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悪役令嬢は玉座を望まない ―溺愛宰相と築く、破綻寸前国家の再建録―  作者: 花菱エマ


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第24話 「公開監査」

 重臣会議の間は、すでに熱を帯びていた。


「現状の混乱は、指導力の欠如に起因する」


 王弟アルベルトの声が響く。


 穏やかな口調。


 だが言葉は鋭い。


「王権の安定を最優先すべきだ」


 賛同のざわめき。


 その時、扉が開いた。


 視線が一斉に向く。


「失礼いたします」


 リゼリアは一礼し、まっすぐ中央へ進む。


「非公式会議と聞いておりますが」


 空気が凍る。


「顧問殿」


 アルベルトが柔らかく微笑む。


「今は国家の将来を話している」


「ですから参りました」


 静かな応酬。


 エドガーは上座に座っている。


 その表情は読めない。


「何の用だ」


 王弟が問う。


「公開監査第二弾の実施を提案します」


 ざわめき。


「今この状況で?」


「今だからです」


 資料を広げる。


「施療院横領に関連する資金移動の全体図」


 重臣たちが身を乗り出す。


「ルヴァン家だけでなく、複数派閥が関与」


 視線が王弟へ向く。


 アルベルトは微動だにしない。


「証拠は?」


「こちらに」


 密書の写し、資金移動記録。


「監査発表前日の私兵招集命令」


 空気が張り詰める。


「偶然とは考えにくい」


 沈黙。


「つまり」


 アルベルトが穏やかに言う。


「私が混乱を煽ったと?」


「断定はしておりません」


 冷静な声。


「ただ、全体を公にするべきだと」


「国家の恥を晒せと」


「隠せば腐敗します」


 視線がぶつかる。


 エドガーがゆっくり立ち上がる。


「第二弾監査を、正式に承認する」


 室内がどよめく。


「殿下!」


 反発の声。


「国家の内部争いを公にするのですか」


「争いがあるなら、だ」


 低く、はっきりと。


「民は既に気づいている」


 沈黙。


 アルベルトが微笑みを崩さないまま口を開く。


「兄上は感情的だ」


「感情ではない」


「では何か」


「責任だ」


 短い応酬。


 リゼリアは静かに続ける。


「退位を急ぐ動きも含め、すべて明らかにします」


 ざわめき。


「それは挑発だ」


「いいえ」


 首を振る。


「鏡です」


 会議場が静まり返る。


「誰が何を選んだのか」


 ゆっくりと言う。


「民の前で示す」


 アルベルトの目がわずかに細まる。


「あなたは大胆だ」


「合理的です」


 沈黙。


 エドガーが決断する。


「三日後、公開監査を行う」


 重臣たちがざわつく。


「異論はあるか」


 完全な賛同はない。


 だが反対も決定的ではない。


 会議は終了する。


 廊下に出ると、カイルが低く言う。


「危険な賭けだ」


「ええ」


「王弟派は黙っていない」


「承知しています」


 視線を前に向ける。


「退位を急ぐ動きは、これで一度止まる」


「止まらなければ?」


「証拠を積み上げる」


 淡々と。


 その夜。


 王弟アルベルトは私室で側近と向き合っていた。


「第二弾監査は痛手です」


「分かっている」


 穏やかな声。


「だが兄上は揺れている」


「今なら押せます」


 アルベルトは窓の外を見る。


「押せば、反発も生まれる」


「では」


「静観だ」


 静かな判断。


「彼女がどこまで踏み込むか」


 名前は出さない。


 だが意識は明確。


 翌日。


 監査室では緊張が走っていた。


「資金の最終流入先が特定できました」


 監査官が報告する。


「王弟派の政治基金」


 沈黙。


 リゼリアは目を閉じ、短く息を吐く。


「確定ですね」


「はい」


 クラリスが低く言う。


「これを公表すれば、王家分裂は決定的」


「隠せば?」


「腐敗は温存」


 選択。


 冷酷か、妥協か。


 リゼリアは静かに答える。


「公表します」


 迷いはない。


「王権よりも、制度を守る」


 その言葉に、クラリスがわずかに目を細める。


「あなたは本当に王にならないのだな」


「なりません」


 きっぱりと。


 その頃、エドガーは一人で書簡を書いていた。


 退位願ではない。


 だが覚悟の文。


 三日後。


 公開監査第二弾。


 王弟派の名が出る。


 退位の波は、さらに大きくなる。


 だが逃げない。


 鏡は、すべてを映す。


 冷酷令嬢は、最後まで目を逸らさない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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