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第3話 キャラクター選択【メイクアップ】

 今、俺の目の前には半透明のウィンドウが浮かんでいる。

 その内容はこうだ。


――キャラクター選択


  ▶ティア・ロゼッティ(選択中)

   桃谷 天霧


――空きスロット【0】



「キャ、キャラクター選択? 俺の名前と……このティア・ロゼッティって、どこかで聞いたような」


 俺は目の前に浮かんでいるウィンドウをまじまじと見つめる。

 よく見るとティア・ロゼッティの項目は、背景が全体的に灰色に塗りつぶされている。恐らく選択中を意味しているのだろう。

 

 反対に俺の名前は白く光っている。これは選択可能という意味なのだろうが、そんな事よりティア・ロゼッティだ、やはり聞いたことがある。

 

 そこで俺はハッと気づき、急いでスマホをインカメラモードで起動する。


「うお! すごい美少女が!! あ、俺か! やっぱりティア・ロゼッティってティアのことだったのか。てか今更だけど声も俺じゃない! 可愛い!!」


 スマホに映し出されたとんでもない美少女を前に、一度驚くが、直ぐに自分だと理解する。

 明るいベビーピンクに近い桃色のツインテール。綺麗で長いまつ毛に、大きくてくりくりな瞳。

 最後にちょこんと可愛いらしい唇と、小さな鼻がある。

 

 間違いない。これは、ティアは俺が作ったゲームキャラクターだ。


 俺はフリーターの裏で、個人的にPCゲームを作成する開発者。所謂インディーゲームを作る趣味がある。

 最近はめっきり作っていないけど、実際に作ったゲームは"スイーム"というPCゲーム専用のプラットホームで販売もしている。

 

 といっても、別に有名でも何でもない。寧ろその逆で、今までの制作タイトルは10本。売れた数は全タイトル合計で0本だ……。

 

 正確に言えば売れたことはある。でも必ず返品されてしまうのだ。

 原因は恐らく、シナリオ・デザイン・音楽・プログラミングetc……開発から販売まで完全個人で行っているからだろう。特に絵は下手な自覚はある。

 でもそれで良いんだ。趣味だから、ゲームを作ってる時は楽しい。


 そしてこのティア・ロゼッティは俺が初めて作ったゲーム【天使☆爆誕! 輝け! 戦場のアイドル!】という横スクロール2Dアクションゲームに登場するキャラクターだ。

 設定では私立リリシア女子学園に通う十五歳の女の子で、天竜と契約することにより膨大な力を得ることになっている。

 

 一番最初のゲームだから特に力を入れたつもりだ。

 けれど、アクションは思い通りの演出にならなくて、音楽もヘンテコだし、何よりキャラクターデザインが控えめに言っても終わってたし……


 でも、いま俺の目に映るティア・ロゼッティは、俺の想像通りで、あの時イメージしていた完璧な姿だった。

 これをゲームに落とし込めていれば絶対に売れていたはず……って、いやいや、今はそこ掘り下げても仕方がない。


 俺はとりあえず目の前のウィンドウに意識を戻し、本来の自分の名前を指で選択してみる。

 すると、シュン! という効果音と共に、見慣れた自分の姿がスマホに映し出された。


「戻った……あ、そうだ。あれも思い出した」


 昨日、気分良く酔ってる最中に、何故か急にステータスウィンドウが表示されたんだ。

 なんかとんでもない数字が書いてあったような気もするけど……

 若干の冷や汗と共に、俺はステータスを表示させる。


「ステータスオープン」


 自身のステータスを表示させるワードを唱えると、ブォンっと目の前に半透明のウィンドウが表示された。


 名前 :桃谷 天霧

 職業 :フリーター

 クラン:未所属

 レベル:603

 HP  :604(+21,780)

 MP  :604(+13,177)

 STR :604(+4,538)

 DEF :604(+3,630)

 DEX :604(+3,757)

 INT :604(+2,922)

 LUK :604(+2,668)

 ◆スキル

 ・キャラクター選択【メイクアップ】

 ◆リンクスキル

 ・共有する魂【ソウルコネクト】

  ┗リンク元:【ティア・ロゼッティ】

 ◆称号

 【ダンジョンの掃除人】

 【世界唯一の隠しダンジョン【海】攻略者】


 

 …………ツッコミどころが満載だった。


「ちょ、ちょっと待て……俺のレベル、昨日まで1だったはずだろ!? STRもDEFも、全部オール1だったはずなのに……なんでこんなことに!? 」


 それに、この(+)って一体なんだ? こんな表記、見たことも聞いたこともないぞ。

 念のため補足しておくと、オールステータス1は確かに珍しいが、レベル1の大半はどれも一桁台だ。

 一般的に、ステータスのどれか一つでも10を超えていれば、探索者としての適性があると言われている。

  

 そして目を引くのはやはりスキルと称号。昨日は酔っていたせいか、突然現れたステータスに疑問を持たず、何かスキルが増えてるじゃ〜ん! とか言ってノリで使った覚えがある。

 

 恐らく眠気が限界だったこともあり、スキルを使って直ぐそのまま寝てしまい、今に至るのだろう。


 とりあえずスキルの詳細を見てみる。

 

――キャラクター選択【メイクアップ】

 桃谷 天霧の固有スキル。このスキルを使用すると自分に深く関わりのある、異なる自分になれる。

 代償として永久的に全ステータスの数値がレベル+1になる。


――共有する魂【ソウルコネクト】

 ティア・ロゼッティの固有スキル。魂の繋がりを持つ所有者を献身的に支える。

 ティア・ロゼッティの全ステータスの500分の1をリンク先のステータスに反映する。



「つまり、俺の場合ステータスはレベル+1の分かりやすい数値になり、その横の(+)は、ティアのステータスの一部が反映されているということか」

 

 ステータスの横の数値はそういう意味だろう。しかしリンクスキルなんて聞いたこともない。

 というか500分の1でこれって、ティアさん強すぎませんか?

