第38話 30層の死闘……?
「せいやっ!!」
「――ギィ!?」
俺の跳び蹴りで森の木――もとい、木の形をしたモンスター"アーマートレント"に大穴が開く。
現在は箱根ダンジョン地下29層にいる。
25層で遭遇したカラミティウルフ……
奴のようなイレギュラーが他にもいる可能性を考えて行動しているのだが、今のところは問題はない。
「ここまでは異常なし……か」
やはり25層だけがおかしかったのだろうか。
26層からは、出会うモンスター全てを見透かす瞳で鑑定してから仕留めてきたけど、おかしなモンスターはいなかった。
どのモンスターも精々レベル26〜30程度で、至って普通だった。
俺はアーマートレントの落とした魔石をアイテムボックスに入れながら、30層へ続く階段を探して走り出す。
「あった、階段だ」
イレギュラーはあったが、当初の目的だった30層には辿り着けた。
軽く探索して、何もなければ予定通り今日は帰ることにしよう。
俺は頭の中で方針を再確認してから、階段を下りる。
――箱根ダンジョン 地下 30F
「これは……遺跡か?」
階段を下りた先に待っていた景色は、高い天井と石造りの壁に、同じ材質の柱。
少し埃っぽく、どこか乾いた石の匂いようなものが混じった、何とも言えない香りが鼻腔をくすぐる。
前方はそのまま石畳の通路が左右に分かれているようだ。
周りを見渡せば天井の一部から崩れたであろう瓦礫が散乱していて、その空いた穴から照らされた太陽の光が、空気中の埃を乱反射している。
「神秘的な場所だな……」
俺は柱に近づき少し強めに叩くと、静寂な空間にコーン……という音が反響する。
柱は所々ヒビが入ってるが、壊れる様子はなさそうだ。
「ふむ」
次に崩れた天井を見やり、スキルを発動する。
「浮遊する身体」
浮遊魔法によって浮き上がった俺の体は、高い位置にある崩れた天井までぐんぐんと近づく。
空いた穴から差し込む太陽光に目を細ませながら、外に出るためにそのまま上昇を続ける。
「――あいた!?」
頭を天井から出そうとしたところで、謎の膜のようなものが引っかかって邪魔をする。
……別に痛くはないのだが、つい声が出てしまった。
「何となく分かってはいたけど、この遺跡から外に出て攻略……なんてことはできないらしいな」
俺は大人しく地上に下り、前方に分かれている左右の通路の前に立つ。
さて、問題は右か左か、どちらに進むかだが……
「ふふふ、こういう時の選択肢は決まってあるぞ」
俺は迷わず右側の通路を選んでそのまま進む。
なんでも人は迷ったり、未知の道を選ぶ時には、無意識に左を選択するケースが多いらしい。
それを逆手に取って敢えて右側を選ぶ。
と、昔読んでた漫画でクールなキャラが説明していたので俺もそれに倣う。
……でもあの漫画まだ終わってないんだよな。
因みに、何故飛ばずに歩いているのかと問われれば、現在のトラッド衣装ではステータスが制限されているので、MP切れのリスクがあるからだ。
あのスキルは便利なのだが、跳んでいる間はずっとMPを消費するから燃費が悪いのが玉に瑕だ。
「しかし、本当に静かだな……? もっと人がいてもいいと思うんだけど」
歩けど歩けど、人の気配は感じらない。
耳に入る音といえば、俺の足音と、どこからか水滴が落ちるような音だけが響いている。
現在の30層はまだまだCランク探索者の範囲だ。
てっきりもっと探索者で溢れていると思っていたが、スマホの攻略マップは未だ21層で止まっている。
もしかしたら俺が思っている以上に、ここまで来る探索者は少ないのかもしれない。
「……ん?」
通路途中に散らばっているブロック状の瓦礫を通り過ぎた時に、カラ……っと瓦礫から音がしたような気がしたので一度止まり、そちらを見やる。
しばらく見つめるが何もない。どうやら気のせいだったようだ。
軽く小首を傾げながら再び歩き出すと、ふと影が差したかのように暗くなる。
なんだろうと視線を頭上に向けると……
――猛烈な勢いで瓦礫が眼前まで迫ってきていた。
