第8話 きっかけ
投稿に間が空いてしまい申し訳ありません。
待っててくれた方がおられましたら嬉しいです。
短めですすみません。
読もうとしてくれてありがとうございます。
楽しんで読んでいただけると幸いです。
「これが本物の回復魔法だよ」
ふわふわと浮かびながらハクマが薄く笑う。その目はこちらを小馬鹿にしているようにも、反応を伺っているようにも見えた。
「君のさっきの魔法は非常に面白かったね」
うぐ、と言葉に詰まる。ハクマの煽るような言い方には反論したくなるが、言い返せばやり込められるのは目に見えている。手を握りしめてこらえる。
それに、好奇心で魔法を使ってみようとして醜態を晒したのは事実だ。それは、きちんと受け止めねばなるまい。
「へぇ、受け止めるんだ、偉いね」
いちいち癇に障る言い方への苛立ちを我慢しながら思考にふける。今再び見ることのできた魔法、それに目の前の強大な力を持つ存在との出会い。それらは記憶が戻ってから浮かれっぱなしだった私を冷静にさせた。
再び今の状況を整理しよう。
何故か死ぬ
↓
所謂異世界転生(?)
↓
覚醒
↓
今世の家族とご対面(おそらく貴族)
↓
部屋に妹と二人残される
↓
大精霊(自称)とご対面
↓
ユリス泣き出す
↓
ユリスあやす ←今ココ
………いやなんでこうなった!?
まさかの状況整理でこんがらがるというおよそ状況整理の意味のないものになってしまった。というかハクマが人の思考を読めるのならこのことも聞こえてるんだよね。つまりそれは一方的な情報開示というわけで、私はハクマの要件も何も聞いてないのに相手の望む情報を渡してしまったわけで。メチャ強そうな相手に交渉できるか元々分からなかったけどそもそもの手札が消えてしまったわけで。いや、ハクマが何もせずに帰ってくれたらそれに越したことはない。交渉とか必要ない。早く帰ってくんないかな………いや、これも聞こえてるんだよね。…………これは終わりというやつでは? 死んだ。今世のお母さん、お父さん、大変短い間でしたがお世話になりました。前世の両親もごめんなさい。意識戻って早々死にそうです。大変な親不孝者ですみませんでし―――
「いやいや、さっきも思ったけど思考脱線し過ぎでしよ。僕のことなんだと思ってるの、初対面さっきだよね。感情の振れ幅でかすぎない?」
目を少し細めてこちらを見るハクマ。見た目が狐であることも相まってその様子はさながら獲物を見定めているようだ。口元は弧を描いているように見えるが笑っているようには全く見えない。
そんなハクマの様子にビクッと体を震わして黙る(?)ユーリ。顔も引きつった笑顔を浮かべている。狐を見ながら引きつった笑顔を浮かべて固まる赤子とそれを見つめ返す宙に浮かぶ白い狐。傍から見るとなかなかに混沌とした状況だ。
「勘違いしているようだから言っておくけどね、僕にキミたちを害そうとかいうつもりはないよ。そんなことしても面倒なだけだしね」
君たちが僕を害そうと言うなら別だけど、と付け足しながら言うハクマ。その表情は実に面倒臭げで、本当にそう思っているようだ。怒ったのかと不安になりそうな表情だが、害意がないと聞いて強張っていた身体から力が抜ける。
「落ち着いて話を聞く気になったかな? それで僕が今日来た目的なんだけどね、暇つぶしだよ」
暇つぶし?と、首を傾げながら疑問に思う。そんな理由で偶然こんな転生した赤ん坊と出会ったのだろうか?
「長く生きてると娯楽がなくなって日々の彩りに飢えるものなんだよ。そんな中で異常なほどに魔力を持った人間が不意に現れたら気になるものじゃないか」
そういうもんなのか……? というかその暇つぶしのためにメッチャビビらされたこちらとしては物申したいのだが……。というか異常なほどの魔力って何?
それって私だったりしちゃう? 魔力チートとかある感じ? と若干期待しながら頭の中で質問する。この会話(?)にもだいぶ慣れてきたようだ。
「キミの予想通りだよ。キミからニンゲンではありえないほどの魔力量を感じた。それこそ大精霊並の魔力を。それで少し気になったからね、来てみたんだ」
ちょっと私のニヤニヤした気持ちが伝わっていたのか再びイラッとしながら答えるハクマ。
ハクマ曰く、人間は成長や鍛練次第で魔力を増やすことはできるがそれにも限度があり、とても大精霊並みになるとは言い難い。また、人間の器ではそれほどの魔力を持つことはできず、生まれたとき膨大な魔力を持っていてもすぐ器が壊れて流産や死産となってしまうらしい。故に、膨大な量の魔力を持って生まれた私は異常な存在だと。
一通り話し終わったあと、すでに好奇心は満たされたのかハクマが帰ると言い出した。
「そろそろ人払いも限界そうだし、ボクは出てくね。また明日も来るからよろしく」
え、何勝手に決めてやがるんですか、別にいいけどここあなたの家じゃないよね、なに我が物顔なの、人の気持は無視ですか、この野郎、いやこの精霊ぃ〜!!
そんな発言を残して。
読んてくださった方ありがとうございます。
これからも頑張るので応援していただけると嬉しいです。
また、作者の心が死ぬので引火、炎上などはやめてほしいですm(_ _;)m