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第62話 助けを求める声

――箱根ダンジョン 地下30F



 あわわ人形から無事に復活した灯里ちゃんと探索を始めて数分。


 古びた石造りの通路を抜けた先の小部屋で、俺たちは複数の瓦礫――ブロックンJrたちと攻防を繰り広げていた。


 

「あかりちゃん! 右のブロックンJrをお願い! 左は私がやるね」


「うん、まかせて! ――瞬歩」


 俺は左側の個体に向け、手の中の冷たい石の感触を確かめてから強く投げつける。

 空気を切り裂く鋭い風切り音は、ブロックンJrを砕いた。


 一方、元気に返事をした灯里ちゃんは消えたかと思うほどの加速で標的の懐へと肉薄する。



「やあ!」


「ガガッ!?」


 まさに一閃。彼女の敏捷性を活かした斬撃は、銀色の軌跡を描く。

 重厚な石の塊であるブロックンJrをバターのように両断した。


「もう一撃だよ!!」


「――ゴッ!?」


 攻略アプリに記載されているブロックンJrの特性をしっかり読み込んでいるようで、瀕死状態の奴に返す刀で追撃をして完全に仕留める。


 灯里ちゃんによってブロックンJrは黒い靄へと変わっていった。



「やった!」


 勝利の余韻に肩を揺らした彼女の頭上から、別の個体が影を落とす。


「――油断しない!」


「ゴガゴッ!?」

「ゴゴガッ!!」


 俺は即座に腕を振るい、気を抜いた灯里ちゃんの頭上から降ってきた複数のブロックンJrを投石で弾きとばした。


 そのまま空中に大きく弾かれたブロックンJrたちをターゲットに定める。



「それそれそれそれ!」


 連続で腕を回すように放たれた追加の投石は、まるでマシンガンのように激しい石礫の嵐となり、ブロックンJrたちに降り注ぐ。


「「――ゴゴガゴガッ!?」」


 容赦のない砲弾の雨を受け、穴だらけになったブロックンJrたちは地に落ちることなく、空中で霧散していった。



 そんな様子を見ていた灯里ちゃんは後頭部を掻きながらこちらへ寄ってくる。


「あ、あはは……ティ、ティアちゃんを信じてたからだよ……?」


 そんな彼女の手には新調された刀が握られており、カチリと、綺麗な動作で鞘にしまい込んだ。

 灯里ちゃんは探索用の服と同時にショートソードも卒業して、敏捷性を活かした武器にチェンジしていた。



「たとえそうでも、戦闘終了を確認するまで気を抜いちゃダメだよ?」


「はい。ごめんなさい……」


 素直に頭を下げる灯里ちゃんに微笑ましいものを感じた俺は、つい手を伸ばしてしまう。


「よしよし」


「へ……ティ、ティアちゃん?」



 しゅんとする姿が妹と重なってしまった俺は、気づけばその柔らかな髪を撫でてしまっていた。

 灯里ちゃんが目を丸くしながらこちらを見てくる。


「――あ! ご……ごめんね!? 妹と重なっちゃって、つい撫でちゃった!」


「ううん。全然嫌じゃなかったけど、それよりティアちゃんって妹さんがいたんだね。いいな〜! 絶対可愛いんだろうな〜!」


 一人っ子の灯里ちゃんは妹が羨ましいのか、撫でられたことよりも、俺の妹に想像を馳せながら目を輝かせている。


 当然ティアに妹などいないのだが、「ティアちゃんの妹!!」「何歳ですか!?」など、コメントで溢れかえる中で訂正などできる訳もなく……



「あはは……。うん、とっても可愛いんだよー」


 やむを得ず、頬をかきながら曖昧な表情で肯定した。



「ほ、ほらほら、気を抜かずに行くよ〜!」


 万が一にも紹介してほしいなんて言われたら堪らない。

 これ以上雑談を長引かせたくない俺は、強引に先へ進むように歩き出した。



★✫★✫



「これで終わりだよ!」


 灯里ちゃんの斬撃が奔り、最後のモンスターが霧散する。



「ふぅ。ティアちゃんの援護のおかげで凄く戦いやすいよ! ……ちょっとこっちに当たりそうで怖い時もあるけど」


「ありがとね。でも石もなくなっちゃったし、そろそろ補充を――ん?」


