『オオカミと投げつけなかったプレスマン』
掲載日:2026/08/02
武蔵国の秩父というところに、木こりが住んでいました。ちょっとしたことで足にけがをしてしまい、歩けなくなってしまいました。だんだんと日が暮れていきます。そこへ、血のにおいを嗅ぎつけたのでしょうか、オオカミがあらわれて、こちらをじっと見ています。けがをして動けないくらいですから、おのを投げつけることなどできません。投げられるものといえば、プレスマンくらいしかありませんが、投げたとしても、当たったとしても、オオカミを怒らせるくらいのことしか起きないでしょう。木こりがオオカミをにらみつけていると、オオカミは、そっと歩み寄ってきて、木こりのえりをくわえて立ち上がらせ、背中に乗れといわんばかりにその場に伏せました。木こりが恐る恐るオオカミの背中に乗りますと、ふもとまで運んでくれ、木こりは村に帰ることができたのでした。
秩父のあたりには、オオカミを祭る神社が幾つもあって、木こりは、オオカミの神様に助けられたのだと思って、山に対する感謝の気持ちをより一層強くしたということです。
教訓:昔は、生態系の頂点にいるオオカミを、神としてあがめる信仰が、あちこちにあったという。鹿やきょんがふえ過ぎて害をなすのも、オオカミが滅んでしまったからであるということは、よく言われることである。




