「それが世の中の流れなんじゃないのか。以前は秋葉系がファン層だったみたいだが、今は一般にも浸透してるし」

「最近はアニソンもランク上位入ってるけど、一般には受け入れられてないよね」

「まあ、一般に匹敵するくらいオタクの購入者がいるってことだろ」

「AKBはオタク層と一般層両方あるから売れてるってこと?」

「さあな。よく分からん」




 またチャンネルを変えると、お笑い芸人がネタを披露する番組を放送していた。

 流行語大賞にノミネートされるような一発ネタを持つ芸人が、ワンパターンなネタを披露しては流れていく。少し前の流行は短い時間内でネタをする番組であったが、最近一気に減った。

「ツマんない」




 みずきに一蹴され、またチャンネルが変わると、名のある歴史学者が新事実と表して、過去の戦国時代を語っている。

「……落ち武者みたいな髪」

 みずきの呟き通り、歴史学者の頭髪は薄く、肌色の頭皮に髪の毛が散らばっているように見える。

「カツラじゃないだけマシじゃないか。潔いな」

「それって、×××××の話? 掲示板なんかで言われたりして――」

 まるで放送禁止用語を聞いたかのようにかなたは、わざとらしくせき込んで話題を変える。

「伊達政宗か。やっぱり民法だとコレ使われるんだな」

 テレビでは伊達政宗の話題が始まり、番組セットの大型ビジョンには、教科書の肖像画でなく、戦国時代を元にしたアクションゲームの政宗が映る。英語混じりで話す方。

「ウケがいいんじゃないの。ゲストも“自称”歴史好きな女性タレント集まってるし」

「こういう扱われ方されるのも、萎えるな。ゲームの内容無視だし」

「それにしても、こういうの観ると何が正しい歴史だか分かんなくなりそう」

「まあ、興味ないし、過去がどうだろうと別に……な」

「私たちは振り返っても、いい事なかったしね」




 ……少し部屋に沈黙が訪れ、かなたがチャンネルを変えると、ニュースで、人生絶好調な笑顔をカメラに向ける家族連れが映っていた。帰省するとのこと。


 黙ってかなたはテレビを消した。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