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プロローグ

稚拙な文章ですが少しでも楽しんでいただけたらと思います。


白上一貴しらかみ いっきside





「おにぃー・・・少しは落ち着いたら?」

隣に座っている双子の妹である白上一姫しらかみ いちひめが眉間に皺をよせながら強引に手を握り締めてきた。少しばかり恥ずかしいがここは妹のぶっきらぼうな優しさに甘えておくことにする。

一見すれば仲睦まじい高校生カップルにも見えるが一姫と僕は正真正銘の兄妹である。

背丈こそふたまわり程違うが、顔の造形は良く似ていると中学時代の友人によく言われていた。

一姫の名誉の為に説明しておくが彼女が男顔なのではない。

僕が女顔なのだ!(どうどうと云うのもどうだと思うが)

おかげで中学時代はそっちの気のある先輩方にお世話になりそうになったが、そんな時は必ず一姫が駆けつけてきて・・・・

その後のことは割愛させて頂こう。


現在飛行機は高度1万3千メートル上空にいる。

僕たちが通う明和高校の新入生親睦旅行なる催しで飛行機で沖縄に向かっているのだが、あいにくと僕は飛行機が嫌いであった。別に墜落するのが怖いわけではなく、過去の経験上飛行機の乗っていい思いをしたことがないのだ。それを知ってて一姫は不安になる僕を勇気付けようとしてくれている。周りは同じ新入生でこの付近はクラスメートばかりなので今後のクラスでのイメージが妹に手を握ってもらう情け無い双子の兄となりそうだが、妹の行為を無下にはできない。むしろ心強くもある。


「白上くんは飛行機苦手なのかい?」

前方の席から身を乗り出し同世代くらいの少年が話しかけてきた。

メガネをかけ、鼻のあたりにソバカスが残るこの少年

彼の名前は・・・


「ああ、ごめんごめん僕は佐久間塔矢さくま とうや、塔矢でいいよ。昨日クラスで自己紹介したはずなのに酷いな」と笑いながら右手を出してきた。


「昨日だけで39人も名前を覚える気にはならなかったから聞き流してたんだ。僕も一貴いっきでいいよ塔矢」一姫と手を離し握手に答えると塔矢の視線がチラチラと一姫に向いているのに気づいた。


「妹の一姫だ。仲良くしてやってくれ」

と僕が言うと塔矢の顔がヒマワリの花が咲いたように綻んだ、どうやら一姫に気があるみたいだ。兄の僕から見ても一姫は綺麗な部類に入るだろうと思う。2人で街中を歩いているとよくナンパされているし(僕も含めてナンパされたり・・・)中学時代にはよくラブレターをもらっていた。


だが「佐久間君ね、よろしく」と一姫が投げやりにもめんどくさそうに挨拶するとすると何か粗相でもしたかな?っと恐縮してしまったようだった。

妹の一姫はこれでいてなかなかに気難しい子である。基本的に彼女は家族以外の人間と親しくする気がない。過去の経験から家族以外の人間を信用すうということをしない。

それでも礼儀上で話しかけられれば応対するくらいになったのは彼女なりの成長といえるほどだ。


「一姫。そういう態度は失礼だぞ。ごめんな塔矢。一姫は人見知りするんだ。特に男にはね、悪気はないから許してやってくれ」

そういうと塔矢は少し気持ちを持ち直したようだった。僕達はお互いの中学のことなどを話した。

しばらく談笑していると一姫がそっと裾を掴んできて

「おにぃー佐久間君、少しボリュームを落として」と注意を促してきた。

ふと周りを見渡すと周りのクラスメート達は関心のないように振舞っているが僕達の会話に耳をすませているのがわかった。

入学式から数日たっているとはいえ僕を含め高校生になったばかりのクラスメートに会話は少なくしかもいきなりの旅行で飛行機だ。緊張しないほうがおかしいだろう。そんな中、談笑を交わす人間がいれば必然的に目立つ、そのことがわかったのか塔矢はまた後でな!っとまたも恐縮したように席に戻った。


