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第20話 いざ行かん! 箱根ダンジョン(後編)

「おお、戻ったー!」


 金色の輪を通り過ぎたと思ったら、次の瞬間には箱根ダンジョン一層の小部屋に戻ってきた。


「ちゃんとイメージした通りの場所にワープできたな」


 見覚えのある小部屋なので間違いないだろう。

 俺は出口を目指して歩き出した。


「あった、出口、というか入口? まあどっちでも一緒か」


 数分ほど歩いたあと、俺は数時間前に下りてきた階段を今度は登り、箱根ダンジョンを脱出した。



 階段を登りきって入場ゲートの先に戻った俺は、そのすぐ横に設けられた退場ゲートへと歩き出す。



「お疲れ様でした。探索者カードの提示をお願いします」


「はい、どうぞ」


 退場ゲートの受付嬢さんは、俺から探索者カードを受け取ると、入場ゲートにもあったパソコンのような機械に通す。


「確認いたします……あら、ティアさんは本日10層まで到達なされたのですね。おめでとうございます。FランクからDランクへ昇格となります」


 ん? 昇格? 今、さらっと昇格と言われなかったか?

 それに、十層に到達したなんて話していないのに、どうして分かったのだろうか?


「あのどうして、10層まで行ったのが分かったんですか? それと昇格ってなぜですか?」


 俺は受付嬢さんに軽い疑問をぶつけてみる。


「技術の面ですので、詳しいことは私どもにも分かりかねますが、探索者カードは、お客様ご自身と連動しておりまして、お客様が到達階層を更新する度に、その情報が自動的に探索者カードに保存されます」


 受付嬢さんは一度言葉を区切り、横にある機械に手をかざし、言葉を続ける。


「そしてこちらの専用読み取り機を使用することにより、お客様の探索者カードに保存された、入場時と退場時の情報に変更部分があれば、自動的に表示されるようになっています」


 なるほど。パソコンのような機械は、探索者カードの読み取り機だったのか。

 それに俺自身と連動と言うのは、おそらくカード作成時に垂らした血が関係しているんだろうけど、これもダンジョン由来の技術だろう。


 相模原ダンジョンの時は、気絶した赤羽さんをおぶっていたのもあって、ここは素通りさせてもらったから知らなかったな。


 俺がふんふんと感心して聞いていると、受付嬢さんはそのまま言葉を続ける。


「そして昇格のお話になりますが、探索者ランクは、ダンジョンの到達階層を基準に分けられている。というお話はダンジョン講座でお聞きになられたと思います」


 そういえば聞いた気がする。あの時は早くダンジョンに潜りたくて、あんまり詳しく聞いていなかったんだよな……

 

 受付嬢さんはさらに言葉を続ける。要約するとこういう基準だった。


Fランク:初期ランク(登録直後)

Eランク:到達階層6以上

Dランク:到達階層10以上

Cランク:到達階層20以上

Bランク:到達階層40以上(昇格試験あり)

Aランク:到達階層50以上(昇格試験+ギルドからの推薦)

Sランク:到達階層60以上(昇格試験+ギルドからの推薦)


 つまり、今回俺が十層まで到達したのが探索者カードから読み取れたから、Dランクに昇格したというわけか。

 そしてBランク以上から色々特典が付くらしく、試験が必要なのは不正防止だそうだ。



「詳しく説明してくれてありがとうございます。疑問が解決しました」


「お客様の問題が解決されたようで何よりです。それと、魔石やドロップ品があれば、是非お帰りの際に買取カウンターをご利用下さいませ。それではどうぞお通り下さい」


 色々と疑問が解けた俺は受付嬢にお礼を言い、退場ゲートからギルドホール入り口まで戻ることができた。


 スマホを取り出し時間を見ると、まだお昼の11時過ぎだ。朝の9時から潜っているから、十層まで約2時間で終わらせたことになる。

 これが速いのか遅いのか、よく分からない俺はスマホをしまい込み、そのままドロップ品買取カウンターへ向かう。

 


「ふふ、それじゃレッツ換金♪」


 まだお昼だからか、カウンターは空いているようだ。

 俺は上機嫌でカウンターに向かうと、受付の男性に声を掛ける。


「こんにちは、ドロップ品の買取をお願いしてもいいですか?」


 受付にいたガタイのいい男性は、俺の格好を見て少しギョッとした顔を見せるが、その顔をすぐに元に戻し対応してくれる。


「あ、ああ。そりゃ構わないが……お嬢ちゃんすげぇ格好してるな。ちゃんとモノは持ってるのか?」


 珍妙な格好をしている俺の実力が測れないのだろう、受付の男性は少し訝しんだ表情で聞いてくる。


 ……俺は、事前にアイテムボックスのドロップ品を全て移しておいたバックパックを、ドンッ! と買取カウンターの上に置きドヤ顔を見せる。


「ちょっと多いですけど、これすべてお願いできますか?」


「お、おう。随分と多いな、少し待ってくれよ」


 そう言って男性はバックパックの中身を全て機械の中に入れていく。

 察するに、これも読み取り機なのだろう。


「え〜と、ツノウサギにスライムにツムツムリに……ってドンツノウサギまで!? お嬢ちゃん! これ全部判明している10階層分のモンスターじゃねぇか! 疑って悪かったな!」


 受付の男性はバックパックの中身を確認すると、先ほど訝しんだことを詫びてくれる。


「いえいえ、分かってくれればいいんです。それより、これ全部でいくらになりますか?」


 待ち切れないとばかりに俺は受付の男性に聞く。 

 十階層が初心者卒業ラインと言われているのは知っているので大した値段じゃないとは思うが、結構な数だしそれなりの値段にはなるんじゃないだろうか?


「まあ慌てなさんな、すぐに分かるからよ。ほら出たぜ」


 受付の男性は読み取り機から出てきた紙を俺に渡してくれる。

 そこには各ドロップ品の買取単価と、買取数、及び合計が載っていた。その合計額は……。



「55,400円! 思ったより多い!」


 凄いぞ! たったの2時間ちょいで5万5千円だ。

 時給にすると約2万7千円オーバーの稼ぎだ。探索者が儲かるのも納得だな。

 まあ、命をかけるのに釣り合っているかは微妙なところだけど……。


「これで問題なけりゃ全て買い取らせてもらうぜ。ちなみに、1〜5層の魔石は200円、6〜9層の魔石が400円、10層のドンツノウサギは1,000円って内訳だわな。その他素材に関しちゃ、時価だぜ」


 問題なんてあるはずもない俺は、二つ返事で換金してもらうのだった。



「うへへ……お昼は鰻でもたべようかな」


 ホクホク顔で買取カウンターから出たあと、お昼は上のフードコートでちょっと贅沢でもしようかな? と考え込んでいる俺に、後ろから女性の声が掛かる。


「あっ! 見つけた!! あのあの、私のことを覚えていますか!?」


 どこか聞き覚えがある声に反応して、俺は後ろを振り返ると、相模原ダンジョンで助けた女の子、赤羽さんがそこにいた。

読んでくださりありがとうございます。

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