「うおおお!?」
俺は反射的に前方へ飛び込む形で、降ってきた瓦礫を紙一重で躱す。
背後ではガラガラガラ! と物凄い音と衝撃が伝わってくる。
「ななな、何だ!?」
俺はすぐに起き上がって背後を振り向くと、ブロック状の瓦礫が散らばっている。
天井が崩落したのかと思い天井を見やるが、不思議なことに穴は一つも空いていない。
ではこの瓦礫はどこからきたのかと、首をキョロキョロと左右に振れば、先ほど通り過ぎた通路の瓦礫がなくなっていることに気づく。
「あれ? さっきまであの場所にあった瓦礫は……?」
…………若干のジト目と共に、心の中で見透かす瞳を使用してブロック状の瓦礫に鑑定を掛ける。
その結果は……
名称 :ブロックンJr
レベル:32
◆ドロップ品
・ブロックンJrの魔石
・ブロックンJrの岩石
・ブロックンJrの輝石【レアドロップ】
「――って、お前がモンスターかい!!」
「ガギガッ!?」
驚かされた怒りを拳に乗せて瓦礫へと振り下ろすと、まるで瓦割りのようにブロックンJrを真っ二つにした。
「ガギ!!」
「ガガギゴ!」
「ガギグゲゴー!」
それを皮切りに、周りの瓦礫が一斉に動き出し、俺に向かって四方八方から跳んでくる。
――いや散らばってる瓦礫全部モンスターだったんかい!!
俺は向かってくる全ての瓦礫を、時にアッパーで破壊し、時に上段回し蹴りで破壊し、時に頭突きで壊し回る。
「はぁ……はぁ……打ち止めか?」
結局十数体倒したところで全滅したようで、俺の周りには大量のブロックンJrの残骸が散らばっている。
全ての瓦礫が動かなくなり、安堵したのも束の間。
静寂が戻ったばかりの空間に地響きが鳴り響く。
「こ、今度はなんだ!?」
倒したはずのブロックンJrたちの残骸が浮かびあがり、一箇所に集まりだしたかと思えば、見る見る内に通路を埋め尽くす程の一つの巨大なブロックへと変わる。
俺は急いで見透かす瞳を使用し目の前の巨大なブロックに鑑定をかける。
名称 :真・ブロックンJr
レベル:37
◆ドロップ品
・真・ブロックンJrの魔石
・真・ブロックンJrの石板
・真・ブロックンJrの輝石【レアドロップ】
「なるほど、こういうパターンもあるのか……」
……思えば、ブロックンJrを倒したと思っていたけど、靄になっていなかった事を思い出す。
恐らく倒しきれなかったのがトリガーとなり、合体したのだろう。
そう結論づけたところで、真・ブロックンJrは飛び跳ねる。
「ガガンゴ!!」
高い天井をスレスレまで飛び上がり、見るからに重そうな自重を活かした攻撃を仕掛けてくる。
「そんなに高く跳んだら、どうぞ躱してくださいって言ってるようなものだぞ――ってあれ!?」
横に躱そうと思ったが、通路一杯に広がる攻撃で逃げ場がないことに気づく。
戸惑う俺を待つわけもなく、巨大なブロックは容赦なく落下してくる。
「ダメだ!! やられる!!」
ダメージを覚悟した俺は、両手を頭の上でクロスさせて全力で防御の構えを取る。
みるみる迫ってくる巨大な岩の塊に、どれだけ耐えれるだろうか、もしかしたらこれで死んでしまうのだろうか……
そんなこと考えている間に、ついに構えた両腕に衝撃が走り出す。
――ズガンッ!! と、あまりの衝撃音の大きさに俺は思わず目を閉じてしまう。
「う!? ――うん?」
衝撃が来たには来たが、思ったより弱い……というかほぼ無いことに驚いた俺は目を開ける。
だがそこに巨大なブロックはすでに無く、代わりに黒い靄が立ち昇っている。
「え、あ……あれ? 奴はどこにいったんだ? ていうか、まるで倒した時みたいな靄が立ってるけど……」
俺は靄の中心に魔石が落ちているのに気づき、それを殆ど反射的に見透かす瞳で鑑定をかけると、驚きの結果が表示される。
名称 :真・ブロックンJrの魔石(レベル:37)
「――なんでやねーん!!」
……静寂な空間に俺のツッコミが大きく木霊した。
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