「もう!恥ずかしいじゃない!只でさえおにぃは目だつんだから!」

と一姫が耳打ちしてきたが、僕は身長も170センチ体格と並だし髪だって染めたことが無い黒だ。しいて装飾らしいと言えば右耳の十字架をもよおしたピアスくらいだが今時珍しくもない。

そんなに僕って目立つかなっと首を傾げながら窓を眺めているとチカっと白く光るものが目に入った。

瞬間、大きな衝撃とミサイルでも当たったかのような衝撃音と共に体が浮きそうになり、条件反射で一姫を掴んだ。







僕の記憶している始まりはこれくらいだった・・・









ザァー

ザァー

ザァー


「ん・・・」

一貴は耳障りな潮騒の音で意識を取り戻した。

無理な体勢で寝てしまったせいか体中が車にぶつけられたような痛みと少しばかりの寒気を感じたがそれと同時に腕の中に温かく柔らかいモノを抱いている感触があった。

目をあけてそれを見るとそれは全身ずぶ濡れで僕に抱かれている妹の一姫だった。


「ハイ?」


意味不明・・・いやむしろ理解不能だった。



幼い時こそ一姫は僕の布団によくもぐりこんできたりもしたが、今ではそんな嬉しい・・・じゃなくてそんな破廉恥な・・・いやいや・・・なんというか・・・こんなことになるわけが無い!


そんな事を漠然と考えていると一姫が目を開いた。

その綺麗な瞳を開いてしまった。

吸い込まれそうな黒く大きな真珠のような目がパチリと開いた。

すると彼女は状況を認識したのか顔を赤らめ

「おにぃちゃん・・・」っとそっと呟いた。


・・・フラグ?

・・・・・・このフラグは

・・・・・・・・・・・・まさしく死亡フラグだ。


もし僕の顔を鏡でみれば顔面蒼白だろう。全身の血の気がぐんぐん下がっていくのを感じる。

体中の神経がエマージェンシーの信号を放っている。

一姫はニコっと笑みを浮かべると彼女の白く綺麗な拳を丸めた。

「一姫・・・ちがうんだ!僕のせいじゃな」

ドン!!

と顎のあたりに衝撃が走る。

この感触・・・間違いない!生涯通算1186発目の一姫のアッパーカットだった。気を失いそうになる、寝ながらの状態でこの威力・・・さすが我が妹。


「説明してもらいましょうか?おにぃ!なぜ私を抱いて寝ているのか・・・」

「う〜ん」

「え?」

立ち上がって顎を押さえながら唸る僕を見る一姫はまさに驚愕という表情をみせた。

飛びそうな意識を抑えた僕はゆっくりと立ち上がり一姫を見る。


(おや?)


視界には一姫と海そして砂浜。

周りを見渡す・・・


「ほい?」

「おにぃ?」

「一姫?」

「おにぃ?」



「「ここどこ?」」


ハモった。いやそりゃそうだろう。だって起きたらヤシの木やバナナの木が立ち並ぶ常夏の浜辺にいたんだもん。





こうして白上一貴と白上一姫の物語は始まった。





応援よろしくお願いいたします。


主人公

白上一貴しらかみ いっき

身長168cm

体重55kg

黒髪黒目

右耳に十字架のピアスをつけている。

運動神経は非常に良いが普段の堕落生活によりスタミナが著しくない。

一人称「僕」

中学時代までは女性と間違えられるほど女顔であったが最近あまり言われなくなったのが本人の自慢。


厳しい妹の要求にたびたび四苦八苦する姿は、幼い頃から街の名物兄妹風景として知られるほどだ。


だがそれでも有事の際の妹とのコンビネーションは抜群で、あまりモノ多く言わずとも伝わるほどである。




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