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第54話 LDカメラの新機能とは

「それじゃお兄ちゃん、行ってくるね!」


「ああ、行ってらっしゃい。車に気を付けてな」



 入学式から一夜明けた、木曜日の朝。

 今日から碧依の高校生活が本格的にスタートした。

 

 とはいえ、今週いっぱいはオリエンテーションや身体測定といった、学校生活に慣れるための午前授業がメインであり、本格的な授業は来週から始まるらしい。


「碧依が帰ってくるまで、ざっと4時間はあるな……よし、潜るか!」


 それだけ時間があれば、ある程度探索ができるだろう。

 何より、昨日アップデートされたLDカメラの新機能が気になって仕方がない。

 俺は逸る気持ちを抑えつつ、足早に箱根ギルドへと向かった。



「ん? なんだあれ」


 ティアの姿で箱根ギルドに到着した俺は、迷わず入場ゲートへ向かおうとして足を止める。


 ゲートの傍らに、以前はなかった巨大な掲示板が設置されていたからだ。

 遠目からでもデカデカと何かが書かれているのが分かる。



「なになに…………ああ、あの時の件か」


 掲示板を埋め尽くしていたのは、昨今頻発しているダンジョン内でのイレギュラーに対するギルドからの厳しい注意喚起だった。


 すでに首都ダンジョンや箱根を含む各一般ダンジョンでも異常事態が確認されているため、警戒されたしとの通達だ。

 読み進める限り、箱根に関してはあのカラミティウルフの一件以降、新たな実害は報告されていないようだ。


 他にも、世界各国で実力に見合わない階層で探索者の遺体が発見される事例が相次ぎ、ついに日本でも同様の報告が上がったと記されている。


 不可解なのは、亡くなった探索者たちの最後だろう。

 パーティメンバーの証言によれば、目を離した一瞬の隙に姿を消し、LDカメラの映像にも、まるで最初から存在しなかったかのようにふっと消える瞬間が映っていたという。



「……まるで神隠しみたいだな」


 大きな事件から小さな事件まで、どれがどれだけイレギュラーと関係あるのだろうか。


 日本を含む世界各国の政府機関が協力し、原因究明に全力を挙げている。

 掲示板の内容は、そんな切実な結びで締めくくられていた。



「……本当に色々と起こっているんだな」


 結局のところ、今自分にできるのは探索するくらいだろう。

 そう独りごちた俺は、こういうのは偉い人に任せようと結論づけ、入場ゲートを抜けてダンジョンに入っていった。



――箱根ダンジョン 地下51F


 

「よし、早速LDカメラの新機能をチェックしたいけど……まずはモンスターを見つけないとな」



 昨日届いたアップデート通知の効果が本当かどうか調べるためには、モンスターの協力が必要になる。



 夜のとばりが下りた51層の森を、生活魔法のライトに照らされた俺が歩いていると、闇の隙間からキラキラと輝く粉のような燐光が、まるで雪のように頭上から舞い降りてきた。


「ん?」


 その幻想的な輝きに何か嫌なものを感じ取った俺は、反射的にバックステップを踏んでその場から離れる。


 ――ドォォンッ!!

 一瞬遅れて、つい先ほどまで俺のいた場所で激しい爆発が炸裂した。



「うお!?」


 静寂を切り裂く轟音に思わずビクッと肩を跳ねさせたが、即座に戦闘態勢へと意識を切り替えた俺は空を見上げた。



「……あいつか!」


 見上げた空には、樹冠の隙間をパタパタと優雅に舞う一羽の蝶の姿があった。


 その影を眼前に捉えた途端、視界ウィンドウが重なるように表示される。



 名称 :ボンブバタフライ

 レベル:53



 俺はいま、鑑定スキルである見透かす瞳(エンジェルアイ)を使用していない。


 これこそが、LDカメラに追加された新機能――文字通り鑑定機能である。


「これは便利だな……奴の名前からして、飛ばしてる粉は爆発する鱗粉ってところか?」


 とはいえ、精度の確認も必要だろう。

 目の前の情報が間違っている可能性も考慮し、一応自前のスキルでも確認してみることにする。


 心の中で見透かす瞳(エンジェルアイ)を使用して上空の蝶を鑑定すると、新たにウィンドウが表示された。



 名称 :ボンブバタフライ

 レベル:53

 ◆ドロップ品

 ・ボンブバタフライの魔石

 ・ボンブバタフライの爆粉

 ・ボンブバタフライの火翅【レアドロップ】


「名前とレベルは一緒だな。違うのはドロップ品の有無くらいか……」



 この機能は、買取カウンターで使用している読み取り機をベースに開発されたとのことだ。


 実装がもう少し早ければ、カラミティウルフの件も証明できただろう。

 ……その場合はもれなく俺の強さまで証明されてしまうので、間に合わなくても良かったかもしれないが。



「――あ」


 などと、敵を目の前に余計な考え事をしすぎたようだ。

 気づけば目の前まで新たな爆発の鱗粉が迫っている。

 

「――まずっ! ……いやまてよ?」


 回避行動を――取ろうとしたところで、俺はあえてその場に踏みとどまった。


 (す、少し怖いけど、これも実験だ!)


 ――ドォォォンッ!!

 その瞬間、俺の視界が真っ白に染まる。

 激しい音と、お腹の奥を揺さぶるような衝撃が身体中を容赦なく駆け巡った。


「――くっ!?」


 やがて夜の森を照らした爆裂の閃光が収まり、爆煙が晴れていく。



「――ケホッ! ケホッ! ……い、痛く……ないな?」


 再び静寂を取り戻した森から出てきたのは……無傷な俺だった。


 身体をあちこち触り、異常がないか確認したあと安堵するようにホッと一息ついた。



 前回の50層の戦いでは思わず躱しまくっていたが、やはり予想通りだ。


 ステータス制限のない魔法少女コスは、Aランクモンスター程度の攻撃では、ダメージすらまともに入らないようだ。

 驚くべきことに、衣装にすらすす一つ付いていなかった。



「ふぅ、もう十分だな……落ちろ! 竜の衝撃波(ドラゴニックロア)!!」


 脳内に表示させたステータスのHPがほとんど減っていないことを確認した俺は、上空を飛んでいる蝶に広範囲衝撃波を放って叩き落とした。



「無傷で済んでよかったけど…………めちゃくちゃ怖かったし、やっぱり次からも普通に避けよう」


 無傷と分かっていても、やはり攻撃を受けるのは本能的に怖いと感じてしまう。

 先ほどからバクバクと煩いくらい鼓動している心臓に手をやり、これからも出来るだけ躱していこうと心に決めることにした。



 こうして心臓に悪すぎる検証を終えた俺は、ボンブバタフライの落とした魔石を回収して、碧依が帰ってくる午後まで探索を進めたのだった。

いつも読んでくださりありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
最新機能便利ですね。名前とレベルがわかるだけでもえらい機能です。 ステータスが高くても慣れてないと暴力は怖いですよね。 更新お疲れ様です。応援してます。
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