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第35話 VSカラミティウルフ

 俺は眼前に表示された情報に目を疑う。


 名称 :カラミティウルフ

 レベル:102

 ◆ドロップ品

 ・カラミティウルフの魔石

 ・カラミティウルフの鋭爪

 ・カラミティウルフの影毛レアドロップ



 (――レ、レベル102だって!?)


 これまで倒してきた20層近辺のモンスターのレベルは、高くても30レベル前後だ。

 それを優に超えるモンスターなんてこの階層にいていいはずがない。

 間違いなくSランクモンスター……いや、もしかするとそれより上かもしない。


 俺が表示された結果に唖然としていると、挑発効果によって敵意を剥き出しにしたカラミティウルフが、静寂を引き裂くような大きな遠吠えを一つ上げる。


 ――それが開戦の狼煙となった。



「っ! さっきより速い!?」


 奴にとって先程までの戦闘は、恐らく遊びだったのだろう。

 右へ左へ、すれ違いざまにカラミティウルフの鋭利な爪が、容赦なく俺を仕留めるために振るわれる。

 躱す度に銀線が空を切り、激しい風切り音が耳に残る。


 俺は右からの強襲を身体を半身に捻る事でギリギリ逃すが、体勢を立て直すよりも速く今度は左から黒い影が躍り出る。


「くっ!?」


 体勢を崩しながらも、その勢いを利用した回し蹴りをカラミティウルフの飛び込みに合わせて横に振るう。

 だがカラミティウルフは俺の回し蹴りを跳躍することで容易く躱し、その勢いのまま俺の喉元に向かって大口を開き、鋭い牙を露わにさせながら飛び込んでくる。


「まだだっ!!」


 俺はすんでのところでもう一度身体を回転させ、残った脚を強引に振るう事でカラミティウルフを横腹を蹴り飛ばすが、その反動で地面に倒れる。


 弾き飛ばされたカラミティウルフは空中でクルッと回転し、着地と同時に隙だらけの俺に向かって飛びかかり鋭い爪を突き立ててくる。

 俺は横に転がる形で躱してすぐに立ち上がる。

 そのまま顔を上げた時には、すでに眼前に鋭い爪が迫って来ていた。


「――むぐっ!」


 上半身を限界まで後ろに反らし、鼻先をかすめる爪を紙一重で躱すと、そのまま背後へ倒れ込むようにバク転を繰り出し、命からがら距離を取る。


 だが、この攻防の中で奴の爪は少しづつ俺の体に届き始める。



「お、おい大丈夫か! くそっ! 俺も加勢するぞ!」


「ダメ! こないで!! それより早くそっちの男の人を起こしてあげて!!」

 

 劣勢になり始めたからか、男性が助太刀しようと俺の横に並び立ち剣を構えるが、俺は声を荒げるように返す。

 男性がこのモンスターに対応できないのは先の戦闘で明らかだ。



 ……だが今のやり取りの、意識を割いたその一瞬の隙を突くようにカラミティウルフは動き出し、弾丸のように俺の喉元に剥き出しの鋭い牙を向けて跳んでくる。


「――しまっ!? あぐぁあああ!!」


 俺はそれを咄嗟に片腕を滑り込ませる形で止めることができたが、今までにない衝撃と激痛が走る。

 その衝撃で被っていたキャップが勢いよく弾け跳び、纏めていた髪もバサッと広がる。


 カラミティウルフが噛みついている俺の腕からは、おびただしい程の血が噴き出でている。


「ぐっ、この!!」

 

 凄まじい衝撃に何とか踏みとどまった俺は、腕に噛みついたままのカラミティウルフを振り払おうと残った腕で拳を振るうが、ヌルリと俺の腕から牙を抜き取り、空中を蹴りながら離れていく。


 (――こいつ! こんな芸当までできるのか!?)



