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絶世の美少年は最悪な鬼に守られている  作者: 星琴千咲
第二章 美貌は花の如く、捕快珊瑚の登場
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九 その捕快、美にこだわる

メインキャラ

胡珊瑚(こさんご)

挿絵(By みてみん)



騒ぎに引き寄せられた遇花城の捕快たちは、外野で複雑の目で事態の進展を見ていた。


確かに、上からの命令により、彼らは左大類の諸々の非道を見て見ぬふりをした。


善良な人間として、幸一がやっていることに応援したい。


しかし、幸一がやっていることは彼たちにとって大変な迷惑だ。


「あの二人……この間、維元城で騒ぎを起こした奴じゃない?」


観戦する間に、幸一と修良の身分に気付いた捕快がいた。


「維元城で騒ぎ?どういうこと?」


「えっ?知らないのか!?大富豪玄家の息子は玄天派で修行を積んで、復讐のために人食い虎を連れて帰ってきたってこと!有名だぞ!」


「なんだと!?あんな綺麗な顔を持つ少年は……人食い虎なのか!?」


事情を知らない捕快は幸一に指さして、驚きの声を上げた。


「違う、あの少年は玄家の息子!」


「じゃあ、その人柄よさそうな青年が人食い虎ってこと!?」


「どっちも虎じゃねぇだろ!」


事情を知っている捕快は思考線路を間違えた同僚を訂正した。


「とにかく、奴らは完全に官府の管轄外だ!これまでも維元城で何度か流血事件を起こしたが、罰どころか、維元城の捕快たち、彼らに敬礼までするだそうだ!」


「なんだと!?俺たちんとこはもう十分ダメだと思ったが、維元城のほうがもっとひどいのか!」


捕快たちは困りそうにお互いを見つめる。


「いくら仙道の名門でも、官府の仕事を干渉してはいけないだろ」


「でもどうすればいいんだ?相手は玄天派だぞ」


「民望はもう奴らの味方だ。俺たちが止めに行ったら破目になるかもな」


「でも、何もしないと、結局叱られちゃうぞ」


突然に、ある人は解決法を思いついた。


「あっ、そうだ!()捕快がいるんじゃ!」


「胡捕快は仙道の出身だろ!同じ仙道の馴染みで何かできなのか!」


提案した捕快は「胡捕快」という同僚を呼んだが、その「胡捕快」がいるはずの場所に誰もいなかった。


「あれ、さっきまでいたのに……」




捕快たちは視線で周りを探していたら、数歩離れたところで、その「胡捕快」が数名の女性に囲まれて、楽しそうに会話を交わしているのを見た。


仕方がなく、提案した捕快は胡捕快に呼びに行った。


「あの、胡捕快……?何かあったのか?」


胡捕快はにっこりと振り向いた。


「すみません、()捕快。お嬢様たちに連絡先を聞かれて、話していたら、つい夢中に」


「うわ、まぶしい!」


盧捕快は思わず手で目を隠した。


胡捕快は幸一に負けないくらいの美しい容姿を持つ陽気な青年だ。


しかも、錯覚なのか、彼が決め姿勢(ポーズ)を取ると、全身がキラキラ光っているように見える。


胡捕快は興奮している女性たちに紳士的に手を振ってから捕快の陣に戻った。




「それがしにあの少年を止めてほしいですか?」


胡捕快の美しい眉の間に皺ができた。


「あの少年は空色の帯を身に着けている、玄天派の準上級弟子ですよ。それがしの門派は弱小で、あんな大物の前では取るに足りないと思いますが」


そう言いながら、胡捕快は興味津々な目で幸一を見つめていた。


「謙遜するな!この間、イノシシ大王という妖怪を一撃でねじ伏せたんじゃないか!胡捕快なら、きっとあの少年を止められる!」


「あの少年をイノシシと一緒にしないでください」


胡捕快は苦笑いした。


「えっ、イノシシ大王よりも厄介ってこと!?」


「ち、が、う」


胡捕快は人差し指を立てて、魅惑そうに微笑んだ。


「美しさの面で雲泥の差がありますから」


「……」


捕快たちは胡捕快の能力を認めるが、彼が時々見せる「美」にこだわる行為について、どうしても理解できない。




「でも、皆さんに頼まれたし、仕事でもありますから、一応、試してみましょう」


胡捕快は一度腕を伸ばして、出動する構えを取った。


「おお、頼むぞ!」


捕快たちの声援の中で、胡捕快はいきなり空に飛んで、抜刀する。


そして、きれいな放物線を描きながら、幸一に刀を刺した。


「!」


修良はいち早く突如に現れた力を感じた。


でも殺気がなかったのも分かった。


幸一の腕なら、このくらいのことは自力で処理できる。




思った通り、幸一は襲撃に気づいたら、目の見えない速さで袖から一本の細い剣を抜き、刀に迎え撃つ。


幸一の細剣と胡捕快の刀がぶつかり、金属の星屑を飛ばす。


力で幸一に負けた胡捕快は一旦引いて、再び空に飛んで、トンボ返りをしてから幸一の背後を狙う。


幸一は一歩前に移し、剣を横に振り、再び胡捕快の攻撃を止める。


刀が跳ね返された胡捕快は、一羽の鳥のように、足先一点で幸一の剣の先に立った。


「!?」


「ぎゃあ!かっこいい!」


胡捕快の一連の動きに目を奪われた女性たちは興奮の声を上げた。


「お前、誰だ!?」


幸一は剣を上げたまま胡捕快に問う。


「見ての通り、この遇花城の捕快です。まだ見習いだけどね」


言い終わって、胡捕快は再度空に飛んだ。


今回、幸一は相手の攻撃を待たなく、自分から胡捕快よりも高いところに飛び上がり、剣を振り下ろした。


二人は空中で何度も剣を交わす。




(幸一と互角に渡り合う。そのすさまじい霊気は人間のものではないようだな。)


