第3話 両親対面
どうやら私は異世界に転生してしまったようです………………
一瞬遠い目をしてしまったが、すぐ扉の外から聞こえてくる足音を聞いて我に返る。ドタドタと慌てたような足音が近づいてきて乱暴にドアが開けられた。
「エーレ!」
その呼びかけにお母さんは私を抱いたまま、少し呆れた顔をしながら振り返った。
「聞こえてます。そんなに大きな声で叫ばないでくださいな。この子が驚いて泣いてしまうでしょう」
いやいやお母さん、私そんな泣き虫じゃないよ。………あっ、赤ん坊は泣くのが仕事なんだっけ。泣いたほうがよし? 今からでも泣くべきか?
「はぐらかさないでくれ! 君はまだ病み上がりだろう! まだ出歩いては駄目じゃないか。それに先にユーリフェレネに会うなんてずるいぞ! 一緒に合うと約束してたじゃないか!」
一応お母さんの言ったことを気をつけたのか少し声は抑えられていたが、それでもまだまだ大きい声だ。私の未発達の頭の中に響いてかなりうるさい。
僅かに顔を顰めながら、乱入者を見る。
室内に入ってきたその乱入者は20代前半にのようで夜を思わせるような深い青髪にきれいに整った鼻筋、なく子が見たら更に泣き出しそうな三白眼の目尻を困ったように限界まで下げ、情けない顔をしながらお母さんに近づいてきた。
呆れ具合が増したような声とともに再びお母さんが口を開く。
「ですから、騒がしいですわ。もう一度言いますけれど、この子が泣いてしまいます。もう少し静かにできないんですの?」
先程より鋭さの増した言葉に、とどめを刺されたように胸を抑え、ふらふらと近づいてきてお母さんの腕から私を奪うと頬ずりをしてきた。
「ユーリィ、お母様がお父様をいじめてくるよぉ。助けてぇ!」
お父様? この人が?
「邪魔しないでください。それに、私だけでなくその子も病み上がりなのだから乱暴にしたら危ないでしょう」
私を間に挟んで言い合いを始めた二人。二人共美人なせいか、思い切りくだらないことで喧嘩している様子だろうと絵になりそうだ。
…というかお母さん、いやお母様? 今私のことも病み上がりって言った? 私病気だったわけ? その割にはお医者さんらしき人とか見なかったような。
答えがわかりようもない思考から再び現実に引き戻したのは開け離れたままの扉からやって来た本日3度目の訪問者だった。