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九十三 神の欠片

***


子供が消えた後、幸一(こういち)修良(しゅうりょう)はとりあえず穴に降りて、太陽太歳(たいようたいさい)の様子を見た。


幸一は氷雨を太陽太歳の体から抜き出すと、巨大な体は枯れた土のように崩れて、その中から中老の男の木乃伊ミイラが現れた。


木乃伊の服の胸の部分が突き出していて、何か別のものが入っているようだ。


修良はその服の中から、一本の骨を出した――人間の右手と前腕の腕だった。


「私の腕だ」


修良は平静な顔で告げた。


「!?」


「三年前に、彼と戦っていた時、喰われた右腕だ」


「っ!それって……」


幸一はまだ何かを問い詰めようとしたが、常勝(じょうしょう)は降りてきた。


「二人とも、大丈夫か!?」


「ええ、大丈夫です」


修良は骨を袖の中に収め、頭を深く下げて、もう一度常勝にお詫びをした。


「この度、私の不始末のせいで、こんな重要な日に皆様に大変ご迷惑をかけました。誠に申し訳ございません。どんなも処罰を受けても二言はありません」


「もう言っただろ。修良さんのせいじゃない!一般人への被害がないままやつを消滅してくれて、本当に助かった!!」


常勝は器量よく理解を示したら、修良は彼の話に沿って、さりげなく功労を幸一のほうに譲った。


「うちの幸一は優秀ですから。いつも事態が悪化する前に危険を止めます」


「ああ、本当に驚いた。二年でこれほど昇進したとは、俺は完全に負けた」


一般人の保護の集中して、幸一の短い戦いをそんなにはっきり見ていなかったが、幸一の凄まじい霊気が物を語っている。後輩の成長に、常勝は素直に感心した。


「そんなことはありません。人間はそれぞれ長けているものが違います。でもこれで少しでも常勝さんへの補償になれたら、大変うれしく思います」


「過去のことだし、もう気にしなくていい!」




穴の上で二人の会話を聞いた三虎観(さんこかん)の弟子はなんとなく違和感を覚えて、密かに殷実紀(いんじっき)に聞いた。


「あの、化け物を引き寄せたのはあの二人だし、彼たちが片付けるのも当然だと思う……なんで二年前のことまで水に流されたの?こっちは大損をした気分だけど?」


「……」


殷実紀は頭が痛そうに眉間を掴んだ。


「勝さんは単純だからな……だから、私たちがついてあげなければならないんだ……」




見事に太陽太歳の乱入を解決して、幸一と修良は三虎観を離れた。


修良が事件の起因を彼の不始末にしたが、幸一は知ってる――


自分の力を吸い取る変な子供といい、生命の霊気といい、それらに直接に繋がっているの修良ではなく、自分だ。つまり、本当の起因は、自分の力にある。


その場で修良に問い詰めなかったのは、これ以上三虎観のみんなに迷惑をかけたくないからだ。


幸一は疑問を我慢して、三虎観から十里を離れたところまで着たら、やっと修良に切り出した。


「先輩、あの太陽太歳のことなんだけど……」


「幸一、真面目に聞いてほしい」


「!」


思わなかったのは、修良が自分以上の真剣顔で先を走った。


「今回の件に関して、私を信じてくれないか?」


「も、もちろんだ!」


幸一はさっそく頷いた。


「なんでも言いて下さい!俺は先輩を信じる!」


修良はほっとしたように息を吐いて、幸一に告げる。


「今回の件に関して、私は――本当に何も知らない」


「……」


「ズルを言っていない。幸一が必ず疑うから、まず信じてほしいと頼んだ」


幸一の人間不信な目に睨まれて、修良は誠実に弁解した。


そして、太陽太歳回収した右腕の骨を出して、幸一に見せる。


「三年前に、あの太陽太歳との戦いで、この腕を失くした。それをきっかけに、破滅の力を解放して、悪鬼の右腕で彼を倒した。その後、宗主に人間の右腕を作り直してもらった。ここまでは、本当に普通の妖魔退治の話。あの太陽太歳も普通の邪悪だった」