(この気配は、妖怪だろう。)


修良の目では、胡捕快の背中から赤い光が見える。


光は三本に分けていて、どれも燃えている炎の形をしている。


(一本は、筋力を強化している。もともと力がそれほど強くないだろう。)


(一本は、空を飛ぶ効果を付加している。もともと飛べない種族だろう。)


(最後の一本は、身の回りに柔らかい白い光を付与している……これ、どんな戦法?対戦相手の目に影響をあたえる術にして、やさしすぎる……)


修良は光の意味を読み取っているうちに、幸一と胡捕快は地上に戻った。


幸一はたちまち足先で地面を蹴って、胡捕快に剣を刺す。


しかし、胡捕快は刀を収め、幸一の剣を交わし、すばやく地に倒れている左大類を持ち上げ、盾にした。


「!!!」


剣が左大類の鼻先に来た間一髪、幸一は動きを止めた。


胡捕快は軽く笑って左大類を放した。


そして向きを変え、人込みの後ろにいる同僚たちに呼びかけた。


「すみません、皆さん!やはりことの人たちは悪い人ではないと思います!まず話し合いましょう」


「誰も武力で止めると言っていないだろ!」


胡捕快の勝手な行動に困らせた同僚たちは嫌々と人込みから出てくる。


「だ、だめじゃ……」


その時、左大類は胡捕快の足を抱いて、必死に頭を上げた。


「あいつらは……凶悪犯じゃ、話し合っては、いかんのじゃ……すぐ、捉えてくれ……」


左大類の肉肉しく、色どりな顔を見た瞬間、胡捕快の口元がびくっと動いた。


何か汚いものでも見たように、胡捕快は目を強く潰した。


《《「……美しくなさすぎる」》》


そう言って、思いきり腕を左大類の顔に振った。


「あああああ!!!」


左大類はその一撃に豪邸の屋根に飛ばされた。


「胡捕快、何をっ……!?」


驚愕した同僚たちは慌てて左大類のところに走る。




驚いたのは同僚たちだけではない。


幸一と修良を含めた現場にいる全員だ。


いきなり幸一に戦いを挑んだ胡捕快はあっという間に矛先を逆に向けた。


彼は一体何をしに来たの?


みんなの注目の中で、胡捕快は傍若無人に豪邸から救出された少年少女に歩いて、少年少女たちを観察した。


「……あの変態、顔を見る目があるようですね」


緊張と不安で震えている少年少女たちに、胡捕快はにっこりと微笑をかける。


「みなさん、もう大丈夫ですよ。これからそれがしはあなたたちを守ります。家に帰りたい人がいれば家まで送ります。帰る場所のない人はそれがしの家で働いてもいいです。もちろん、奴隷ではなく、普通の使用人として。ちゃんと適正な月給を付きます」




幸一は困惑な表情でしばらく胡捕快を見つめていたら、何か分かったように胡捕快に話しかけに来た。


「お前って……」


(ふん、もう気付いたのか、それがしは人間ではないこと)


胡捕快は背筋を伸ばして、さわやかな笑顔で幸一の判断を待つ。


「――《《いい人》》だね!!」


「っ!?」


幸一の結論は胡捕快の予想とまったく違って、胡捕快の決め表情が台無しにされた。


信じらないように、胡捕快は低い声で幸一に確かめる。


「あなた、本気?それがしは……」


「この遇花城の捕快だろ?見習いだけど、無能で臆病な正式捕快たちと違って、正義な心を持つ《《いい人》》だ!」


「……」


幸一の目に、真摯な光が輝いている。


胡捕快は戸惑った。


(玄天派の準上級弟子で、あれほどの霊力を持っているのに、それがしの霊気を見ぬけなというのか?それとも、それがしを混乱させるためにわざと知らないふりを……)


「……彼は本気で言っている。疑い無用だ」


修良は嘆きながら胡捕快の疑問を回答した。




幸一の「こういうところ」が一番の問題だ。


幸一の魂は、旧世界の最後の良心だ。


腐りきった世界で、最後まで純白な心を持つことは至高の福徳。


その福徳は新世界で美貌、知恵、財産、莫大な力となって幸一に還元した。


そのため、幸一は若くして仙道の達人になれた。


しかしなぜか、幸一には人間、妖怪、魔物、仙人などの区別ができない。


その長年の疑問に、修良は以下の理由を推測した。


通常、早く異種族のことに気付く人は警戒心の強い人だ。


前世の幸一は、すべての種族を平等に見ていた。


おそらく、幸一の潜在意識の中で、異種族であっても危険性のない存在で、認識する必要がないと思っているのだろう。

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