表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/68

第56話 魔法少女といえば……白い雪?

――箱根ダンジョン 地下55F


 昨日は結局、美味しいものを食べれば元気が出るよ!

 という碧依の鶴の一声によって、昼食会が始まった。


 料理上手な自慢の妹と、実家がカフェで手慣れている灯里ちゃん。

 そんな最強コンビから繰り出される手料理は、文字通り幸せの味で満ちていた。



 そうして楽しい昼食会後にお開きとなり、その翌日、またしても碧依の登校中に箱根ダンジョンで探索を進めている。



「しかし、よくよく考えたらもうずっと一人なんだし……あのスキルを使ってみるべきか?」


 周囲に鋭く目を光らせながらも、思考の半分は別のことに割いていた。


 実を言うと、ずっと忘れていたスキルがある。

 忘れていた――と言うよりは、人目がある場所では使えなかったと言うべきだろうか。



「鬼が出るか、蛇が出るか……まあ、出るのはアレだと思うけど、問題は大きさだな」


 この55層なら、確実に他の探索者はいない。

 先ほどから入念に索敵しているが、モンスターの気配がちらほらあるだけで、やはり探索者の姿はない。

 ならば絶好のタイミングだろうと、ずっと温めていたスキルを使用することに決めた。


「ふぅ……」


 足を止め、深く深呼吸をして意識を集中させる。

 一拍置いてゆっくりと目を開いた俺は、正面に右手をかざし、そのスキルワードを紡いだ。



「いくぞ! マスコット召喚(サモン・ドラゴン)!!」



 ――その瞬間、向けた掌の先からカラフルで複雑な魔法陣が展開された。


 大気を震わすような重厚な振動のあとに、その魔法陣からニョキッと、白い塊が飛び出てくる。


 

「キューイ!」


 現れたのは、全長三十センチほどの小さな龍だった。

 想像していたような巨体ではなかったことに心底安堵しながら、俺は改めて目の前の存在を見つめる。

 

 その姿は細長い竜タイプではなく、四足歩行タイプの龍というのが適当だろうか。

 柔らかそうな毛並みはただただ真っ白で、ふわふわ浮いている姿からは雪を想像させる。




「さ……触ってもいいか?」


「キュイ」


 言葉が通じているのか、パタパタと小さな翼を動かして俺の側までやってくると、愛らしく頭を下げてきた。


 恐る恐る指を伸ばして触ってみると、鱗のようなものは見当たらず、とてもふわふわしている。


「キュイ〜」


 撫でている手が心地いいのか、猫のように目を細めて喉を鳴らしている。


「か、可愛いな……おまえ」


「キュイ?」


 これがもし全長ウンメートルもあったらどうしようかと思っていたが、マスコットというスキル名に偽り無しだ。


「しかし、こうなると名前が欲しいよな……」


 呼び出した以上、やはり名前が必要だろう。

 腕を組んで考えるが、こんなダンジョンのど真ん中で悠長に考えるわけにもいかない。



「……とりあえずキューちゃんでいいか? あとでちゃんと考えるから」

 

「キュイキュイ!」


 ひとまずは便宜上として、分かりやすい名前を付けることにした。

 鳴き声から取ったそんな安直な名前にも、当の本人は嬉しそうに声を上げて俺の頬に擦り寄ってきた。


「あはは! くすぐったいってば」



 こんなに可愛いならもっと早く使えばよかった。

 そんな後悔を抱きつつ、俺は周囲をパタパタと旋回するキューちゃんを連れて探索を再開した。



★✫★✫



――箱根ダンジョン 地下58F



 順調に階層を下げていた俺たちの前方に、紫色の巨大な蛇が出現した。


 LDカメラが【ウィスプサーペント】と識別したその個体は、まだこちらに気づいていない。



「敵影あり! キューちゃん、やっちゃって!」


 前方のヘビを指差しながら、俺の頭の上に乗っている龍――キューちゃんに指示を出す。

 小さな口をカパッと開くと、その奥にシュンシュンと光の粒子が収束していく。


「キューイ!!」


 愛らしい鳴き声が響くと同時に、バスケットボールほどの白光の弾丸が放たれる。

 背後からぐんぐんと迫りくる白弾に気づかないそのヘビは、無防備な背中にその一撃を受けた。


「――ギ!?」


 バシンッ! と激しい衝撃に身を悶えさせながらも、相手はまだ健在だ。

 振り返ったヘビは怒りに満ちた表情でこちらを睨みつけてくる。


「ん〜、やっぱり一撃は無理か……」


 それでも決して無視できないダメージなのは明らかだ。ウィスプサーペントはフラつきながらも、ウネウネと複雑な軌道で地を這い、肉薄してくる。



「ギシャア!!」


 射程に入るなり、牙を剥いて俺の喉元へと跳びかかってきた。


「キューイ!」


 その牙が俺の白い肌へ届く直前、もう一度キューちゃんが鳴くと、今度は俺を囲うように光の障壁が張られた。


「ギシャ!?」


 ――キンッ! と高い音が響くと同時に、光の壁に触れたウィスプサーペントは弾かれるように吹き飛んだ。


 それでもすぐに体勢を立て直し、今度は長い身体を使って障壁ごと潰すように巻き付いてくる。



「――ギ?」


 だがそれでも、俺を包む光はびくともしない。

 締め付け攻撃に自信があったのか、呆気にとられたような声を出すウィスプサーペントを見上げながら、トドメの指示を出した。


「終わりだ! キューちゃん!」


「キュイ!」


 障壁に巻き付いたままの無防備なヘビに向かって、至近距離から光弾が放たれる。

 この障壁は外からの攻撃は通さないが、内からの攻撃は素通りさせる優れものだ。



「――ギシャアアアアア!?」


 その一撃を受け、断末魔を上げたウィスプサーペントは黒い靄へと霧散していった。



「よしよし、えらいぞキューちゃん」


「キュイキュイ〜」


 戦闘終了のご褒美に、頭の上に乗ったままのキューちゃんを撫で回す。



 こんな調子で、55層からここまで連戦して分かったことは二つだ。

 キューちゃんは攻撃より防御が得意ということと、とても可愛いということだ。


 一撃で倒せるモンスターもいれば、先ほどのように二撃以上かかることもままあった。


 その反面、光の障壁――防御結界とでも呼ぶべきか。

 その結界の防御力は、ここまでのどんなモンスターの攻撃にもびくともせず、まさに鉄壁と表現するのにふさわしいだろう。



「あ、階段みっけ」


 キューちゃんの戦闘スタイルを分析しながら進んでいると、下へ続く階段を発見した。



「次は59層か……」


 次の階層で終わりか、それともSランク帯の60層まで続いているのだろうか。


「ここまで来たらとことん付き合ってやるさ! な、キューちゃん」


「キュイキュイ!」


 この相棒と一緒ならどこまででも潜れるだろう。

 決意新たに、俺はキューちゃんを頭に乗せたまま、迷わず階段を下りていった。

いつも読んでくださりありがとうございます!

魔法少女には欠かせないマスコットがついに登場しました!


もし「キューちゃん可愛い!」「続きが気になる!」と思っていただけたなら

ブックマーク登録や、

下の評価欄を☆☆☆☆☆から**★★★★★**にして応援いただけると、執筆の大きな励みになります!

(すでに応援してくださっている皆様、本当にありがとうございます!)


さらに上のランキングを目指して頑張りますので、なにとぞ応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
魔法少女にはやはり相棒が必要ですよね。 更新お疲れ様です。応援してます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