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第14話 再会と不穏な気配?(前編)

「お兄ちゃん、本当にここなの? 看板とかでてないけど」

 

 人通りから少し外れたところにある、小さな外観からはあまりお店に見えない建物を前にして、碧依が感想を漏らす。


「いや、店長の話だと小さいけど看板が……あったあった、カフェ【ラングザム】」


 俺は、目立たないところにある看板を見つけ、ここが目当ての店で安心する。


「お兄ちゃん、お洒落なお店しってるんだね。あたしこういう隠れ家的なお店入るの初めてだよ」

 

「伊達に喫茶店の店員はしてないぞ。まあ俺も、バイト先の店長に教えてもらったんだけどな」


 俺はそう言いながらドアを開けると、主張しすぎない外観とは裏腹に、扉を開けた瞬間、洗練された空気で迎えてくれる。



「いらっしゃいませ。何名様ですか?」


「あっ!」


 俺は出迎えてくれた店員さんを見て、思わず場にそぐわない、素っ頓狂な声をあげてしまった。


「あの、お客様? どうされましたか?」


「お兄ちゃん? どうしたの?」


 店員さんと妹が俺の顔を覗き込み、心配そうな声で聞いてくる。

 危ない危ない、相手は俺を知らないんだから、これじゃただの挙動不審な客だ。


「いえ、失礼しました。2名様でお願いします」


「かしこまりました。それでは、こちらへどうぞ」


 俺はなんとか取り繕い、冷静に人数を伝える。


 ――本当にびっくりした。まさか相模原ダンジョンで助けた女の子が、店員さんとしてこんなところにいるなんて思ってもいなかった。


 でもよく考えれば、別におかしな話じゃない。

 神奈川には現状ダンジョンが二か所しかないんだ。俺だってここから相模原ダンジョンに行ってたのだから、そりゃそうか、という話だ。


「どうぞこちらのお席にお掛けください。ご注文がお決まりになりましたら、そちらのベルを鳴らしてお呼びください。それでは、ごゆっくりどうぞ」


 店員さんが丁寧にお辞儀をし、その場を後にした。

 対面式のテーブルに碧依と向かい合う形で座り、去っていくあの子の背中を目で追う。

 やっぱりあの時助けた女の子で間違いなさそうだ。良かった、ちゃんと無事だったな。


「……お兄ちゃん、さっきからあの店員さんガン見してるけど、まさか惚れちゃったとか?」

  

 店員さんを見つめていたせいか、碧依が茶化すように聞いてくる。


「違う違う。知り合いに似てたから驚いただけだよ」


「ホントかな〜? さっきの店員さん、可愛かったもんね。多分あたしと同じくらいの歳だと思うけど……ハッ! まさかお兄ちゃん、あの子がオーケーならあたしのこともそんな目で!?」


 俺をロリコンだとでも言いたいのか、碧依は自分の身体を抱きしめながら身を引く動作をする。

 演技なんだろうけど、……お兄ちゃん、若干傷ついたよ。


「ないない、流石に一回り以上歳が離れてるのは対象外だか――って痛い!」


 なぜか碧依に蹴られた。俺は無害だから大丈夫と説明しようと思っただけなのに。


「そ、そんなことより何か注文しようか。ほら、メニュー」


 碧依にメニューを渡すと、ジト目だった瞳がぱぁっと見開いた。

 良かった。メニューに気が逸れたらしい。


 色んなメニューがあるが、俺はシンプルにブレンドコーヒーとオムライス。それと2人でつまめるアメリカンクラブハウスサンドを選ぶ。

 碧依は悩んだ結果、お洒落なフルーツインティーに、キッシュプレート。さらにデザートにベリーパフェを選んだ。


 注文を伝えるために鈴を鳴らすと、さっきの子が注文を取りにきた。

 また碧依に変なことを言われても困るので、なるべく顔を見ないよう目線を落とすと、名札が目に入る。

 そこには【赤羽】と書かれており、今更だがあの子の名前を知る。


 注文を伝えた俺は碧依の方に顔を向け、スライスレモンが浮かんだ水のピッチャーをコップに注ぐ。

 俺は碧依に、どうだ? 何もなかっただろうと視線で言い放ち、レモン水を口に含む。


 そんな俺の様子を、碧依がジト目で一言言い放つ。


  

「お兄ちゃん……おっぱいガン見しすぎ」


 

 ――俺はテーブルに、思いっきり水を吹きこぼした。


「うわ! お兄ちゃん汚い!」


「ゴホッ! ガホッ! 碧依が変なことを言うからだろ! 俺がみてたのはそこじゃなくて――」


「お客様!? 大丈夫ですか!? いま布巾をお持ちいたします」


 さっきの店員――赤羽さんが布巾を持ってきて拭いてくれる。


 その時、ガランガランッ! とカフェのドアが大きな音を立てて開き、二人組が入ってきた。

読んでくださりありがとうございます。

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