その7
休みの日にデートと呼べるか怪しいけど約束を取り決めた奏は鼻歌交じりに女子トイレから出て教室に向かおうとしていた。
「ちょっと奏!」
「はい?」
呼び止められてクルッと向き直ると佳菜がいた。
「奏最近いつにも増して足立君にベッタリじゃん。私寂しいぞ〜」
「ごめん、でも優に絶対好きになってもらいたくて」
「だったらさっさと告白すりゃあいいじゃん」
「したけどフラれちゃった」
「はぁ?私聞いてないけど?てかあんたがフラれるとか足立君ってもしかしてホモ?」
佳菜が怪訝な顔をしてこちらを見る。
「ちょっとショックだったし…… まだ話したくなかったっていうか。ごめんね佳菜」
「で、フラれたのに前より仲良くなってるのはどういうわけ?」
「1度失敗したからってめげてる場合じゃないなって。往生際悪いって思うかもしれないけど」
「あんたって健気ねぇ〜、私だったらすぐには立ち直れないわ、てか奏の告白断ったくらいなんだから神城さんが近くに居たって大丈夫ね、あんたと神城さん飛び抜けて可愛いもんね」
う…… でも神城さんは油断できないな、なんだかんだで優と仲良さそうにしてるし。
「あんた、神城さん苦手でしょ?」
「ウソ!?顔に出てた?」
「いや、カマかけただけ」
「佳菜〜〜ッ!!」
「ごめんごめん。 恋する乙女は大変ねぇ〜、でも私は奏の味方だから安心しなよ」
「ありがとう佳菜大好き!」
「あははッ、奏は可愛いなぁ」
私は佳菜に抱きついた。
教室に入ろうとした時優達の話している声が聞こえた。
「足立今週の休みの日にどっか遊びに行かねぇー?」
「悪いな、今週両親どっちもいないから遊べないんだわ」
「マジかぁ、だったら足立の家で遊ぶか?」
「お前ら絶対家荒らすだろ、勘弁してくれ」
フフッ、いーこと聞いちゃった!
てことは今週優は家で1人なんだね?
話は聞いてませんでしたよー?的な感じで何気なく教室に入り優達の会話に混じる。そして今日も学校生活が終わる。6月に入り少し暑くなり梅雨の時期に入ろうとしていた時期だった。
◇◇◇
今日も学校が終わり帰ろうとしていた、いつもなら奏が俺のところまで小走りで来て一緒に帰ろうと言ってくるところだが今日は奏はいつの間にか帰ってしまっていた。
今日はこないのかと若干拍子抜けして帰路に着いた。
自宅に着き誰もいないがただいまと呟きリビングのソファに腰掛けた。テレビでも付けて1人の時間を満喫して心地いい時間が流れる。
そろそろ夕食でも買いに行くかと思い準備を始めたところピンポーンと間の抜けたインターホンが鳴る。
誰だよ全くと思いながらめんどくさそうにドアを開けると買い物袋をぶら下げた奏がちょこんと立っていた。
「優1人でしょ?だから夕飯作りに来たよ」
…………
絶句してバタリとドアを閉めた。なんで居るんだよ?するとドンドンとドアを叩き「優〜!!」と奏が呼ぶ。
もう1度ドアを開け怪訝な表情で彼女を見る。彼女は少し怒ったのか頬を膨らませていた。
「ひどいよ優!せっかく優に会いたくて来たのに!」
「頼んでない、てかなんで知ってるんだよ?」
「学校で聞いちゃった、えへへ」
そういえば話してたけど聞いてたのかこいつ。唖然としてしまったが夕飯の支度を買ってきてまで彼女をこのままにしているわけには行かないので仕方なく家に入れた。