第1話 プロローグ
あけましておめでとうございます。そしてはじめまして、名のある西瓜と申します。
本作が初投稿となります。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
――箱根ダンジョン 地下59F
「邪魔っ!!」
夜の森から、闇の隙間を縫うように襲ってきた獣形のモンスターを殴り飛ばす。
倒したモンスターが魔石を落とすが、俺は目もくれず緩めていた走りを再開した。
ひらひらと靡いているスカートからスマホを取り出し、とあるチャンネルの配信を見る。
配信の景色、そこに出現するモンスターは、やはりこの階層で間違いないはずだ。
あの子はこの階層のどこかにいる。どこだ……どこにいるんだ。
頭を右へ左へ忙しなく向けながら地面を高速で駆けていると、今度は複数の鳥形のモンスター達が空から襲って来た。
「だから邪魔だって言ってるだろ! 竜の衝撃波!」
俺の突き上げた拳から大気を震わせる高威力の衝撃波が飛び、鳥形モンスターを吹き飛ばす。
十数匹いたモンスターは断末魔を上げ、魔石の雨が降った。
それすらも気に留めずに、全力で道を進んでいく。
そのまま走り続けていた俺の耳に、微かだが女の子の悲鳴が聞こえた。
吹けば消えそうなほど小さな悲鳴だったが、今のこの身体ならどこから聞こえてきたかをすぐに特定できる。
「今のは――上かっ!!」
声が聞こえてきた方角の壁を見据え、首を上に向けると、崖になっていた。
「浮遊する身体!」
俺の身体は浮き上がり、五十メートルはあろうかという崖を一瞬で飛び越える。
そして崖を越えた先にいたのは……ずっと探し求めていた女の子。
「あかりちゃん!!」
「え!? ティアちゃん! どうして、駄目! 逃げて!」
今まさにモンスターに襲いかかられている最中だというのに、俺の心配をする優しい女の子。
彼女にモンスターの鋭い爪が降りかかる。死を覚悟し、ギュッと目を閉じるあかりちゃん。
(――死なせない。死なせてなるものか!)
「囚える瞳!」
次の瞬間、暗い夜の森に、どこからともなく眩い光源が俺へと降り注ぐ。
目の前の獲物に攻撃を仕掛けていたモンスターが攻撃を中断し、光に照らされた俺に剥き出しの敵意をぶつけてくる。
(それでいい。俺だけを見ろ!)
奴の注意が俺に移ったことで、少しだけ余裕を取り戻した俺は、改めてあかりちゃんを見る。
その姿は致命傷こそないものの、これまでの逃走中に付けられた無数の傷が見える。
身体中の至る所に血が付き、見るからに満身創痍だった。
「よくも……よくもやってくれたな……」
その光景を前にした途端、心の中で激しい怒りの炎が灯った。
俺は浮いていた空から静かに着地し、眼前のモンスターを見据える。
紫色の筋肉質な巨躯に、太く大きな手足からは鋭い爪が鈍く光っている。極めつけは、頭部から生えたねじれた角。
【デーモンロード】……特Aランク指定を受けているモンスターだ。
だが問題ない。すでに何度も倒している相手だ。
「グルア!!」
睨み合いに痺れを切らしたのか、デーモンロードは一息の間に俺へと近づき、鋭い爪を袈裟斬りに振り落とす。
だが、俺はそれを片手で受け止めた。
「グルッ!?」
止められて驚いたのか、デーモンロードは目を見開きながらも、すぐにもう片方の腕で攻撃を仕掛けてくる。
だが、それも同じように空いた手で受け止める。
「……覚悟しろよ」
俺は怒りのままに、その掴んだ両腕を全力で握り潰した。
「――グギアアアッ!?」
デーモンロードは酷く耳障りな悲鳴をあげ、堪らず後ろへ飛び退いた。
両腕を潰され、頭に浮かぶ血管の筋がハッキリと見えるほど怒り狂ったデーモンロードは、大きく口を開ける。
「グルアアアアアアアア!!」
激しい怒号とともに、口から大火力の火球を飛ばしてきた。
俺はそれを何もせずに受け、全身が燃え盛る炎に包まれる。
「グララア!!」
勝利を確信したのか、下品に嗤うデーモンロードの声が響く。
「ティアちゃん!!」
炎に包まれる俺を心配するように、あかりちゃんの悲鳴が暗い森に響いた。
彼女を安心させるように、俺は腕を振り払うだけで纏わりついていた炎を吹き飛ばす。
「……グルア?」
嘲るような笑いを見せていたデーモンロードは、無傷の俺を見て驚愕の顔を晒した。
そんな間抜けな姿を見せている奴を終わらせるために、スキルワードを唱える。
「消え失せろ! 爆発する拳!」
俺の身体に灼熱に似た脈動が宿る。その熱の赴くまま真っすぐにデーモンロードへと肉薄し、全力で拳を叩き込んだ。
「ギッ――」
その拳がデーモンロードの顔面に届いた瞬間、もはや悲鳴をあげる間もなく大爆発し、目で追えない速さで吹き飛ぶ。
激しく吹き飛んだその巨躯は、地面に着くこともなく、黒い靄となり空中で絶命した。
俺はあかりちゃんの方へと向き直り、安心させるように笑顔を見せる。
「あかりちゃん。もう大丈夫だよ」
「ティアちゃぁぁん!!」
相当怖かったのだろう。俺の胸に飛び込むように抱きついてきたあかりちゃんは泣きじゃくってしまった。
そんな彼女をただ優しく抱きしめ、その頭を撫で続けた。
この様子を、彼女の頭上に浮いている配信カメラ越しで観ている人たちには、女の子が女の子を慰める。いわゆるてぇてぇとして映っているのだろう。
だが実際は片方が男だなんて知られたらどうなるのだろうか……
というか、あかりちゃんにそれを知られたらそれこそ終わりだ……
この魔法少女姿もすっかり板に付いてきた俺は、どうしてこうなったのかを、あの始まりの日を思い返した。
読んでくださりありがとうございます。
現代ダンジョン物が好きで、自分でも書いてみたくなり投稿してみました。
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※本日は3話まで投稿予定です。お楽しみください。