 

 しかし分からないのは、どうして急にこんな出鱈目なレベルになったかだ。

 スキルは恐らく、レベルが上がったから覚えたんだろう。

 レベルが上がるとスキルを覚える人はいるが、どのレベルでどんなスキルを覚えるかは、千差万別である。


「レベル603で全ステータス604か……正直弱いな。普通のCランク探索者って感じのステータスだ」


 だがそれはレベル604にしては弱いというだけで、全体で見ればCランク相当は十分強い部類に入るだろう。

 特に、ティアのステータス補正を加えればかなりの数値になる。

 

 ステータスは本来非公開だから憶測に過ぎないが、ティアの補正込みなら、俺もAランクくらいはあるのだろうか?

 いや、もしかしたらSランクなんて……ってそれはないか。


 

 考えも程々に、俺はステータスに表示されたもう一つの気になる箇所へと意識を向ける。

 

 「ダンジョンの掃除人、それに世界唯一の隠しダンジョン【海】攻略者……まさか、全部これが関係しているのか?」


 ダンジョンなんて昔、高校生の時に一度潜ったきりでツノウサギにコテンパンにされた記憶しかないぞ。

 そもそも隠しダンジョンってなんだよ、そんなの聞いたこともないぞ。

 それにどうして掃除人なんだ? 当たり前だが、ダンジョンで掃除なんてしたこともない。

 

 少し落ち着いて考えようと思ったが、昨日の酒の所為だろう。急激に襲ってきた尿意に駆られて、俺はそのままトイレへ直行する。


「ふぅ、久しぶりの酒はおいしかったけど、尿意が近くなるのが難点だよな」


 用を足してスッキリした俺はトイレの水をしっかりと流す。

 その流れる光景を見て、ふと思い出す。


「そういえば、昨日の海で見た渦潮ってこんな感じだったよな、まるで海の水が底に流れていく感じで…………え?」


 俺はここでとある可能性を考える。

 まさかとは思うが、仮に――昨日、釣り竿で引っ掛けたのは魚ではなく、なにか別の物で、それが穴のようなものを作ったのだとしたら。

 その穴に海水が流れ込み、そして流れた先が隠しダンジョンだったとしたら……


  

 いやいや、そんな仮説ないない。海水でダンジョン丸々掃除しちゃいましたって?

 よく知らないけど水圧とかそんなのがあるから、海に落ちた車のドアは開けるのが困難って聞くし、釣り竿1本でそんなの出来るわけ、ない……よな?


 ……思い返せば、あれは普通の釣り竿だったのだろうか?

 給料アップが嬉しくて、すっかり舞い上がって気にならなかったが、あの釣り竿、今更だが虹色に輝いていたような気がする。

 ダンジョン産の釣り竿か何かだった? でもそんな物を海に放置するだろうか。


 駄目だ、考え出したら切りが無い。もう見に行こう。そう思うや否や、朝ご飯も取らずに自転車にまたがり、昨日の海へと直行する。



★✫★✫


 

「……無いなぁ」


 海に到着し、直ぐに昨日の釣り竿を探し始めるが、見つからない。

 そのまま1時間ほど探し続けたが、結局見つからないので諦めることにした。


「まあ、見つからないものは仕方ないし、レベルが上がっちゃったものを、いまさら騒いでもな?」


 手掛かりが見つからない以上は考えても仕方がない。俺はさっきの仮説通りだろうと割り切ることにした。

 

 帰る途中でコンビニに寄り、適当に弁当を買って帰宅した。


  

 ハンバーグ弁当をつつきながら、改めてステータスのことを考える。

 ステータスの数値がとんでもないことになっていたが、いつも通りに行動できた。

 

 レベルが上がり、ステータスが上がっても、力を抑えられない悲しきモンスターになるわけではない。


 これは昔から言われていたことだが、ずっとレベル1でステータスの実感が無かった俺は、その通りだったことに安堵する。


 とはいえ、力を意識して解放すればステータス通りの力は出るらしいので、それはそれで犯罪を助長させている面もあるらしい。

 もちろん警察や自衛隊も、ダンジョンでしっかりとレベルを上げて、犯罪に対応している姿をテレビでよく見る。


「そうなると、このデタラメなステータスを意識して解放した時どうなるか怖いな。一度どこかで慣らしておくべきかもしれない」


 

 どこか、と言われても、ダンジョンに決まっているわけだが。

 

 ――よし。明日は相模原ダンジョンに行こう!

読んでくださりありがとうございます。

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※本日の投稿はこのお話で終わりです。

また明日も3話投稿予定です! お楽しみください。

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