 焼けるような熱さと、骨を砕くような激痛が交互に押し寄せ、噛まれた腕はすでに自分の身体ではないようにだらりと垂れ下がっていた。


 そんな俺の様子を見て、カラミティウルフは勝利を確信したかのように、ニタァっと凶悪な笑みを浮かべた。



 ……だが、時間は稼げた。



 俺の後ろでは倒されていた祐介という探索者が目を覚ましたところだった。


「祐介! 大丈夫か!?」

「あ、ああ。けど、一体なにがどうなって……?」

「祐介ぇ! ああ、良かった!!」

「絵美ちゃん! 安心してる場合じゃないよ! あの子が血だらけだよ!!」


 俺は眼前のカラミティウルフを見据えたまま、全員に聞こえるように大声で話す。

 

「皆さん! 祐介さんが起きたなら早くこの場から離れてください!!」


「な、何言ってんだ! 祐介が起きたんだ、俺たち全員でかかれば逃げる隙くらいは――」


「邪魔だと言ってるんです!! いいから早く逃げてください! 私一人なら集中して戦えるんです!」


 言葉が強くなってしまったが、どうか悪く思わないでくれ。

 俺の低下したHPは今の攻防で3割以上も削れてしまったんだ。こっちも余裕がない。


「くそっ! くそっ!! すまねぇ……みんな行くぞ!」

「そんな、あの子を見捨てるの!? 私たちの代わりに戦ってくれてるのに!?」

「俺達じゃ足手まといなんだよ!! いいから行くぞ!」


 残ると言い張った女性の腕を引っ張る形で、男女四人組はそのまま戻りの階段がある方に走り出した。


 カラミティウルフは挑発の効果により逃げる獲物には目もくれず、俺への笑みを絶やさないでいる。



 こうしてこの場には、俺とカラミティウルフのみが残された。

 他の誰の気配も感じない。


 ……そう、他の誰も居ない。



「残念だったな。お前は勝ったつもりなんだろうけど、この状況に持ち込んだ時点で俺の勝ちだ――衣装選択(ドレスチェンジ)!」


 スキルワードと共に、夜の森を飲み込むほどの眩い光が立ち上り、俺を包みこんでゆく。

 ボロボロだったメンズライクなファッションは粒子となって弾けるように消えていき、代わりに黄色のラインが入った白のブラウス、紫のフリル付きミニスカート、肘まで覆う紫色のラインが引かれた白いグローブ。

 最後にグローブと同じデザインのニーハイソックスと、いつもの魔法少女コスチュームが顕現する。


 その瞬間、封じられていた溢れんばかりの膨大な力が解放され、身体中を駆け巡る。


「グル……!?」


 俺の気配が変わったからだろう、カラミティウルフは笑みを止め、ジリジリと後退しようとするが、挑発効果がそれを許さない。


 例え挑発効果がなくても逃がす気はない。

 俺は確実に仕留めるために、片手を空に突き上げて大きく息を吸う。


「今度は俺が笑う番だ。泡の戦隊(バブルスカッド)!」


 アイドル魔法の一つであるスキルワード唱えると、俺の周囲に大小様々な無数の泡が展開される。

 その数は百を優に超えている。


「いけ!」


 俺が腕を振り下ろすと同時に、虹色に輝く泡々が目標に目掛けて砲弾のように放たれる。


「――ッ!!」


 カラミティウルフは自慢の高速を活かし、右に左にとジグザグに走りながら躱し続けるが、無数の泡がそれをどこまでも追い続ける。


「無駄だ。お前の動きはもう完全に見えてるんだよ」



 堪らず空中に逃げるカラミティウルフだが、全方位に展開されている泡に死角はない。

 空中を出鱈目に走り回るが、やがて一つの極小の泡がカラミティウルフにヒットする。


「――!?!?」



 ――その途端、小さい泡がカラミティウルフを飲み込むほどに大きくなり、その体躯ごと包み込んでしまう。

 カラミティウルフは脱出しようと、泡の中で必死にもがいているが、そんな抵抗で逃れられるような易い泡ではない。



「……これで終わりだ」


 泡が完全に獲物を取り込んだのを確認した俺は、その泡に向かって手を握りしめるように閉じる。

 

 その瞬間、獲物を捕らえていた泡は中の空間ごと急速に圧縮を始める。


「――!?」


 成す術もなく押し潰され、ついに限界を迎えたカラミティウルフは、声も上げることも出来ずに跡形もなく消滅した。



 ……そこには黒い靄のみが残され、辺りには静寂が帰ってきた。

 しばらく警戒を解かずにいたが、異変がないことを確認して、俺は深く息を吐いて独りごちる。



「ふぅ……勝ちはしたけど、正直ハラハラだったな」


 結局、奴は何だったのだろうか。

 明らかに尋常なモンスターではなかった。



 俺はその場に立ち尽くし、魔石も何も落とさずに消えていったカラミティウルフの靄を、風に揺れる木々の音と共にしばらく見つめ続けた。

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