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第8話 人助け

 目の前の女の子は、複数のツノウサギの攻撃に倒れピクリとも動かなくなった。

 今の攻撃で気絶したのかもしれない。よく見ると、ツノウサギは全部で五体いるのが分かった。

 ソロの初心者ならかなり厳しい数だろう。

 

 一体のツノウサギがピョンっと下がって少し距離を取り、力を溜めるような動作を見せる。

 

 ――マズイ、気絶している状態での攻撃は、当たりどころによっては即死もあるぞ。


 俺はここで思考を区切り、魔法を唱える。

 

超速移動イグニッションステップ!」


 俺が魔法を唱えるのと、ツノウサギが女の子に向かって跳ねたのは同時だった。

 

 俺の身体が熱を持つような感覚に包まれる。そのまま足を踏み出すと足先が小さく爆ぜ、刹那の間にツノウサギと女の子の間に肉薄する。

 駆け出したと同時に、俺は既に次の魔法を唱えている。


爆発する拳エクスプロージョンガントレット!」


 溢れんばかりの灼熱のエネルギーが俺の拳に収束し、飛び込んできたツノウサギを、そのまま掬い上げるように全力でアッパーをぶちかます。

 俺の拳に触れた途端、ツノウサギは派手に爆発して天井にぶち当たり、そのまま黒い靄となって消えていく。


「まず1体」


 俺が呟くと同時に、背後から俺に向かって攻撃しようとしている複数のツノウサギの気配を察知する。

 どうやら残りの四体は俺を脅威と認識し、先に排除すべきと考えたようだが、その判断は間違いだ。

 俺は振り向かず、そのまま次の魔法を唱える。


灼熱の脚(スコーチングブーツ)


 激しい熱量が、今度は俺の脚に集まるのを感じる。

 隙だらけな俺の背中に向かって攻撃を仕掛ける四体のツノウサギ。

 攻撃を察知した俺はクルッと振り返り、その勢いのまま、後ろ回し蹴りを放つ。

 その脚は灼熱の炎に包み込まれ、触れたツノウサギたちは一瞬のうちに蒸発する。

 

 そこに残ったのは、綺麗な半円を描く炎の軌跡のみだった。

 


「ふう……なんとか間に合った感じかな?」


 俺は女の子を覗き込み、胸元が上下しているのを確認し、ひとりごちた。



★✫★✫



 俺は目の前に倒れている女の子を観察する。

 プロテクターを付けただけの上下ジャージ姿で、側にはショートソードとラウンドシールドが転がっている。

 どちらもまだ新品と変わらないように見える。典型的な初心者装備だ。

 

 やはり高校生くらいだろうか? ツーサイドアップの髪型と幼さを残した顔立ちだが、ジャージ姿で仰向けに倒れているとある部分は、呼吸をするたびに中々の自己主張を放っている。

 

 さて、助けたはいいが一向に起きる気配がない。

 というのも当たり前で、HPが0になって気絶した場合は、HPが1以上に回復するまで絶対に目が覚めないからだ。

 ステータスの仕様には、HPとMPは三十分毎に10ポイントずつ自然回復することが分かっているので、最低でもあと二十分くらいは目が覚めないだろう。

 

 もちろんHP回復ポーションや回復魔法があれば、その場で起こせる。 

 ついでに言えば、俺が回復魔法を使えることも先ほどのスキル確認で分かっている。

 

 正確に言えば、おそらく回復魔法は使えるはず、という段階だ。スキル詳細画面を読んだ限りでは、間違いなく回復魔法のはずだ。 

 けれど、実際に試してみて思った効果と全然違いました、では洒落にならない。


 

 そして何より、さっきから彼女の上に浮遊している球状の機械がある以上、おかしな行動はできない。


 気絶している女の子の上には、空中にピタッと固定されているかのように、テニスボールサイズの機械が浮いている。

 その機械の真ん中にあるレンズが、じっと俺を見つめている。

 

 ――間違いない、あれはライブ配信機だ。

 ライブ配信機はカメラが付いており、通称LDカメラと呼ばれている。

 その特徴は配信者の後方上空に追従し、常にベストポジションで撮影してくれる優れものだと聞いたことがある。

 

 このライブ配信機を使用し、ダンジョンに入ることを通称|LD【ライブダンジョン】配信と呼び、そこでの出来事をリスナーと呼ばれる視聴者たちと、一喜一憂するのが昨今のブームでもある。

 

 つまり、俺の目の前に倒れている女の子は、LDライバーなのだろう。


 ともあれ、LDカメラが起動しているということは、現在の状況も配信中なのだろう。

 変に目立ちたくはない。かといって、若い女性をこのまま置いて帰るのも論外だ。

 それに、戦う姿もとっくに撮られただろうし、今更か……。

 

 少し悩んだ結果、俺は彼女を背負い、おんぶをする形でダンジョンから出ることにした。


 ――べ、別に他意はないぞ? お姫様抱っこの選択肢も当然あったけど、一応女の子同士なんだから、お姫様抱っこは変だと思って止めただけだから。

 断じて背中に幸せを感じたいからではない。断じてだ!

 誰に言い訳をしているのか分からないが、俺は女の子の柔らかさを感じながら、そのままダンジョンを後にした。

読んでくださりありがとうございます。

面白い! と思った方は、是非評価やブックマーク登録をいただけると、とても励みになります!

※本日もあともう1話投稿予定です。お楽しみください。

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