第22話 お礼内容は……
「ほら、赤羽さん。急いで入って着替えちゃってね」
俺は赤羽さんを連れて女性用更衣室に入る。
……が、ここであることに気付く。
いや、なんで俺も一緒に入ってんだ!?
早く赤羽さんを好奇の目から隠さなければと思い、焦りすぎたらしい。
周りをよく見れば、半裸の女性探索者たちがチラホラと目に映る。
俺があわわわ、と焦っている中、赤羽さんが追加爆弾を投げつけてくる。
「あの、ティアさん。ちょうど良いですし、このまま一回シャワー浴びさせてもらってもいいですか? 汗や土で気持ち悪くて」
赤羽さんは俺の返事を待つ前にシュルシュルと、ジャージの上着を脱ぎ始めた。
上着を脱ぎきったところで、たゆん……という効果音が聞こえたのはきっと気のせいだろう。
そのままシャツに両手を掛けたところで、俺は全力で後ろに振り向いて答える。
「う、うん! もちろんいいよ!? あ、それじゃ私、外で待ってるからね! ごっ、ごゆっくりー!」
俺はそう言いながら、更衣室から飛び出る勢いで脱出した。
★✫★✫
何分経ったのだろうか、俺は女性用更衣室を出てから、すぐ横に備え付けてあったロングベンチに腰を落として、心を無にしていた。
態とではないとはいえ、赤羽さんや、他の女性探索者さんに悪いことをしてしまった。
せめて今日のことは墓場まで持っていこうと、あやふやな般若心経を心の中で唱えていたところで、ガチャっと更衣室が開き、赤羽さんが顔を出した。
「ごめんなさいティアさん。お待たせしました」
そう言って出てきた赤羽さんは、先ほどのジャージ姿とは別人だった。
淡い色のニットにレースを重ねた服装がとてもお洒落で似合っていて、正直、その辺のアイドルより可愛いんじゃないかと思ってしまう。
「ううん、大丈夫だよ。ちょっとシャーリプトラになってただけだから」
「え? シャーリ……?」
赤羽さんは鳩が豆鉄砲を食った様な顔をしている。最近の若い子は般若心経は知らないか。
まあ俺もにわか知識だけど……色即是空 空即是色くらいしか知らないし。
「ううん、気にしないで、ちょっと心がまだ動揺してるみたい。それよりお礼の話なんだけど、やっぱり大丈夫だよ。言葉だけで十分貰ったから」
「あ、そうです! お礼です! 何か私にできることはありませんか?」
俺はやんわり断ろうとすると、赤羽さんは思い出したと言わんばかりに迫ってきた。
う〜ん、やっぱり言葉だけでは気が済まないらしい……
どうするべきかと考えていたところで、俺はあることを閃いた。
そうだよ、お礼ならこれが良い! むしろ是非お礼してもらいたい!
俺は早速赤羽さんに、とあるお願い事をするために口を開く。
「赤羽さん、そういうことならお礼してもらいたいことが思い浮かんだよ」
「はい! 何ですか、私、何でもやります!」
俺の言葉に、ぱっと表情を輝かせる赤羽さん。……どれだけ律儀なんだこの子は。
とはいえ、何でもやってくれるなら都合が良い。文字通りやってもらおうか。
「それじゃ赤羽さん。私とデートして」
「はい! やりま……はぇ?」
俺の言葉に赤羽さんが少し停止したあと、顔が真っ赤になって取り乱した。
「デデデ、デートですか!? あの、そんなのがお礼になるんですか……?」
耳まで真っ赤にしながら俺に確認をしてくる赤羽さんを尻目に、俺は言葉のチョイスが何かおかしかっただろうかと思う。
うちの高校生バイト組である白峰さんと黒木さん曰く、女の子同士で出かける時でもデートと表現するのが基本。と言っていたのだが……。
まあ今はそんなことより、赤羽さんにお礼内容を伝えよう。
「お礼になるなる。凄くなるよ。赤羽さんには、今から私の服を何着か選んでもらいます。それが、お礼内容だよ」
そう、俺が閃いたお礼とは、この魔法少女コス以外の服、ぶっちゃけると普段着をお洒落な赤羽さんに見繕ってもらおう! ということだった。
作中のシャーリプトラとは、般若心経で「悩みすぎ代表」みたいな立ち位置のお弟子さんだそうです。
大雑把に一言でまとめると、
観音菩薩「考えるな、感じろ」
……ティアさんも色々と悟りが必要だったようです。




