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絶世の美少年は最悪な鬼に守られている  作者: 星琴千咲
第二章 美貌は花の如く、捕快珊瑚の登場
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十 彼の正体

胡捕快は美しくない現場の後片付けを同僚たちに押し付けた。


彼自身は救出された少年少女たちを町内最大の旅館に連れて、旅館の人に少年少女たちの世話を頼んだ。


もちろん、費用は彼が全額負担。


そして、自分の失礼な行動にお詫びをするために、旅館で幸一と修良に御馳走を用意した。


そこで胡捕快は正式に名乗った。


「それがしの名は胡珊瑚(こさんご)、出身は逢秋(ほうしゅう)山、職業はこの遇花城の見習い捕快です。唐突な行動でご迷惑をかけまして大変申し訳ございません。どうかお許しください」


「いいえ!胡捕快も仕事があるだろ。それに、事情が分かったらすぐ助太刀をくれたんだし!」


幸一は手を横に振った。


胡捕快が矛先を変えたのは「顔のため」だということにまったく気付いていない。


「珊瑚でいいです」


胡珊瑚はさわやかな笑顔を返した。


「見習いですか?胡捕快の腕でなら、上京でもかなりいい職に就けるでしょう。なぜこの辺境町で捕快の見習いを?」


修良は珊瑚への呼称を変えないまま質問を出した。


珊瑚は一度お茶を飲んで、苦笑いをした。


「恥ずかし話ですが、少し前までに、それがしは軍で勤めていました。親の関係で経験が浅いのにもかかわらず、重要な役職を任命されました。それがしは親の七光りだと言われないように頑張るつもりだけど、周りから優男に扱われて、仕事がなかなかうまく行きませんでした。そこで、管理層から身を引き、身分を隠して、一番基本の捕快職から始まったのです」


「出身や外見で人を判断するなんて、最低じゃないか!」


幸一は深く共感した。


有力者の家の出身、きれいな顔を持っている、仙道に馴染みがある――


これだけの共通点があるから、珊瑚もきっと自分と同じようにいろいろ理不尽に遭ったと勝手に思い込んだ。


「完全にそうとは言えません。それがしがあの職位に配属されたのは、確かに、親のことが配慮されたからです」


珊瑚は謙遜を示した。


「失礼ですが、ご尊父は国のご要人様でいらっしゃいますか?」


修良は横からまた質問をなげた。


「それがしは身分を隠しているので、出身をはっきり申し上げられないです。でも、珊瑚は本名なので、どうぞご遠慮なく呼んでください」


珊瑚はさらりと話を流した。


「そうですか、失礼しました」


(その話が本当だとしても、その軍は人間の軍とは限らない。)


修良は一旦引いて、珊瑚を観察することにした。




「ところで、同僚たちから聞きました。お二人は維元城からいらっした玄家のご令息と猛虎のようですが、猛虎はどちら様ですか?」


珊瑚がさりげなく聞いたら、幸一はお茶を吹いた。


「!ケッ、コホン、コホン……なぜっ、そんな、話に……!」


「猛虎はこちらです」


喉の忙しい幸一の代わりに、修良は話を引き継いだ。


彼は袖から一枚の黒玉材質の彫刻枕を出して、窓から外の道路へ投げ出した。


すると、枕は煙となり、煙は黒い虎に変化した。


通行人から恐怖の悲鳴が上げられたが、虎はただ口を大きく開けてあくびをした。


「なるほど、変化の術ですか!」


珊瑚ははっと悟ったように手を叩いた。


「玄天派も動物を門下に入れるようになったのかって思いました。やっぱり違いますね」


「玄天派も……?とうことは、珊瑚さんの門派は動物弟子を取る門派ですか?」


修良は目を細めた。


「それがしは小さい頃に『秋山紅葉亭』で仙道を学びました。今はもう完全に門派を離れています」


「『秋山紅葉亭』は、仙人を目指す動物妖怪や、前世が動物か動物妖怪だった人間を中心に仙道を教授する門派ですね」


「さすがお詳しいですね。それがしの前世もお分かりですか?」


「いいえ、そこまでは……」


(私の目を持っても見抜けない。妖怪だとしたら、少なくとも千年以上の修行がある。)


(幸一に手を出したのは偶然か、それとも……)


修良は少し気を引き締めた。




「では、こちらは玄家のご令息の玄幸一様ですね」


珊瑚は視線を幸一に戻した。


「幸一でいい。珊瑚は俺より年上だろ。敬語もやめてください」


「しかし、こちらのお方……」


珊瑚は躊躇うように修良を覗いた。


「天修良です」


修了は淡々と名乗った。


「修良さんはずっと幸一様に気を遣ってるように見えます。幸一様はさぞ身分の高い方かと」


「先輩は心配性だけだ。俺は別に特別なんかじゃないよ」


「では、遠慮なく、幸一で呼ばせてください」


珊瑚と幸一は楽しそうにお茶碗で軽く乾杯をした。


「特別じゃない」という言葉を聞いて、修良は密かに眉をひそめた。




「実は、捕快としてではなく、『友達』として幸一に聞きたいことがあるんだ。あっ、それがしと幸一とはもう友達でいいよね?」


食事がもう少し進んだら、珊瑚の表情は真剣になった。


「もちろんだ!なんでも聞いてくれ」


幸一が躊躇いなく肯定したら、珊瑚は安心したように口元を上げた。


「幸一ほどの力を持つ人は、なぜあの左大類に売られたの?」


「実は……」


幸一は深いため息をして、家の事情を珊瑚に説明した。


「そんな!いくら前妻の子供でも、そこまでするとは、なんてひどい母親だ!」


事情を理解した珊瑚は目を大きく張った。


「まだ掴まれてないんだね。よし、それがしは手伝う!」


「えっ、いいのか?」


「いいさ、もう友達だろ。それに、幸一たちも知っているだろ。相手が凶暴な逃亡犯でない限り、各地の役人たちは怠惰になりがちなもんだ。官府で協力者がいなければ、何時まで経っていても放置される」


熱心な珊瑚に、修良は冷たい目線を送った。


「しかし、珊瑚さんは見習い捕快としていろいろ忙しいでしょ」


「見習いだからこそ、手伝えるんだ」


「どういうこと?」


幸一は目を瞬いて、珊瑚の説明を促した。


「見習い捕快の制度によると、それがしは一年のうちに、各地を周り、勉強する必要がある。もうそろそろ次の町に行くところだ」


「なるほど、それは、確かに便利かも」


「買い手たちの情報も教えてくれ、赴任のところに買い手がいれば、代わりに彼たちを説得する」


「それはありがたいけど、珊瑚にとって迷惑じゃ……」


「迷惑じゃない。それがしは捕快という職業を選んだのも、正義の味方でいたいから!」


そう言いながら、珊瑚の周りに金色の光がキラキラ輝いた。


修良の目の中で、一本の赤い光が、珊瑚の後ろから浮かび上がって、そのキラキラ効果を珊瑚に付与している。


(かっこつけるのにかなりこだわっているな……外見や美貌に執着心がある種族か……っ!)


珊瑚のニコニコな目を見て、修良はひらめいた。


(その顔立ちに陽気な性格、筋力が強くない、飛べない、素早い、背後に数本の炎のような長い光を持つ……あいつの正体は、おそらく――「狐妖怪」だろう。)

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