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第18話 いざ行かん! 箱根ダンジョン(前編)

 最高にハードだったバイトが終わった翌日、俺は碧依の作ってくれた朝食を食べたあと、早速箱根ダンジョンへと向かうべく家を出た。


 大きなバックパックを背負った俺の姿を、碧依は不審そうな顔をしていたが、今日は予定があると言ってなんとか誤魔化した。

 まさか、今からダンジョンに魔法少女姿で潜ってくる――なんて、とてもじゃないが言えない。

 

 そもそもメイクアップなんてスキルは前代未聞だし、国が運営するスキル検索サイトにも、変身系のスキルは一つも載ってなかった。

 たとえ家族であっても、おいそれと話すわけにはいかない内容なのは確かだろう。



「おっと、ダンジョンへ向かう前に、まず公園に行かないとな」


 俺はとある目的があり、箱根ダンジョン近くの公園に寄る。そしてすぐに目当てのものを見つけた。

 

 大抵の公園に設置されているソレの近くで、念のために10分ほど時間を置き、中から誰も出てこないのを確認する。

 そして周囲に人影がなくなったタイミングで、目当てのソレの中に入る。


 ――公衆トイレの、それも女子トイレの中へと。

 

「こんなとこ見つかったら大変だし、さっさと済まそう。キャラクター選択(メイクアップ)


 その瞬間、俺の前に半透明のウィンドウが現れ、迷わずにティア・ロゼッティを選択する。


 俺の身体は輝きに包まれ、その光が収まると一人の超絶美少女がそこに立っていた。


「ふう、変身完了っと。――じゃあ行くか」


 俺は自分の姿におかしいところがないか、鏡でしっかり確認してからトイレを出る。


 何故こんなところで変身しているのかと問われれば、家での変身は碧依に見られたら大変だし、公共のトイレでは人目が多い。

 幸い、ここの公園は人通りも少ないし、防犯カメラの類いを設置していないみたいだから助かる。

 とはいえ、他に何か別の手があればいいんだが……

 

 そんなことを考えながら、俺は改めて箱根ダンジョンへと向かった。



★✫★✫


 

「到着したはいいけど、ずいぶん見られたな……」


 道中、街の人に随分と注目されてしまった。やはり格好のせいだろうか……。

 さっさとギルドの中に入ろう。


 

「……うん。分かってはいたけど、ここでも見られるのか」


 逃げるように箱根ダンジョンギルドホールの中に入るが、やはりここでも好奇の視線を感じる。

 

 ここに来るまでに、かなりの人数にこの姿を見られている。

 人類にステータスが与えられ、魔法使いという存在はいまや珍しくもないのだが、ここまで魔法少女全開の探索者は見たことがない。

 

 変身問題もそうだが、この目立つ服装もどうにかした方がいいかもしれない。実はこの衣装が脱げることは確認してるんだけど、肝心の女物の服が一着もなければ、当然下着もない。

 まさか碧依に貸してくれなんて言えるわけもなく、そもそも今の自分のサイズすら分からないんだよな。


「……適当に買いに行ってみるか? ギルドの上はモールになってるんだし」


 この格好で、それも一人でお店に入るのはかなり勇気がいるけど……って、それより今はダンジョンに入ろう。そのために来たんだしな。


 

 俺は入場ゲートの列に並び、自分の番が来るのを待つ。

 連れもいないのでスマホを取り出し、適当にネットニュースでも見て時間を潰していると、周囲の声が耳に入ってくる。


 

「おい、あの子すげぇ可愛くね? お前、声かけろよ」


「いや無理無理、レベル高すぎだろ。相手にされねぇって」



「そういや配信見たか? 昨日からあの大盾の田中がここに潜ってるみたいだぞ」


「ああ、それなら見たぞ。他にも何人かインフルエンサーが箱根ダンジョンで配信中みたいだな」



「ねぇねぇ、あの子凄く可愛くない? てか服も同じくらい凄いけど」


「それな、魔法少女? ウチらも魔法使えるけど、あのビジュはもうキツいわ。マジ似合ってるし、普通に羨ましいんだけど」



「お前、今朝のニュース見た?不審死のやつ」


「ああ、探索者のやつだろ? でもあれ外国だし関係なくねーか? ドイツにフランスだっけ」


「そうなんだけどさぁ、なんか怖ぇじゃん?」


「俺はクレカの請求のほうが怖えよ。今月使いすぎちゃから稼がないと」


 

 ……可愛い子というのは俺のことだろうか?

 自意識過剰なら申し訳ないが、心は男なので言い寄られても困るぞ。


 それに探索者の不審死か、確かに国外なら関係ないだろうが、はて? 最近どこかで似たような話を聞いたような……?

 

 そんなふうに周りの会話を聞いているうちに、受付の番が回ってきた。

 俺はすぐに頭を切り替え、受付嬢さんの前に立つが、反応がない。


「あの、受付をしたいのですが」


「……し、失礼致しました。探索者カードを提出してください」


 俺が声を掛けると受付嬢さんはすぐに我に返り、受付作業を進めてくれる。

 ふむ、見惚れていたのか、それともやべえ奴が来たと思われたのか、前者であってくれ。


「はい、お願いします」


 俺は、ティア・ロゼッティと書かれた探索者カードを提出する。

 数日前にティア名義の探索者カードを作っておいたのだが、あれはなかなか大変だった……

 なんて考えている間に、受付嬢さんは俺から受け取ったカードをパソコンのような機械に通し、確認を終える。


「ありがとうございます。確認いたしました。ところで、ティアさんはお一人のようですけれど、大丈夫でしょうか? 探索者になられたばかりのようですし……」


 俺がソロだからか受付嬢さんに心配されてしまう。

 この流れ、前にもやった気がするな。


「ふふ、心配してくれてありがとうございます。でも大丈夫ですよ? 私とっても強いんですから」


 俺は問題ないと、安心させるようにぐっ、と力こぶを作るポーズで答える。

 俺の返答に受付嬢さんはあまり納得がいっていないようだったが、後ろがつかえていたこともあり、俺を通してくれる。

 

「かしこまりました。それではお気をつけて行ってらっしゃいませ」


「ありがとうございます。それじゃ行ってきますね」


 俺は受付嬢さんから探索者カードを返してもらい、礼を言う。

 独り言の時はともかく、一応ティアに変身している間の会話くらいは女子になりきるつもりだ。

 付け焼き刃だが、ティアの顔で男言葉は似合わないからな。



 先へ通してもらうと、以前潜った相模原ダンジョンにもあった大きな扉をくぐる。

 暫く歩くと、下へ続く階段が見えてきた。


 ――いよいよだな。


 探索者ティアのダンジョンライフスタートだ!

 高鳴る気持ちを胸に、俺はそのまま階段を下りていく。

読んでくださりありがとうございます。

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