表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/88

八十五 恨みあり

三虎観(さんこかん)は夜の団体修行を設けている。


夕食後の二時間は自由時間で、夜の団体修行まで、みんなそれぞれ用事を済ませるか、休憩をとる。


今日、王鋼(おうごう)李鉄(りてつ)という二人が買い出しに出たばかりなのに、いきなり慌てて戻ってきた。


「大変だ!あの玄幸一(げんこういち)天修良(てんしゅうりょう)が来ている!!」


「全員集合だ!大事件だ!!」


二人は観内で叫びながら走り回って、みんなを主殿に集めた。




「玄幸一と、天修良っ!?」


それほどの驚きを見せなかったが、三虎観の首席弟子――常勝(じょうしょう)は、心の中で誰よりも大きく反応した。


その二つの名前を聞くだけで、彼は骨からガタッと異様な音が出たような気がした。


常勝は今年三十四歳、少年時代から仙道と武道の達人で、名前通り、戦闘中に「常勝」だった。


しかし、二年前の玄天派総会で、彼は自分の半分の齢しかない十六歳の幸一に負けた……とても悲惨な形で……


常勝と違って、ほかの何人かがかなり取り乱していて、ざわざわした。


「あんな奴ら、何をしに来た!?」


「わ、わからない、とりあえず、外の困獣陣(こんじゅじん)で足を止めた」


「最近、玄天双煞(げんてんそうさつ)というよくない噂があちこち散らばっている。やはり、あの二人のことか……」


「特にあの玄幸一、復讐のために手段を選ばないと言われている」


「この間、あの天修良は手配犯になったな。平和協定を破って、妖界に挑発したらしいぞ」


「まさか、いよいよ正道をやめて、玄天派を潰しに来たのか……!?」


「全員で迎え撃つしかない!」


「宗主に報告しよう!!」




「あの、待ってください!」


混乱の中、一人の若い女性は冷静に手を上げた。


みんなを呼び止めたその女性は、九香宮(くこうきゅう)景媛(けいえん)の双子の妹、景姝(けいしゅ)だ。


姉と顔から能力までそっくりで、お互いの考えまで分かる。


二人が一緒にいると自分がなくなるのを感じて、景姝はあえてこの玄天派の一番小さな支部に入った。


「この間、手配犯のことで姉に確認したけど、何か誤解があったらしい。本当は、宗主が天修良を守るために手配したって。玄幸一も、聞いた話だと、基本的に正義感の強いいい子で、ひどい手段で復讐するような人間じゃないみたい。みんな同門だから、もっと彼たちを信用したほうがいいじゃない?」


「景姝、私も彼たちを拘束するのを賛成だ」


もう一人冷静でいられたのは、殷実紀(いんじっき)という青年。三虎観の弟子の中で、二番目にあたる人物だ。殷実紀は落ち着いた口調で景姝に反論した。


「どうして?実紀先輩はいつも理性と事実で物事を判断する主義じゃない?噂に惑わされちゃだめだよ!」


「そう、俺は理性と事実で物事を判断する。だから、《《『らしい』、『聞いた話』、『基本的に』、『みたい』》》のような不確かな印象より、自分の目を信じる」


そう言って、殷実紀は悔しそうな視線を常勝に移した。


「あの玄幸一と天修良は、勝さんに何をしたのか、お前もその目で見たのだろ!」


「……」


景姝は返す言葉がなくなった。


「それに、明後日は一年一度の『三虎祭(さんこさい)』、こんな時期に何かあったら、お祭りを楽しみにしているみんなにも申し訳ない」


「……」




「三虎祭?それ、なんですか?重要行事?」


ふいに、誰かが質問声を上げた。


「馬鹿か!この間みんなずっと準備しているんじゃないか!三虎観に入って何年目だ!?」


誰かがその空気を読めない質問を出したものを叱った。


「入ったのは今日初めてです」


「はぁ!?こんな大事な時に、冗談を――」


変な質問と答えに辿って、みんなが一斉扉のほうに振り向いたら――


「げ、玄幸一!!」


「お久しぶりです。三虎観のみなさん」


――さわやかな笑顔で手を振る幸一と、その後ろに静かに立っている修良の姿があった。


「嘘だ!困獣陣はしょぼく見えるけど、こんな短時間で脱出するはずがない!」


李鉄は信じられない声を上げた。


「すみません、しょぼく見えるから、壊してもすぐ直せると思って、脱出じゃなく、破壊したんだ……」


幸一は申し訳なさそうに説明したら、三虎観の人たちから強く反発を受けた。


「チクショウ!来た早々挑発する気か!!」


「いえいえ!実は、謝罪しに来たんだ!」


幸一はさっそく深いお辞儀をした。




「謝罪?」


「ほら、言ったでしょ!幸一はいい子って!」


景姝は前に出て、幸一を憤慨する同門たちと分けた。


「謝罪だと?遅すぎると思わないか?」


殷実紀は冷笑した。


「二年前、勝さんはどれほどの苦痛を耐えたのか、お前には分かるものか?いまさら謝罪するところで、許されると思うのか?」


「……」


幸一は小首を傾げて、困惑しそうに聞き返した。


「勝さんって、常勝先輩……?俺、常勝先輩に何かしたか?」


「はああ――!?」


一度静まった場面がまた騒ぎ出した。


「その件ために謝罪しに来たんじゃないのか!?」


「いいえ、別件で来たけど……」


「じゃあ、常勝先輩のことはどうするつもりだ!?」


「だから、常勝先輩に何を……」


幸一はますますわけが分からなくなる。


常勝の顔がますます暗い色に染められる。


「忘れたとでも言いたいのか!?」


王鋼は一歩前に出て、必死に情緒を我慢する常勝を指さす。


「二年前、お前は玄天派総会の武闘大会で、常勝先輩の全身の骨を折ったことを、ここにいる全員がこの目でしっかりと見てたんだ!!!」


「!?!?」




意外な事実に、幸一はかなりの衝撃を受けた。


小さく一歩を下げて、こっそりと後ろの修良に聞く。


「先輩、俺、そんなことしてたっけ……?」


でも、修良も意外そうな顔で聞き返した。


「ん?幸一は常勝さんが全身の骨が折れたことを知らなかった?」


「!?」


修良にも言われたので、幸一は極力で記憶を探った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