流されるままに
遅くなっちゃったけどやっと続くよ
その後、王となった王子は聖女とは名ばかりの女と国だけでなく世界までもを終わりに導く。
終わりの瞬間に王が何を思ったかは誰も知る事はないが、終わりを前にした世界の中で人々はとある処刑を思い出したという。
最後まで無関心を貫かれた王は世界からも関心を失ったのだ。
あぁ、神よ。我々は『選ぶ人を間違えた』
「……あぁ、うんだからね?その後、王子は王となるんだけどさ、まぁあれよね。結論から言っちゃうと世界が破滅するんだよね」
「はぁ…なるほど…?」
白い空間、時刻は…分からない。
そんな空間に心地よい声から説明のように語られる物語。
仕事で嫌な事があって…それを忘れるために帰りにお酒を買って…それから…
「いやさぁ、今までも世界は時代によって世界の命運を一人の選択者に委ねてきたわけよ。
ある時は国を導く名君に、ある時は世界を救う勇者に…ってな感じでね?
選択者がたどり着く結末は様々なれど、それが世界の選んだ答えなら破滅の道も然るべき。
神は如何なる結末になろうともその結果に口出しはしない…はずだった…はずだったんだけどぉ…」
…多分、車に轢かれた。
轢かれて吹っ飛んで…死んだ…と、思う。
そしたら、いつの間にかここにいた。
そして…
「いや、まさかさぁ‼︎選択者が神の使徒とも会わず、世界の命運を選択する前に殺されるとか思わないじゃん!?」
目の前にやけに髪の長い…神々しい?感じの中性的な人物…男の人?女の人?に急に語られはじめ、今現在にいたる。
え?なに、どう言う事?
「流石に世界の理を捻じ曲げるような事は神としては見過ごせないからさぁ、まぁ…あれだよね。やり直そうかなぁって」
え?これ、あれ?今流行りのやつ?流行にのっちゃった系女子なの?私。
悪女とかはたまた聖女とかに転生とかしちゃったりするやつなの?
そのための前語りなの?
「あの、ちょっと待って下さい。」
「ん?なんだい?」
このままだと完全に流されそうなので話に無理矢理割って入ると、目の前の神?はようやく話をやめて首をかしげた。
いや、かしげたいのこちらなんだけども。
「とりあえず私の状況が一体どうなっているのか説明が欲しいのですが」
「やだ君ったら意外とせっかちかい?」
「………どちらかというと結論から話して欲しいタイプではありますね」
多少イラッとした事はとりあえず棚に置かないと話が進まないのでグッと飲み込む。
仮にも目の前のこの人物は自称とはいえ神と言っていた。
へーじょーしんへーじょーしん…
「まぁつまりね、私の管理する世界が私の意図しない方向で破滅の道を進んでしまってね。
世界の選択をやり直すために不幸な事故で亡くなった君の魂を私の元に呼び寄せたんだ。」
「えーと…死んだ…事はまぁなんとなく察してたのでそれはいいんですが…何故私なのでしょう?」
神と名乗る人物は「死んだのはいいんだぁ」と呟きながらうーんと唸り腕を組む。
いや、いいというか…本当は良くはないけどさ…この手の展開って「どう言う事なの!?」って言い始めたらキリがなくなる。
それに死んだの別にこの神様(仮)のせいじゃないんだろうし…え?違うよね?
「そうだなぁ、簡単に言うと君の魂と私の代理となるはずだった者…つまり『使徒』と魂の波長が一致していたから…かなぁ」
神様(仮)は悩んだ末にそんな事を言った。
正直、意味の8割は理解できないが私でなくてはいけない理由はあるらしい。
「まぁまぁとにかくね。君には私の代わりに選択者を導いて欲しいのさ。」
「はぁ」
「なに、導くと言っても君は特に何かをする必要もない。あくまで選択者を見守ってもらうだけで構わないし…君には私からの加護を与えて私と連絡も普通に取り合えるようにするからね」
「それ、私行く意味あります?」
「あるある、だって神が選択者に接触したら世界の命運を神が左右する可能性がでてきちゃうじゃない。それは禁則事項、神ですら犯してはいけない領域さ。」
神様(仮)は2、3度うんうんと頷くと私の顔をじっと見つめて穏やかな顔で微笑んだ。
こうして微笑まれると何故か「大丈夫そう」と思ってしまうのは私が軽率なのか、それとも私が使徒とやらだからなのか…。
「…使徒とやらを引き受けて役目が終わったら私は元の世界に帰れるんですか?」
「……それは、君と世界の選択者が導いた運命によるかな。
今までも使徒はいたけど使徒の結末は様々だ。
間違いなく言えるのはこのまま使徒とならなければ私と選択者がただただ困るって事と君は確実に死ぬ「あ、はいやります」」
はっ…しまった…反射的に引き受けてしまった。
さっきから頭がパンクしそうだ。
だが、少なくとも私は既に元の世界…とやらで死んでいる事。死んでいる以上、私に選択権はないという事だけはこの目の前の神様(仮)が偽りでない以上は真実なのだろう。
轢かれてふっとんだ記憶がある以上は信憑性も高い…はず…。
「本当かい?いやぁ良かった良かった‼︎私も我が子となる者とは仲良くやっていきたいからね‼︎聞き分けの良い子は大変よろしいぞ‼︎」
なんか勝手に保護者的立ち位置に収まろうとしてるこの神様(仮)
「あの、それで具体的にはどのようにすれば?」
「あぁ、我が子がノリ気になってくれたんだ。気が変わらないうちに行動しなくてはね‼︎
今から死んじゃって彷徨ってる選択者(魂)に合わせるから‼︎挨拶したら時間巻き戻して私の世界に送るよ‼︎」
「………え?????」
おそらく、このえ?は今世紀(死後)最大の疑問系だったのではないだろうか…。
いや、神様が選択者と関わるとうんぬん…あれ??
と、様々な疑問が浮かんではきたがそれを私が口にするのはまた後の事。
何故なら私の静止も戸惑いも関係なく目の前の神は勝手に魔法のような呪文を呟き始めてしまったからだ…。
夢女子要素まだかって?
やだ…君ったら意外とせっかちかい?