「普通の邪悪とはなんだ……」


幸一は思わずツッコミをした。


「普通の邪悪は、世の中の負の波動から力を吸収するものだ。人間は負と正の波動を持ち合わせる存在。だから、太陽太歳は赤子から力を獲得できた。しかし、幸一の福徳、生命の霊気は、完全なる正の波動だ。それを吸収して、操られる邪悪は存在しない」


「なるほど……」


修良の真面目な解釈を聞いて、幸一はその言い方に納得した。


「原因はあの子供にあるだろう。俺はあの子の過去を見たかも」


「あの子の過去?」


幸一は見たことをそのまま修良に伝えた。




「……あの子は、もしかしたら、『神』かも知れないな」


「神っ!?」


「そう。言っただろ。幸一の力は神級のものだ。それと共鳴できるのは、当然、神級の相手だ。それに、私はあの子になんの異常も感じなかった。私の目に誤魔化せるものでもあれば、それは神しかないだろう」


「まさか、あの世界の意志とやらは、『神』を遣って、俺の力を回収しに来たのか?でも、そんな簡単に俺の力を誰かに移転できるのなら、先輩を標的にする必要はないだろう……」


「いいえ」


修良はあっさりと幸一の判断を否定した。


「幸一の力を回収することと、私を消滅することは、一体両面のようなものだ。私と幸一の力の存在の仕方は、この世界の理に違反しているから。この世界の平衡のために、旧世界から忌々しい力を持ってきた私を排除するのは当たり前のようなことだ」


「……」


自分の消滅を当たり前のようなこととして語っている修良の言葉を聞いて、幸一は悲しみにも近い冷徹を汲み上げた。


でもすぐに、皮肉を感じて、普段の彼に相応しくない冷笑を漏らした。


「あの人間の子供を喰う化け物を救世主に選んで、旧世界で罪を押し付けられた先輩を排除するなんて。世界の意志は、やっぱり馬鹿だな」


幸一は意志を固め、修良の持っている骨に手をかけて、明るくで真っすぐな目で修良を見つめる。


「俺の力を渡さない。先輩は、俺は絶対に守る」


「――」


気の利くそよ風が適時に吹き、幸一の誓いがより凛々しく見える。


修良は目を離せなかった。


幸一が自分の「体弱」を知った時から、ずっと「先輩は俺が守る」みたいなことを話し続けていたが、彼はいつも子供を慈しむ気持ちで笑って聞いていた。


でも、今の幸一から、確実に自分を守るだけの力を感じた。


現に、幸一が手を出さなかったら、生命の霊気を手に入れた太陽太歳をあんな簡単に滅ぼさなかったのだろう。


幸一は、確かに大きくなった。


「先輩?どうしたの?」


「いいえ」


感慨深い気持ちを隠して、修良は目視線を下げて微笑んだ。


「こういう時、骨ではなく、私の手を握ってほしいかも」


「!!」


そう言われたら、幸一も自分の行動が微妙だと思った。


「た、確かに……ごめん!」


「いいんだ。幸一はこの腕のことが気にしているのなら、気にしないように処理するよ」


「気にしないように処理するって?」


修良がまた妙なことを言って、幸一は戸惑った。


「今は内緒」


修良は笑ってこの話題をやり過ごした。


実は、幸一に言わなかった懸念がある。


幸一は「意識共鳴」の修行をしたことがない。しかし、あの子供の過去を「見た」。


あの子供は神かどうかまだ断言できないが、その力が幸一に「意識共鳴」させたということは――


幸一は思ったよりも神に近い存在になったのか、それとも、あの子は幸一と何か特別な関係があるのか……


前世からの力を取り戻して、強くなった幸一は、本当は、もう自分の手に収められないほどの存在になったのだろう……

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