 石の補充をするために腰を落とした時だった。

 それは31層へ向かう途中にある大広間から聞こえてきた。



「おいどうなってんだよ! こんなモンスター攻略アプリに書いてなかったぞ!」

「くそ、ギルドの奴ら……適当な仕事しやがって!」

「これ掲示板に書かれてたイレギュラーじゃないか!?」

「それより大葉くんは!?」



 通路の先から響いてくるのは、金属が激しくぶつかり合う音と、探索者たちの叫び声。

 何やらこの通路の先で尋常ではないことが起きていそうだ。


 どうするべきか、灯里ちゃんの方を見やると――そこに彼女の姿はなく、すでに大広間に向かって駆け出していた。


 どの道助けに行くつもりではあったが、一切の迷いがない灯里ちゃんの行動に少し唖然とした俺は遅れて走り出した。



「――あかりちゃん! まずは確認だよ!」 


「うん! 分かってる!」



 すぐに追いついた俺は、灯里ちゃんの横に立って並走する。

 通路の切れ目から大広間の景色が入り込んできた。


「ファイアジャベリン! ――っ、ダメ! 効いてないわ!!」

「くるぞ!! インパクトスタンプ!」

「くそ、こっちからも来てるぞ! ダブルスタ――あぐぁっ!?」

「大丈夫か!? ヒール!!」


 俺たちの目の前に広がっていたのは、四人の探索者が二体のサソリ型モンスターと対峙している姿だった。


 懸命に攻撃しているが、その全ての攻撃は音で分かるほど硬い外殻に阻まれている。


 だが、そんなことよりそのモンスターに見覚えがある俺は思わず驚愕の顔を浮かべた。



「あ、あいつは!」


「デザートスコルピ……? こんなモンスターはアプリに載ってなかったよね……それにレベルが46って、どうしてこんなところに」


 LDカメラに追加された鑑定機能が目の前のサソリの情報を表示させる。

 そのレベルは46。この30層の平均レベルは35程度だ。



 60層まで進んでいる俺は奴を知っている。この階層にいていいはずがない。

 なぜなら奴は――Bランク帯である、40層の砂漠ステージから出現するモンスターだからだ。



「――!? おい! そこの二人! 助けてくれ!!」

「救援!? お願い助けて!!」


 通路から見ていた俺たちに気づいた彼らは、こちらが声を掛けるよりも先に、救援を求めるように手を伸ばしてきた。



 その声に応えるように灯里ちゃんがこちらを見てくる。

 その瞳からは、断固とした意志をひしひしと感じる。



「……あかりちゃん。相手は46レベルの格上だよ? それを分かってる?」


「うん。それでも、見てるだけは嫌だから」


 その瞳からは、先ほど駆け出した時と同様に一切の迷いがない。



「分かった。私もどの道助けるつもりだったからね」


「ティアちゃん!」


 俺の答えも最初から決まっていた。

 お互いに頷き合い、正面の大広間を見据える。


 考えてみれば、40層から先は全て魔法少女コスに戻して戦っていたっけ。

 ――いや正確には40層のアリジゴク――トラップアンターは今の衣装で倒していたか。


(それに、相手のレベルもカラミティウルフに比べれば大したことはない)


 だったら今の衣装でも十分に通用するはずだ。



「いい? あかりちゃんの武器は速さだよ。あの4人と合流したら、遊撃に回ってあげて。かく乱だけでもいいから」


「うん! ――でも、ティアちゃんは?」


 急造パーティーでも、遊撃くらいなら邪魔になりにくいはずだ。

 俺の指示に頷いた灯里ちゃんは、今度はこちらを心配そうな表情で見つめてくる。



「私は一人でもう一体を受け持つよ。大丈夫、あんなサソリに負けないから」


 安心させるように慣れないウィンクで返事を返して、話を打ち切る。



「今から救援に向かいます! 私が一体を受け持つので、皆さんは残り一体に集中してください! ――いくよ、あかりちゃん!!」


「うん!!」


 言うが早いか、救援に向かうために俺たちは駆け出した。

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