その42
「神城…… 何を」
「私は奏のことは認めてるつもりよ?でも足立君あなたは…… あなた達にしたことは悪いとは思ってるわ。悪かったからあなたにも謝った。けどね、私は足立君のことはまだ私は認めてない」
「は?どういうことだよ?」
「はぁ…… 私は奏のことが好きよ、バカみたいに足立君に真っ直ぐでわかりやすくて、だけど私はそんな奏だったから。あの時の足立君は奏と私の間でオタオタしてただけ。奏が好きになった足立君だしと思ってたけどハッキリわかったわ、足立君は新垣さんと付き合えば?」
何を偉そうに。人を嵌めておいて今度は説教か?少しはこいつとも仲良くなれたのかなって思ってたけど。
俺はそのまま無視して靴を取ろうと横切った時神城に腕を掴まれた。
「待ちなさいよ」
「なんだよまだ何かあんのかよ?やけに絡むな」
「本当のこと言われてた怒ったから無視?幼稚なの?」
「はあ?お前俺を怒らせたいわけ?それとも前に脅した時みたいに叫ぶつもりか?」
そう言うとまた一段と神城の顔は険しくなったがパッと腕を離した。
「そんなことはしないわ」
「っておい!どこに行くんだよ!?」
神城は俺の靴を取り出して無造作に地面に置くとグイッと俺の腕を引っ張った。
「履きなさいよ、外に出ようとしてたんでしょ?」
「ちょっ、乱暴だっての!」
神城に引っ張られながら履いてるので上手くいかない。靴の踵を潰してしまいそのまま歩かされる。
どこに行く気だよ?てかなんで神城はそんなに怒ってんだ?
人気のない校舎裏に行くとようやく神城は俺の腕を離す。
「わかった?」
「何が?」
「…… 私あなたのことが好きなの」
「……… はッ!?」
嘘つけ!
「2度言わせないで、あなたのことが好き」
「んなわけあるかよ、ありえねぇだろ」
「信じられない?」
神城は俺に近付いて体を密着させた。
今の今でなんでこんな展開になるんだよ?また何か俺を策に嵌めようってのか?こいつならそれはありえそうだけど……
女性特有の良い匂いが俺の鼻先をくすぐる。
好きだって?好きならなんで俺にこんな表情を向ける?
神城は今にも感情が爆発しそうだ、こいつはいくら俺が気に食わなかったからと言っていつも虚しいとかそういう感情を漂わせていた。そのこいつがこんなに怒ってるのは…… まさか奏のため?
………… そうだ、神城は最初に奏を認めてるとかなんたらと言っていた。だけど俺は認めていないと。
奏に対する俺の気持ちの問題…… ?俺は奏が俺を好きと言うほど奏に誠実であったか?奏だったら俺のことを何があっても好きってそんな慢心を抱いてないか?
だから新垣に対しても嫌われないようにとか前だったらどうする?なんて曖昧な態度で……
「神城」
「何?」
「離れろよ、もうわかった」
「何よ、冷たいじゃない?」
「お前とこんなことしてると奏もお前だって傷付くだけだ」
「…… そう、なんだわかってるじゃない」
「だから言ったろ」
「最初から気付きなさいよバカ」
神城は俺から離れるとその場から去ろうとした。
「神城!」
「まだ私に用でもある?」
「ごめんな、こんなことさせて」
そう言うと神城は静かにフッと微笑んだ。
「別にいいわ奏のためだもん」
神城は奏のことをそんなに…… なのに奏と付き合ってる俺がこんなんじゃよくないよな、だからやることは決まってる、新垣から逃げた俺は新垣にちゃんと気持ちを伝えなきゃいけない。
昇降口まで戻ってきた時ちょうど新垣が靴を履いていた。
「あ、足立君」
「新垣さっきはごめん。何か言おうとしてたのに俺」
「ううん…… 足立君用事があるんじゃ?」
「さっき済んだから急いで戻ってきた」
すると新垣は目を丸くしてコホンと咳払いをした。
「あ、あのね、聞いて欲しい」
「うん」
「わ、わ、私…… 足立君のこと好きだった。勇気がなくて告白出来なかった、白石さんとも付き合っていて告白出来なかった。応援してるとか言ったくせに。けど伝えないとどうしても辛くて。ごめんなさい」
そんな新垣を見て思う、勇気がないのは俺の方だ。だから奏や神城、新垣を不安にさせてしまった。
「ありがとう新垣、でもごめん。俺はやっぱり奏が好きだ、俺にとって奏じゃないとダメなんだ」
そう言うと新垣から一筋の涙が頬から伝い落ちニコッと笑った。
「…… うん、だって足立君は白石さんと居るととても幸せそうで白石さんも。だからッ」
「はいはい、そこ倒してくれる?」
「え!?か、神城さん?」
陰から神城が現れて俺と新垣を見た。
「大丈夫、聞かなかったことにするわ」
そう言って微笑むと神城は俺らの横を通り過ぎた、お節介め。
「ふふッ、聞かれちゃった」
新垣が恥ずかしそうに涙を拭って笑う。
「だな……」
「ありがとう足立君、私の気持ち聞いてくれて」




